帝国通信工業株式会社 2022年3月期決算説明会

羽生満寿夫氏:代表取締役社長の羽生満寿夫でございます。本日はご多用のところ、Webでの参加を含め多数のご出席を賜り誠にありがとうございます。2022年3月期決算説明会を始めさせていただきます。

エグゼクティブ・サマリー

本日のエグゼクティブサマリーをご説明します。弊社を取り巻く事業環境として、弊社の属するエレクトロニクス業界は経済回復やデジタル化が進展しており、需要自体は拡大基調が継続しています。具体的には、EV車などの環境対応車へのシフトが加速し、自動車関連向け部品の需要が拡大しています。加えて、ゲーム機市場なども全体的に堅調に推移しています。

その一方で、半導体、電子部品や原材料等の調達難により、一部のお客さまから生産計画の見直しなどによるサプライチェーンの混乱があるなど、不安定要素が多くなっています。また、サプライヤーから価格調整の申し入れも強く、予断を許さない状況が続いています。

このような状況の中、弊社の2022年3月期決算概要は堅調な受注と諸経費の抑制が功を奏し、連結売上高は151億円、連結営業利益は16億9,000万円で増収増益となりました。

続いて2023年3月期の予想です。新市場区分であるプライム市場を選択し、上場維持基準の適合に向けた計画書を策定した上で、企業価値向上の取り組みを実施していきます。

業績については、地政学リスクを背景とした資材価格の高騰や上海ロックダウンの影響もあり、不透明感が継続しています。しかし受注状況は比較的良好であり、価格の見直し交渉を継続して進めるため、連結売上高は158億円、営業利益は13億円と計画しました。

最後に、中期経営計画の修正概要です。2022年3月期の業績が予想を上回ったことを踏まえ、中期経営計画の一部見直しおよび数値目標の修正を行いました。中期計画期間を3段階に分け、売上高、投資計画、配当政策を組み込み、経営指導の目標値を開示することでより変革に向けた意思を「見える化」した計画となっています。

目次

続いて弊社の会社概要および強みについて説明し、2022年3月期決算概要、2023年3月期業績予想、中期経営計画の修正についてご説明します。

会社概要

会社概要を簡単にご説明します。弊社は1944年に創業し、川崎市に本社を構える総合電子部品メーカーです。電子回路を制御する抵抗器やセンサー、スイッチなどの各種電子部品を「NOBLE」ブランドで国内および海外に展開しています。

私たちの強み

お客さまのご要望に応えるべく、カスタム製品から汎用電子部品まで幅広く扱っています。独自のフィルム印刷および成型、プレス加工の技術をコアに、製品設計、金型設計、アセンブリまで一貫生産で対応できることが弊社の最大の強みです。

⾦型設計・製造

弊社の強みについてポイントを絞って簡単にご説明します。弊社の製品で使用する部品には金型が不可欠です。自前で金型部門を持ち、成型部品やプレス部品の金型を設計製作しています。また、難易度の高い高精度の部品の製作も行っています。

スクリーン印刷

電子回路基盤の形成における弊社の技術についてです。一般的にはエッチング基板を採用しますが、弊社はPETフィルムへスクリーン印刷を用いて、必要な箇所だけにパターンを印刷し回路形成を行います。そのため汎用性が高く、製造時の廃棄物が少ないため環境にやさしいという特徴があります。

こちらの技術は非接触ICカードのアンテナや、心電図、脳波などの測定電極にも使われています。また、PETフィルム面への半導体などの部品実装も可能です。

成型・プレス加工①

弊社グループの生産工場で、成型部品およびプレス部品の製作を行っています。弊社独自の技術である、回路基板を成型樹脂で一体化するインサート成型が高く評価されています。

成型・プレス加工②

プレス加工は高速で微細な加工が特徴です。電子部品の心臓部となる金属接点を自社で開発し、さまざまなニーズに対応しています。高耐久性の製品にはこのプレス加工技術が不可欠です。

⾃動組⽴、品質保証

弊社が持つ生産技術部門で生産ラインの構築を行っています。工程の自動化、省人化に取り組むほか、組立設備や製品の品質を保証する各種検査機の設計製作も自社で行っています。

事業フィールド

弊社製品は、暮らしに身近な分野から高い信頼性が求められる医療や自動車産業まで、幅広いフィールドで採用されています。

コア技術を活かした2つのビジネス展開

弊社の製品は、大きく2つの製品群に分けられます。1つはICB製品といわれる、お客さまからのご要望に対応するカスタム製品です。もう1つは、汎用電子部品であるディスクリート製品です。

市場別主⼒製品

市場別主力製品をご紹介します。自動車やAV機器、ゲーム機、家電など、さまざまな分野で利用されている弊社製品の一例をスライドに記載しています。

(ご参考)成⻑市場ー①医療・ヘルスケア

ご参考までに、昨今弊社が注力している成長市場のご紹介です。2022年3月期に2億円を出資したS'UIMIN社との事業展開などにより、脳波、心電、筋電の測定電極や医療機器用位置検出センサーの開発、販売を行い、医療ヘルスケア部門の増強を図ります。

(ご参考)成⻑市場ー②産業機器・ロボット

産業機器、ロボットにおける各種センサーのご紹介です。センサーには接触型および現在注力している非接触型があり、動作面では回転型および直線型があります。今後のセンサー部門における売上拡大に向けて、追加設備投資を検討していきます。

連結売上高、連結営業利益の推移

2022年3月期決算概要をご説明します。スライドのグラフは、左側に連結売上高の推移、右側に連結営業利益および連結営業利益率を示しています。

連結売上高は前年比プラス30億円の151億円に改善しました。連結営業利益は前年比プラス9億円の16億9,800万円、連結営業利益率も前期比プラス4.9ポイントの11.2パーセントに改善しました。

連結売上高と連結売上総利益の推移(四半期ベース)

連結売上高および連結売上総利益についてご説明します。スライドの棒グラフは、四半期ごとの売上高、売上原価、売上総利益を表し、折れ線グラフは四半期ごとの売上総利益率を示しています。

2022年3月期を通じて、前期の第3四半期から受注が急回復したため、増収傾向に反転し、工場もフル稼働になったことと、今まで進めてきた自動化と省人化、また国内外の生産品目および生産ラインの見直しを実施してきたことから、売上原価を抑制することができ、売上総利益の増益と売上総利益率の改善につながりました。

第2四半期以降は資材価格の高騰などにより、売上原価が増加して、売上総利益率は減少傾向になりましたが、売上高を相応に維持できたことから、売上総利益自体は過去の水準に比べて高い水準となっています。

2022年3月期のトレンドは、特殊な外部要因を除けば、売上原価を自助努力で抑制しつつ、仕入と販売価格の見直しも適宜行うことによって、受注を相応に確保して、生産稼働率を維持することで売上総利益と売上総利益率ともに概ね安定しています。

連結売上総利益と連結営業利益の推移(四半期ベース)

連結売上総利益と連結営業利益の推移をご説明します。スライドの棒グラフは四半期ごとの売上総利益、販売管理費、営業利益を示し、折れ線グラフは四半期ごとの売上総利益率と販管費率、営業利益率を示しています。

先ほどの説明で売上総利益が概ね安定している要因に、売上原価の抑制を入れましたが、売上高の増減にかかわらず、販売管理費の抑制が機能していることがわかると思います。

コロナ禍での働き方の見直しもあり、交通費などのコスト削減や、従業員の多能工化等を行って一定水準を維持しました。その結果、営業利益率が改善され、営業利益を確保しています。

連結売上高の内訳(製品別)

製品別の連結売上高の内訳についてご説明します。ここで、従来からの変更点をお伝えしますと、過去の開示資料において、電子部品の製品別区分のうち、「その他」と記載していたものを、今期よりセンサー、機構部品、その他の電子部品に細分化しました。詳細はスライドの円グラフおよび比較表をご覧ください。

2022年3月期は、販売個数自体が増加したことにより、全項目で増収となっています。2020年3月期から2022年3月期までを通してみると、センサーと機構部品の比率拡大が顕著です。

また連結売上総利益と連結営業利益についても、売上総利益率の改善がありますが、それ以上に営業利益率が改善されていることが確認できると思います。

弊社の製品は、お客さまごとのカスタム製品と汎用製品が混在しており、製品ごとというよりは、お客さまごとに利益率が異なる傾向がありました。ただ、近年は生産稼働率を高めたり、共通素材の使用などによりコストを抑えたり、どの製品も一定水準の利益率を確保して販売しています。

このように、極力市場を分散させつつ、受注を確保することで安定的な利益の計上を図っています。

連結売上高の内訳(市場別)

市場別の連結売上高の内訳です。2020年3月期から2022年3月期までを比較すると、アミューズメント部門の拡大が顕著となっています。医療・ヘルスケア部門は、現状の内訳比率が少ないのですが、景気に左右されにくい分野として、市場拡大に注力しています。

電子部品事業の地域別内訳

電子部品事業の地域別内訳について説明します。2020年3月期から2022年3月期において、国内外の売上高はほぼ同じ比率で上昇していますが、セグメント利益は、各種コスト削減や抑制努力の結果、国内が大幅に改善しています。

弊社グループは、2026年3月期決算までに海外売上高比率を60パーセントにすることを目標としています。1つ目には国内外の生産販売拠点の分散と、通貨分散による為替変動の影響を極小化する体制作りを進めること、2つ目には海外市場の開拓を進めることが目的です。

連結売上高、連結営業利益予想

2023年3月期の業績予想です。まず、連結売上高と連結営業利益予想についてご説明します。スライドのグラフのとおり、2023年3月期は、引き続き不安定な市場環境が継続するものの、増収基調が継続されます。したがって、売上高は前期比プラス7億円の158億円を設定しました。

営業利益は、設備投資や人件費関連のコストの増加、さらに各種資材価格の高騰もあり、前期比マイナス4億円の13億円を見込んでいますが、過去の水準に比べると増益基調です。

上期と下期の内訳では、上期は売上高75億円で営業利益6億円、下期は売上高83億円で営業利益が7億円と増加する計画です。

連結売上高の内訳予想

連結売上高の内訳予想です。製品別では、センサーおよび機構部品が引き続き比率を上げる予想を立てています。市場別では、アミューズメントの比率が増加し、主力部門も安定した受注を確保する予想を立てています。

なお、製品別、市場別ともに、カテゴリーごとの利益率にほとんど差がないことから、お客さまごとの価格見直しなどといった特段の要因がない限り、営業利益は売上高の比率と同程度となる予想を立てています。

過去業績トレンドと中期経営計画の位置づけ

過去の業績トレンドと中期経営計画の位置づけを、経営体制を見直した経緯を踏まえてご説明します。2009年3月期から2012年3月期にかけて、数々の災害等を要因として、弊社は大打撃を受け、その後、業容縮小を余儀なくされました。

一方で、BCPやESGなどを念頭に置いた急速に変化する事業環境において、従来の経営スタイルの限界を認識し、折しもプライム市場選択への準備もあったことから、経営体制を刷新して組織改革を実施しました。

そして、中期経営計画を新たに策定し、新生NOBLEへの進化と深化を進めることになりました。中期経営計画初年度である2022年3月期は計画以上の着地で、業務効率や労働生産性は過去に比べて、大幅に改善されています。一方で、今後の業績伸長には生産キャパシティの拡大や新製品の開発が不可欠となっています。詳細は中期経営計画に記載していますので、後ほど説明します。

設備投資、減価償却費、研究開発費、出資

設備投資、減価償却費、研究開発費、出資の状況です。2020年3月期には須坂帝通、2021年3月期には木曽精機の工場を新設しました。2022年3月期には、設備投資に加えて、医療・ヘルスケア分野への市場拡大を企図して2億円を出資し、設備投資、研究開発費、出資の合計で年間12億円以上を投資してきました。

2023年3月期は、設備投資12億円、研究開発費6億円の合計18億円を予定しています。今後も生産増強に向けた体制作りに注力する方針です。

プライム市場区分適合状況

プライム市場区分適合状況をご説明します。2020年10月以降の1日平均売買代金を棒グラフで、取引平均株価を折れ線グラフで月次展開しています。2021年7月の1次判定では、不適合になった流通株式時価総額と1日平均売買代金も、投資家のみなさまのおかげで順調に改善し、自社算定ではありますが、2022年3月31日時点では、2項目とも適合になっています。

今後とも各種IR活動を通じて、投資家のみなさまに納得いただける経営に尽力していきますのでよろしくお願いします。

中期経営計画(修正版)

中期経営計画(修正版)についてご説明します。2021年5月に策定した初版から、経営方針や基本戦略は変更ありません。変更点としては2022年3月期の業績が予想を上回ったことから数値目標の修正を行いました。また売上計画、投資計画、配当施策等を踏まえた経営指標の目標値を追加設定し、より変革に向けて一歩踏み込んだ計画になっています。

企業理念・⻑期ビジョン・⾏動指針

企業理念・長期ビジョン・行動指針です。内容の変更はありませんが、イメージしやすいようにビジュアルを変更しています。

この企業理念に基づき、行動指針である3つのCを実現し、長期ビジョンである「抵抗器のNOBLEから『新生NOBLE』への深化と進化」を実現します。

経営⽅針と中期経営計画の位置づけ

経営方針と中期経営計画の位置づけです。こちらの内容にも変更はありません。2021年度から中期経営計画において、既存領域の拡大・新領域の模索、組織力の強化を実践していきます。

基本戦略(成⻑領域)

スライドは基本戦略の「既存領域の拡大」「顧客ニーズを捉えた新製品展開」「新領域の確立」をイメージしたものです。こちらについても変更はありません。

事業実績・修正計画目標①(ステップ毎の目標)

事業実績と修正計画目標①をご説明します。まず、連結売上高を棒グラフで、連結営業利益を折れ線グラフで数値を示しています。2022年度から2025年度における、中期経営計画を2021年度の実績を踏まえて再設定しています。さらに計画を3段階に分け、各々のステップごとの目標を掲げ、数値目標として設定しています。

具体的には、第1ステップである2021年度は「既存領域の拡大」をテーマに、より付加価値を高めた提案による販売を実施し、弊社のポテンシャルを引き出す努力をしました。

第2ステップは2022年度から2023年度の2年間において「新領域等への投資」をテーマに、今後の生産ライン・生産キャパシティの拡大により企業としての土台強化を図ります。この第2ステップの最終年度にあたる2023年度の目標は、連結売上高160億円、連結営業利益14億円を掲げています。

第3ステップは2024年度から2025年度の2年間において「新領域の拡大」をテーマに、公共通信事業、防災事業や医療・ヘルスケア部門の事業を積極的に展開します。この第3ステップの最終年度である2025年度における目標は、連結売上高180億円、連結営業利益17億円を掲げています。

事業実績・修正計画目標②(セグメント別売上高)

事業実績・修正計画目標②についてご説明します。市場別では2025年度までに、自動車、家電、アミューズメントは連結売上高の54パーセントの維持を計画しています。産業機器、医療・ヘルスケアは連結売上高の17パーセントまでの拡大、新領域については、連結売上高の5パーセントの達成を計画しています。

製品別では2025年度までに、センサーは主力商品化を予定しています。機構部品については外注取込みにより連結売上高の13パーセントまで拡大を計画しています。

事業実績・修正計画目標③(セグメント別収益計画)

事業実績・修正計画目標③です。「市場別」「製品別」に目指すべき数値を設定していますので、ご参照ください。

主な投資実績・計画①(設備・研究開発費・出資等)

主な投資実績・計画①です。基本的には営業キャッシュフローを着実に計上した中で、中期経営計画第2ステップでは設備投資・研究開発費で年18億円程度を計画しています。また中期経営計画第3ステップも含めて、BCP・ESGを念頭においた工場増設等の追加投資を軸に展開し、同時並行で資産の有効活用を踏まえ、人財育成・研究開発力の向上に資する新本社の建替えも検討していく方針です。

主な投資実績・計画②(TCFD対応)

主な投資実績・計画②です。設備投資と同時並行でTCFD等も念頭に置いた対策を講じます。本件はその一例ですが、サプライチェーン排出量への対応状況として、Scope2の目標設定と対応状況を示しています。本年度は2020年度比でマイナス15パーセントをグリーン電力の導入等で対応し、2030年度には50パーセントを削減、2050年度にはすべて削減する予定です。

資本政策(利益還元⽅針)

資本政策です。中期経営計画第1ステップである2021年度は、営業キャッシュフロー17億8,000万円を計上し、1株あたりの配当金を60円に引き上げました。

また中期経営計画第2ステップ・第3ステップにおいても、営業キャッシュフロー15億円程度を維持することで、中期経営計画期間中の1株あたりの配当金の下限を60円とします。

本件とは別に、2024年は弊社創立80周年にあたりますので、記念配当を検討しています。記念配当については機会をあらためて発表します。

主な経営指標の実績推移・計画

主な経営指標の実績推移と計画です。中期経営計画第2ステップ最終年度は、営業キャッシュフロー16億円、ROE4.7パーセント、ROIC4.2パーセントを目標とします。中期経営計画第3ステップ最終年度は、営業キャッシュフロー18億円、ROE 5.5パーセント、ROIC 4.7パーセントを目標とします。

中期経営計画において、過去4期の経営指標の平均値から底上げを実施し、より変革に向けた経営方針や意思を「見える化」していきたいと考えています。

補⾜資料①財務データ 各種指標

最後に補足資料として過去5年の売上高、営業利益、および資産状況や財務指標、中期経営計画の具体的な取り組みやSDGsの取り組みなどを添付しています。お時間がある時にご覧いただきたいと思います。

弊社としては、中期経営計画の着実な実行を継続することで、持続的な売上拡大、利益の確保に努めます。今後ともご支援のほどよろしくお願い申し上げます。

以上をもちまして、2022年3月期の決算説明会を終わらせていただきます。ご清聴ありがとうございました。