目次
坂田政一氏(以下、坂田):こんにちは、株式会社プラネット代表取締役社長の坂田政一でございます。本日は、当社のIRセミナーにご参加いただき、誠にありがとうございます。
まず、私からプラネットの概要と今後の方針についてお話しします。その後、代表取締役副社長の松本から2023年7月期第3四半期累計の業績概要と事業報告、株主還元についてご説明します。よろしくお願いします。
会社概要
坂田:会社概要です。当社は企業間の受発注等に必要なデータ交換を仲介するEDI基幹プラットフォームの構築・提供・運用を行っています。設立は1985年、資本金が4億3,610万円、純資産が52億5,928万円です。東証スタンダード市場に上場しており、決算期は7月末となっています。
プラネットの存在意義
坂田:プラネットのEDIサービスがどのような価値を提供しているかご説明します。商品が流通する際には、必ず発注書や請求書のデータのやりとりが必要になります。例えば、メーカー10社と卸売業10社がそれぞれデータ交換しようとすると、10×10で100の接続が必要になります。
取引先が増えるほど接続する相手が増え、相手ごとにシステムやデータの仕様も異なることから、開発・運用の負荷も増えることになります。そのような問題を避け、効率的なデータ交換を可能にするには、中継点としての情報のとりまとめ役が必要となります。
メーカーと卸売業の間に当社がとりまとめ役として入ることで、接続数は10+10の20となり、メーカーと卸売業が個別に接続するよりかなり少ない接続で済みます。当社を通して接続すれば、複数の取引先と1つのシステムでデータ交換が可能になり、業界全体としても非常に効率的な取引ができることになります。
設立経緯
坂田:このような狙いで、当社は日用品・化粧品業界の流通システムを最適化する業界共通のネットワークインフラを目指し、同業界の有力メーカー8社と独立系ITベンダーのインテックによって1985年に設立されました。
坂本慎太郎氏(以下、坂本):このインテックとは、以前上場していた、現・TISグループのインテックのことでしょうか? また、現在インテックの持ち株はあるのか、さらに仕事の付き合いがあるのかを教えてください。
坂田:はい、ご認識いただいているとおりです。現在、インテックはTISインテックグループのグループ会社になっています。
当社の創業以来、インテックにはサービスの大半についてお世話になっている状況です。現在、当社の株式の15.62パーセントを保有しており、戦略的にも大変重要なパートナーという位置づけの会社です。
坂本:ありがとうございます。さらに質問ですが、川上から川下までの受注データが一気通貫になるため、大手の日用品卸売業が御社を欲しがるのではないか、株主構成を見ると大手メーカーもいますので、反対があると思いつつも、買収される可能性があるのではないかと素人目では思ってしまいます。
また、おそらく川上と川下で卸売業の発注も分かれていると思いますが、御社の位置づけと成り立ちを含めて何かお話しできることがあればお願いします。
坂田:やはり当社で標準化したサービスがあるからこそ、業界全体での効率化、生産性アップが図れていると思っています。川上、川下のどこかの業界に偏ったかたちでのサービスになると、標準化を維持することがどうしても難しくなると思います。当社は設立して38年ですが、38年間これを維持することは、実はけっこう大変なことです。
坂本:使うほうもシステムが変わってきますし、ニーズも変わりますからね。
坂田:はい、おっしゃるとおりです。システムも当然変わりますし、いろいろな意味で環境が変わってきます。例えば消費税が導入されたり、また法改正で新たな法律ができたりなどした時に、標準化を維持していくことは非常に大切であり、また大変なことです。
川上、川下のどこかに加担したり、偏ったりした状態になると、標準化が維持できなくなりますので、やはり中立にいることは大変重要だと思っています。そのような意味では、川上、川下から私どものほうにいろいろ参入してくることで、標準化が維持できなくなってしまうということを、業界全体で十分認識していただいていると思います。
坂本:非常によくわかりました。後ほど、標準化の話が出てくると思いますので、そこであらためて確認できればと思います。
プラネットの存在意義
坂田:当社のEDIについて、もう少しご説明したいと思います。今お話ししたように、当社は徹底した標準化で継続性の高いEDI事業を展開しています。
多数の企業間でEDIを使っていただくことになると、データフォーマットを標準化したり、業界共通のルールを決めたりして、決めたとおりに使っていただくことが大切になります。そのため、みなさまが業界共通のルールに準じてEDIを行うことで、業務を飛躍的に効率化することができます。
加えて、常に環境変化が起きます。それに合わせて、お客さまとともにルールを変更して、変更したものを標準にし、それを維持していくことが必要になります。1989年に消費税が導入されましたが、その消費税を取引上どのように処理するかということは、当時非常に難しい問題でした。
そこで私どもがいち早く情報収集して、消費税の情報を渡す運用ルールを決めました。そして、どのように処理していくかを業界関係者とともに決めて、それをお客さまにも共有するかたちで、EDIのサービスに適用していきました。
結果として、お客さま自身が消費税の処理方法を調べて、それを取引先にどのように反映していくかを決める必要がなく、プラネットが取りまとめたルールに基づいてスムーズに事業を継続いただくことができました。お客さまにとって、そのような煩わしい部分はプラネットにお任せいただいて、本業に専念していただくことも可能です。
このように、法改正も含めて、最小限の対応でお客さまにEDIサービスをお使いいただけることが、私どものEDIの特徴です。標準を決めて、それを運用し、いろいろな時代の流れや法改正に合わせてまた新しい標準を作るということをぐるぐる回していきます。そのようにして、業界全体で常に標準化の状態を維持していくことが、私どものEDIの特徴です。
坂本:例えば、多くの商流がある中で、注文が紙で来たりデータで来たりと個々で異なってしまうと非効率になるため、そこを徹底して標準化することが御社の役割であり、大事にしていることということですね。
坂田:はい、そのとおりです。
坂本:おそらく視聴者も非常によくわかったと思います。
プラネットのビジネス
坂田:メーカーと卸売業の間のシステムをつなぐことを「基幹EDI」と呼んでおり、こちらが私どもの主力サービスです。それ以外にも資材サプライヤーとメーカーの間の「資材EDI」や、メーカーと卸売業を簡易につなぐサービスなどを提供しています。また取引先や、商品などのデータベースを構築する事業も行っています。
結果として、これらのサービスを利用いただいているユーザー数は、2023年4月末時点で、メーカーが831社、卸売業が488社、資材サプライヤーが170社で、合わせて1,489社と、大変多くのお客さまに利用していただいている状況です。
そして、私どものEDIを使っていただいているお客さまが取り扱っている商品は、スライドの上方に記載しているとおり、主に生活に密着した日用品です。つまり、大半のお客さまが生活必需品を扱っています。
坂本:御社はかなり標準化していますので、同業他社はいないという考えでよいですか?
坂田:日用品・化粧品業界においては、競合はいないと思っていただいて結構です。
坂本:他業種はいかがでしょうか? 例えば日用品・化粧品以外で、卸売業を間に挟んで商売している会社も、メーカーを中心にあると思いますが、他業種で御社のようなことをしている会社は存在するのでしょうか?
坂田:それはあります。食品業界は食品業界、医薬品業界は医薬品業界、お菓子業界はお菓子業界というかたちでそれぞれ同じようなサービスを提供している企業は存在します。ただし、上場しているのは私どもだけだと思います。
プラネットのビジネス
坂田:私どものビジネスモデルについてご説明します。当社の売上の約9割はEDI事業によるものです。
その料金体系については、一時金、月次の固定料金、月次の従量料金という3つの構成になっています。その約8割を月次の従量料金が占めています。そして、データの種類ごとに単価を決めており、通信されたデータの量に応じて料金がかかるシステムになっています。
例えば、1件のデータは伝票の1行に相当しており、1データで約1円の料金をいただいています。お客さまは、一度接続して使い始めると継続的に利用します。そして接続先を増やすほど、お客さまにとっても効率が上がりますので、その結果としてデータ量が増えるという特性を持ったストック型のビジネスが私どものビジネスモデルの特徴です。
プラネットのビジネス
坂田:このストック型のビジネスモデルと、お客さまの多くが生活必需品を扱っていることから、バブル崩壊やリーマンショックといった大きな景気変動の影響も、他の産業・企業と比べると受けにくいという特徴を持っています。結果として、スライドのとおり設立以来順調に増収を続けています。
今後の方針
坂田:今後の方針について簡単にご説明します。今後は、大きく2つの方向で事業を展開していきます。
1つは、当社が取り組んでいるEDI事業は非常に強固なものですが、その「幹」をさらに太くするイメージで、既存の事業を確実に成長させていきます。もう1つは、その大きくした幹に新しい「枝」をつけるイメージで、当社の強みを活かした新たな展開にチャレンジしていきたいと思っています。
今後の方針
坂田:今後の方針の1つ目、既存事業の確実な成長についてご説明します。具体的には、サービスの横展開と深掘りをしていきたいと思っています。
まず、スライドの青い枠に示した「横展開」についてです。現在、日用品・化粧品業界のほとんどのメーカー・卸売業に私どものEDIサービスを利用していただいています。それをさらにペット関連商品、OTC医薬品、健康食品、園芸といった業界に、どんどん展開していこうと思っています。
そちらの業界にもある程度は広がっていますが、まだまだ利用していただける余地はあると思っており、それらの業界に積極的に営業活動を展開していきたいと思っています。
スライドの赤い枠で記載した「深掘り」についてです。私どもがEDIで取り扱っているデータは約20種類あります。そのうち、上段の濃い赤色で記載した受発注に関わるデータは多くのお客さまにご利用いただいていますが、下段の薄い赤色で記載したデータはまだ十分に活用されていません。
そのデータを活用してもらうことでお客さまの業務効率化がさらに進みますので、利用促進を図っていきたいと思っています。
当社の強み
坂田:今後の方針の2つ目として、当社が持つ強みを活かした新たな展開を検討していきます。スライドに記載のとおり、当社の強みには、強固なビジネスモデル、既存仕様の業務プロセスに対する知見や知識、デジタルに精通した人材などがあります。
このようないくつかの強みをさまざまな角度からパーツに分解して捉え、その力を発揮できる市場や事業にチャレンジしていきたいと思っています。
新しい価値を創出する企業へ
坂田:その強いパーツに何かをプラスアルファしたりパーツを組み換えたりしていきます。それにより、現在のEDIに加えて、お客さまの業務の上流から下流まで含めた一連の業務プロセスを請け負うBPOのような発想により、従来とは異なる切り口で市場を捉えて需要を検討していきたいと思っています。
当社はこれまでEDIで生産性の向上や業務効率にフォーカスしたサービスを提供してきました。これからはそれに加えて、お客さまのサステナビリティに資するサービスや、トップラインに貢献するサービスにも取り組んでいきたいと思っています。
現在、私どもが取り組んでいる「ロジスティクスEDI」や、「POSデータクレンジングサービス」にもつながっていくサービスだと思っています。このような取り組みを糸口にして、強みが発揮できる市場や事業を見つけてチャレンジしていきたいと思っています。
ロジスティクスEDI(物流領域のEDI)
坂田:当社の新たな取り組みを2つご説明します。まず、「ロジスティクスEDI」についてです。
最近、「物流2024問題」に関する報道をテレビや新聞で目にすると思います。来年度、ドライバー不足によって製品が配達できなくなる、あるいは、ドライバーの時間外労働に対する割り増し賃金率が引き上げられることで物流コストが上昇するなど、大きな問題になると見られています。
私どものメインの日用品・化粧品流通業界においても、物流の効率化は喫緊の課題となっています。そこで、私どもはメーカー、卸売業、物流業者をまたぐかたちでデータを流通させ、サプライチェーン全体を可視化することによって、持続可能な物流環境の実現の一役を担いたいと思っています。
具体的には、出荷予定や入庫検収などの情報をこの三者が共有するサービスを提供することで、入荷業務の効率化や、トラックの待機時間を削減できます。要は物流環境の効率化に貢献していきたいと思っています。
坂本:この「ロジスティクスEDI」が標準化されれば、御社の収益をどれくらい押し上げる効果があると考えていますか? まだすべてを描き切れていないとは思いますが、イメージだけでも教えてください。
坂田:具体的な数字は差し控えますが、サービスを開始して3年で黒字化し、その後はEDIに次ぐ1つの大きなビジネスにしていきたいと思っています。
物流領域は、競い合う「競争領域」から共に作り上げていく方の「共創領域」になる、していかないといけないと思っています。 私どもが得意とする標準化やその維持、それに関する能力を発揮できますので、業界全体のサステナビリティに貢献していきたいと思っています。
POSデータクレンジングサービス
坂田:もう1つは、「POSデータクレンジングサービス」です。POSデータとは、どの商品が、いつ、どこで、いくらで、いくつ売れたかがわかる商品の購買データのことです。
実は、メーカーはPOSデータを小売業から入手しています。ただし、小売業ごとにデータのフォーマットやコードが異なるため、入手したデータを分析できるかたちに整えることが必要で、それをデータクレンジングと呼びます。
POSデータクレンジングサービス
坂田:データクレンジングには膨大な工数がかかるため、せっかく入手したPOSデータの活用が難しいことが現状の課題です。
当社では、国内最大級の消費者の購買情報データベースを運営しているTrue Dataと業務提携し、両者の強みを活かしたデータ整備のアウトソーシングサービスの開始に向けて、2023年8月頃にそのシステムの構築完了を目指しています。
このサービスは、フォーマット変換などの作業を代行し、分析に適したかたちで提供するサービスです。分析前の煩雑な業務を請け負うだけでなく、メーカーがマーケティングに活用することを支援する取り組みができると思っています。
坂本:True Dataと業務提携することで、購買データを活用するとのお話でした。御社は川上のデータを持っていますので、それもうまく使うことで、かなりシナジーが出るのではないかと感じました。そのような取り組みも考えていますか?
坂田:鋭いですね、おっしゃるとおりです。
坂本:やはりそうでしたか。そのデータはおそらく御社しか持っていないはずですよね。
坂田:実はそのあたりも含めてデータクレンジングをすることによって、メーカーにはより良いかたちでマーケティングに活用していただけるのではと思っています。
坂本:御社が一本化、標準化している意味が出てきますね。
坂田:以上で、私からのご説明を終わります。続いて、代表取締役副社長の松本から、2023年7月期第3四半期累計の業務概要、事業報告、そして株主還元についてご説明します。
2023年7月期 第3四半期累計期間の業績概要
松本俊男氏(以下、松本):まず、2023年7月期第3四半期累計期間の業績概要についてご説明します。売上高は前年同期比0.3パーセント増の23億3,100万円となりました。「基幹EDI」と「販売レポートサービス」の売上増加に支えられて増収で着地しました。
売上が微増にとどまった理由は3つあると考えています。1つ目は、モノ・サービス・インフラなど幅広い分野での物価上昇による買い控えなどの消費マインドの落ち込みの影響です。
2つ目に、SDGs意識や節約志向の高まりを受けて、洗剤やシャンプーなどで大容量へのシフトが加速し、発注頻度が減少しました。3つ目は、メーカーは卸売業に対する値上げ交渉が成立するまで発注を控えるため、発注頻度が減少したことです。
2023年7月期 第3四半期累計期間の業績概要
松本:利益についてご説明します。売上原価が取引先データベースのシステムリニューアルに伴う開発費用などが増加したこと、トップセミナーならびにユーザー会を3年ぶりにリアルで開催したことにより費用が増加した結果、営業利益は前年同期比14.2パーセント減の4億4,200万円となりました。
四半期純利益については、前期は株式売却益による特別利益がありましたが、今期は特別利益の計上がなかったため減益となりました。
今後の見通し
松本:今後の見通しです。外部要因として、日用品・化粧品の値上げの動きは当面続くと予想されるため、消費マインドの落ち込みは今後もしばらくは続くと思っています。一方、2023年4月からの平均賃上げ率が31年ぶりの高水準である3パーセント超えとなったことや、インバウンドの復活など、徐々に明るい兆しも見えてきています。
内部要因としては、第2四半期で一時的に減少したEDIのユーザー数が、第3四半期では増加に転じています。また、「ロジスティクスEDI」ではユーザー数が増加しており、今後の伸びが期待できると考えています。
当面は厳しい経営環境が続くと思われますが、これまでと同様、少しずつビジネスの種をまきながら、安定的な成長と企業価値の向上を目指していきます。
坂本:御社の課金体系は「データ1件につき、いくら」ということですので、日用品・化粧品の値上げの影響はあまり受けないのではと思います。逆に、人件費や光熱費が上がっていますので、その影響による値上げを考えていますか?
松本:ご認識のとおり、データ1件あたりの料金には影響していませんが、データセンターへ委託する人件費や電気料を含めたインフラコストは上がってきています。当面はそれを価格転嫁する予定はありませんが、最終的にはその点も考えていく必要はあるだろうと思っています。
坂本:業績のプラスの要因となった「販売レポートサービス」とは、どのようなものなのか教えてください。
松本:「販売レポートサービス」は、出荷データや蔵出しデータなどいろいろな言い方がありますが、卸売業が小売店に対して何をどれだけ納めたかを示すデータを活用いただくサービスです。
坂本:川中のデータということですね。確かにそのデータがあると補完できますね。
松本:卸売業からメーカーに報告として上がってくるものを販売データと呼んでいます。メーカーから見ると、自社の製品が何個、どの小売に配荷されているのかを日々見ることができますので、より正しくマーケティングを行えます。
坂本:このデータを用いることで川下に行く手前まで全部わかりますね。
松本:そこに先ほどのPOSデータが合わさると、POSデータは小売がどれくらい消費者に販売したかのデータですので、それぞれのデータを見ることによって、消費者までどのように流れたか、正しい情報が得られます。
坂本:なるほど、非常によくわかりました。また、需要の掘り起こしとして、トップセミナーやユーザー会の実施は非常に良い取り組みだと思います。さらなる利用を増やすためには、どのような取り組みを実施しているのでしょうか? あるいはアフターコロナの中で、今後はどのように実施していく予定でしょうか?
松本:この3年間で営業方法も大きく変わりました。WebセミナーやWeb商談を実施することで、従来は遠方のためになかなか行くことができなかったお客さまに対しても、より確実に案件をクローズすることができています。
私どもはモノを売っているのではなく、つなぐことをサービスにしている会社です。そのため、基本的にはメーカー側からの「この卸売業とつながりたい」、あるいは卸売業からの「このメーカーとつながりたい」という情報を集め、それらをうまく吸い上げています。
営業がルートで回っているのではなく、お客さまからいただいた情報に対し、いろいろなセミナーを開催したり、利用することのメリットをご説明したりすることで、一歩ずつ売上につないでいくかたちです。
坂田:少し補足します。営業というと、一般的には一生懸命に新規のお客さまを開拓したり、既存のお客さまに「もっと使ってください」とお願いしたりするようなイメージが大きいかと思います。しかし、私どもの場合は、EDIを使ってくれる取引先が増えれば既存のお客さまも助かるため、既存のお客さまと一緒になって利用を増やしているのですね。
坂本:発注を標準化していれば楽だという利点があります。全国展開している卸売業では、地方の小規模の小売店にまで卸さなくてはなりませんが、ルート配送がないところがほとんどでしょう。そのような卸売業に対し、御社のプラットフォーム導入を一緒にお願いしていくということですね。
坂田:私どものプラットフォームの利用が増えることは、既存のお客さまにも大きいメリットになるため、一緒になって営業活動をしているようなイメージだと思ってください。
坂本:相当なボリュームの卸売業には、すでに導入されていますよね? 未開拓のところも残っているのでしょうか?
坂田:日用品・化粧品業界では相当数のお客さまに利用していただいていますので、横展開のお話でお伝えした業界へこれから広げていきたいと考えています。
坂本:隣接業界から開拓していくかと思いますが、どのような業界への展開を視野に入れているのでしょうか?
坂田:先ほどお伝えしたように、ペット関連商品、OTC医薬品、健康食品、園芸などに注力していきたいと考えています。これらの業界では、日用品・化粧品業界に比べ、私どものEDIのお客さまになっていただいていない企業が多く、システム化もあまり進んでいません。
既存のお客さまにとっても、これらの業界のメーカー・卸売業のみなさまにも絶対に良いことですし、私どもにとってもチャンスだと思っています。
坂本:こちらの業界にまで広げていくと、やはり競合他社が出てくるのでしょうか?
坂田:一部、出てくるだろうと想定しています。
配当方針と実績
松本:株主還元についてお話しします。私どもは配当方針を大きく2つに分けて掲げています。1つ目は「安定的な配当の継続」、2つ目が「配当性向50パーセント以上の維持・継続」です。
安定的な配当の継続に関しては、上場以来18期連続で増配しています。今月で今期が終わりますが、19期連続で増配予定です。配当性向50パーセント以上の維持・継続についても、今期の配当性向は57.5パーセントの予定で考えています。
2023年6月28日時点の終値は1,278円で、配当利回りが3.33パーセントでした。現時点では株価が若干上がっており、数値が変わってきていますが、6月28日時点の配当利回りとしては3.33パーセントという実績となっています。
流通株式比率の見通し(上場維持基準)
松本:流通株式比率の見通しです。上場維持の基準でもあるため、非常に力を入れているところです。
上場維持基準のうち、流通株式比率のみ、基準の25パーセントを満たすことができていない状態ですが、2023年1月末時点で24.7パーセントまで改善しています。近いうちに、25パーセントを達成できるだろうと思っています。
幅広い方々から投資していただくため、個人投資家および機関投資家のみなさまに向けて情報を適時・適切にお伝えしていきます。あわせて株式の流動性向上を図り、企業価値の向上にも努めていきます。ご清聴いただきありがとうございました。
質疑応答:AIや「ChatGPT」などの活用の可能性について
坂本:「AI活用の可能性についてお考えをお聞かせください」というご質問です。ライブからも「『ChatGPT』の活用はありますか?」というご質問をいただいています。AIや「ChatGPT」などの活用に関連し、利用できる部分やすでに導入している取り組みがありましたら教えてください。
坂田:現在はまだ「ChatGPT」を活用していません。ただし、私どもはコールセンターを持っていますので、そのようなところでの活用をすでに検討し始めています。
また、AIについては需要予測に活用できないかと考えています。それにより、お客さまの在庫の最適化や、これからチャレンジしていかなくてはならない物流領域の配送関係において、より効率的な配送を可能にすることができます。
ほかにも店頭の品ぞろえに対し、何らかのかたちでお手伝いができないだろうかと、新たな可能性を見出すところにAIを活用していこうと、現在はAIの活用研究にも取り組んでいます。
質疑応答:成長分野のドライバーと考える事業について
坂本:「DXや働き方改革などもあり、各企業で業務効率化が受け入れられると思います。御社としてはどの事業が成長分野のドライバーだと考えていますか?」というご質問です。
坂田:先ほどのご説明とも重複しますが、やはり「ロジスティクスEDI」です。物流問題は日本社会全体の大きな課題だと考えていますので、私どもも何らかの役に立ちたいと思っています。
POSデータクレンジングも同様です。今はまだデータクレンジングのみですが、次々に新たな展開を考えていきます。そのため、現時点での成長ドライバーとして、この2つの取り組みを確実に進めていきます。
質疑応答:既存事業の解約率について
増井麻里子氏(以下、増井):「既存事業の解約率はどの程度ですか?」というご質問です。
坂本:御社のシステムを解約することがあるのでしょうか?
松本:具体的な解約率はお話しできませんが、卸売業とメーカーの間で商品の取り扱いがなくなったり、ブランドが変わったりすることがあります。
増井:統合などもありますよね。
松本:そのような経緯での解約や、数としては少ないものの卸売業の廃業による解約もあります。そのような状況ですので、解約率はかなり低いです。
質疑応答:物流領域における目標値について
坂本:「『ロジスティクスEDI』の浸透について、いつ頃を1つのゴールとしていますか?」というご質問です。2024年くらいを目処にしているとのことでしたが、利益貢献は全体の何パーセントを目指しているのでしょうか? なかなか答えにくいかと思いますので、イメージだけでも教えてください。
坂田:数字的にお答えするのは難しいですが、当期の経常利益が4億5,000万円くらいありますので、最終的には売上高の10パーセントくらいを目指したいと思っています。それが3年後になるか、5年後になるかという時期的な目標についてはご容赦ください。
質疑応答:商品情報共有化有識者会議やスマート物流関連の事情について
坂本:「御社は経済産業省とNEDOなどの事業が参画する商品情報共有化有識者会議に参画していますが、現在の取り組み状況を教えてください」というご質問です。
松本:確かに、私どもも賛助というかたちで参画しています。何回か打ち合わせをしている状況ですが、現時点で具体的なことをお話しするのは難しいです。
坂本:この手のものは「報告書が出るのを待って、それを読んでください」としか答えられないですよね。結局、内々で話していることは言えないですから。
坂田:現時点で申し上げられることとしては、当社は業界の商品データベース運営者の立場として、製・配・販の商品情報連携の部分に協力している、ということです。
質疑応答:業界の統合に対する姿勢について
坂本:日用品・化粧品業界では卸売業がかなり統合されていると思います。さらに前の段階において、御社がイニシアチブを取って統合を進めようと検討したことはあったのでしょうか?
今となっては規模が大きく、費用もかかるので難しいでしょう。昔は川上から川下まで統合したいという意思があったのかをお聞きしたいです。
坂田:川上から川下までを統合してしまうことにより、業界全体において中立的な立場で標準化を維持することが難しくなってしまうだろうと考えていました。そのため、M&Aに限らず、何らかのかたちで統合化を進めようとする発想はありませんでした。
坂本:もし1社買ってしまうと、別の卸売業と敵対関係になってしまい、システムを導入してもらえなくなってしまう可能性があるということですね。
松本:もともと当社の設立経緯として、卸売業を支援し、業務効率化を進めようというメーカー側の思いがあります。そのような立場からも特定の卸売業に肩入れすることはできないものとご理解ください。
質疑応答:EDIシステムにおけるISDN回線からWebへの移行状況について
増井:2024年1月にISDN回線が廃止になりますが、EDIシステムはISDN回線を使っているかと思います。今は完全にWebへ移行しているのでしょうか?
松本:2023年6月に最後のお客さまの切り替えが完了しました。これにより、JX手順とAS2手順のインターネット手順にすべて切り替わりました。おそらく業界EDIにおいて一番進んでいると思います。
坂田:かなり以前から一社ずつ、お客さまへ切り替えを呼びかけ、丁寧に依頼して進めてきました。担当者は相当大変だったと思いますが、何年もかけて、ようやく完了しました。
当日に寄せられたその他の質問と回答
当日に寄せられた質問について、時間の関係で取り上げることができなかったものを、後日企業に回答いただきましたのでご紹介します。
<質問1>
質問:OTC医薬品はターゲットにありましたが、医療用医薬品はターゲット外なのでしょうか。また規制参入障壁か何かがあるのでしょうか?
回答:当社は主に一般消費財業界のメーカー・卸売業間の情報インフラサービスを提供しています。医療用医薬品は一般消費財ではないため、現時点ではターゲット外としています。なお、医療用医薬品業界のEDIはJD-NET協議会が担っています。