企業使命と製品・サービス

大貫浩氏:リックソフト株式会社代表の大貫でございます。本日は当社決算説明会にご参加いただき、誠にありがとうございます。さっそくご説明に入りたいと思います。

まず、当社の企業使命ですが、スライドに記載しているとおり、「『価値あるツール』を世界中の多くの人が使えるようにすること」です。この使命を実現するために、スライド下に3色で記載している製品・サービスの提供を行っています。具体的には、ライセンス&SIサービス、クラウドサービス、自社ソフト開発です。

本日は、決算の状況、業績予想と今後の構想、事業の概況についてご説明します。Appendixは説明資料となっていますので、後日参照いただければと思います。

2021年2月期 実績(累計)

まず、決算の状況についてご説明します。2021年2月期の実績としては、売上高は前年比プラス43.5パーセントと、大きく伸長することができました。人材と開発への投資を継続しているのですが、売上成長でカバーし、営業利益も前年比プラス49.5パーセントを達成することができました。

2021年2月期 通期売上高推移

次のスライドをご覧ください。4年間の売上高の推移です。2018年2月期は約17億円でしたが、そこから約24億円、約30億円、約44億円と、継続して高い成長を実現することができています。

2021年2月期 業務別売上高(累計)

弊社には3つのビジネスがあるとお伝えしましたが、それぞれの分類の売上高と成長率を記載しています。弊社のメインビジネスであるライセンス売上は、前年比プラス60.6パーセントと、高く成長することができ、先ほどお伝えした全体の成長率である43.5パーセントを牽引しています。

一方で、新型コロナウイルスの影響があり、案件のスロー化や縮小化が発生しています。それにより、SI売上は前年比マイナス7.3パーセント、クラウドサービスは前年比プラス17.9パーセントとなり、想定より成長が鈍化している状況になっています。

2021年2月期 業務別の四半期売上高推移

3つの業務の過去4年間を振り返り、四半期ごとに売上を並べたものがこちらのグラフです。赤枠で囲んである第4四半期は、緑色の部分のライセンス売上高と、ピンク色の部分の自社ソフト開発売上高が急伸し、過去最高の15億9,200万円を記録することができました。

2021年2月期 ライセンスの四半期売上高推移

伸びたライセンス売上をさらにブレイクダウンしたものが、次のスライドです。こちらも毎年同じように色付けしていますが、どの部分が伸びたのかを示したグラフになっています。

赤枠で囲った部分については、青い部分の既存顧客の保守更新もしくはアップセルが11億5,000万円と、過去の四半期と比べても非常に高い成長を実現することができました。

スライドの上にも記載していますが、「Atlassian」の既存顧客からの前倒し注文が多く発生したことが原因となっています。

【解説】Atlassianライセンスについて

それについてもう少し詳しく述べたのが、こちらのスライドです。「Atlassianライセンスについて」と記載していますが、昨年10月、Atlassian社はクラウドファースト企業としてクラウド製品に注力すると発表しました。

ただ、クラウド製品に注力すると言っても、具体的に発表したのは、ここに書いてある3点です。1点目は、オンプレミス向けサーバー製品を段階的に販売停止することです。スライドの下の絵でご説明しますが、一番下にある、アトラシアン製品サーバー版は今まではメインの製品であり、日本のお客さまもこの製品を最も使っていました。

しかし、使えるのは製品サポートがある2024年2月までであり、あと3年弱になります。スライドの絵の中に「移行」と記載していますが、「この3年弱の間にData Center版もしくはAtlassian Cloud版の製品群に移行してください」というアナウンスが出ています。

このData Center版はサーバー製品の上位製品であり、その分値段も高くなっています。スライドの2点目に記載していますが、そのData Center製品をさらに強化すること、および値上げをすることを発表しました。

その値上げについては3点目に記載しています。なくなるサーバー製品とData Center製品の2製品を一部値上げするということで、この2製品を使っているお客さまで、製品の値上がり前に前倒して注文することが可能な場合、私たちも従来価格での提供を行います。また、Atlassian製品を1年以上の期間で購入することもできます。

こちらはマックスで2年になるのですが、例えば、18ヶ月などの期間でお客さまが購入していったということが発生し、前のスライドの既存顧客の売上がグンと伸びています。

2021年2月期 コスト分析(累計)

次はコスト分析についてです。こちらは原価も含めたコストであり、前年比プラス43パーセントとなっていますが、売上の成長とほぼ同じ伸び率になっています。

ただ、その中でも私たちが戦略的、意図的に使ったコストもあります。それは、スライドの右側に太字で記載している戦略的支出です。一番使用したのは研究開発費であり、プラス100パーセントと、前年から2倍も研究開発に注力しました。それにより、新製品の開発等を行っています。

また、支払手数料がプラス23パーセントとなっていますが、新製品もしくは新規ビジネスに関わる費用として支払手数料が発生しています。

さらに、弊社はビジネスを伸ばす時には必ず技術者が必要になるということで、技術要員が多い会社です。よって、人件費も増えており、採用による要員増でプラス27パーセントとなっています。

2021年2月期 財務状況

続いて、財務についての報告です。流動資産の構成比は94.1パーセントになっていますが、現在のコロナ禍のような先行き不透明な状況でも安定的に経営できるよう、十分な手持ち資金があると認識しています。

2022年2月期 業績予想

続いて、業績予想と今後の構想についてご説明します。まず業績予想ですが、2022年2月期の売上高の予想は約44億円ということで、終わった期の実績とほぼ同じであり、前年比で100パーセントとなっています。

先ほどからお伝えしているように、お客さまからの製品値上げ前の前倒し発注が多かったということが、業績予想が終わった期と同じということの主な原因となっています。

また、今期はこれからお伝えする新しい構想に基づき、新規のビジネスを立ち上げようと考えています。そこに投資するということもあり、営業利益から下が68パーセント前後になっています。終わった期の数字より2億円弱下がる計画です。

グローバルDXプラットフォーム構想

では、その新しいビジネスである、グローバルDXプラットフォーム構想についてご説明します。スライドの絵をご覧ください。私たちの既存のビジネスである、緑色とオレンジ色で記載しているライセンス&SIサービスとクラウドサービスは、主に従業員1,000人以上の大手のお客さまに提供している製品のサービスになります。

そして、ここが従来の弊社の顧客層です。日本で言うと約4,300社がマーケットになっているのですが、その部分にこのグローバルDXプラットフォームを使うことで、顧客層を50人から1,000人レベルの中堅企業である約11万社、さらに50人未満の潜在の顧客層である約374万社まで増やしていこうと考えています。

今は海外や国内のSaaSが非常に豊富になっています。それについてはこの後お伝えするのですが、ここをうまく使いたいと思います。今までオンプレミスで提供していたサービスでは、数がある程度限られてしまうのですが、SaaSをうまく使い、海外・国内SaaSを安全に使いやすくする機能をグローバルDXプラットフォームの中に乗せ、中堅企業・中小企業のお客さまに提供しようと思っています。

また、各顧客層が抱える課題もスライドの右側に記載しています。客層が異なると、抱える課題もそれぞれ異なってくると思います。私たちが今まで取り組んでいた既存の顧客層が抱える課題は、具体的には大きく3点あります。私たちの顧客層は業界上位に位置するお客さまが多かったのですが、そのようなお客さまは上位を維持するために先進的な取り組みを多く行っていました。もちろん、DXに対しても先行的な取り組みを行っています。さらに、グローバルで競争しています。

しかし、これが中堅企業・中小企業になると少しずつ変わってきます。大手企業が作り上げたものをベストプラクティスと言うとすると、どちらかと言うとそのベストプラクティスを追従したい、もしくは最初からそれを取り込みたいと考えるのが中堅企業・中小企業です。それも、低予算であったり、中小企業の顧客層としてそもそもIT化する時に専門の要員がいなかったりという課題があります。

そこで、今まで大手企業で培ってきた弊社のノウハウを使い、中堅企業・中小企業に提供していこうということです。その時に、そのノウハウをグローバルDXプラットフォームに乗せ、幅広い顧客層に提供していこうと考えています。

顧客課題を深堀り

この顧客課題については、こちらのスライドに詳しく記載しています。タイトルとして「顧客課題を深堀り」と記載していますが、お客さまの悩みは非常に多くあります。

特に最近は、すべての業界・すべての企業でDX対応が叫ばれています。DXに対応しなければ生き残れないことにみなさま気づいていますし、対応しなければいけないのですが、「いやいや、対応できる人がいないよ」ということです。政府から「DXレポート」が出ていますが、「2025年の崖」という名称で、IT業界の中では非常に広く認知されています。

また、IT予算や要員がいたとしても、8割以上が既存システムの運用・保守に充てられており、DXを推進するための新しいシステムに振り向けられる資金や人材がないという問題があります。

SaaSが充実しており、増えてきていることはみなさまも感じていると思います。ただし、増えたSaaSをうまく使うことによって、1点目と2点目の課題は多少は解決すると思うのですが、今度は増えすぎたSaaSで、適切な選択に迷うという新しい課題も発生していると思います。

SaaSの充実という外部環境の変化

次のスライドは、増えたSaaSがどのくらいあるのかということです。「SaaSの充実」と記載していますが、外部環境が変化してきました。SaaSが充実してきていますので、これをうまく使うことで、新しいDX推進を行う新規事業をすばやく立ち上げることができる時代になっていると思います。これは大企業でも中小企業でも同じことができます。

「SaaS業界レポート」という資料を見ると、日本で使えるSaaSは約800個あると記載されています。ここではコラボレーション、マーケティング&セールス、Othersとありますが、それ以外にもさまざまな分野のSaaSが充実してきており、実際に使われ始めています。

スライド右側の棒グラフをご覧ください。ある調査会社の結果として、2020年を境にSaaSの売上とパッケージ、オンプレで使うソフトウェアのツールの売上がほぼ「fifty-fifty」となり、今後はSaaSのほうが増えていくという予想が公開されています。このSaaSをうまく使って法人企業の成長を後押ししようというのが、グローバルDXプラットフォームの基本的なコンセプトになっています。

集客から顧客化までの変化

リックソフトの何が変わるかです。これは当社からの目線なのですが、集客から顧客化までが大きく変化すると思っています。当社はこれまで、当社のWebサイトに情報を取りに来ることで見込み客に集まっていただき、問い合わせフォームから問い合わせていただいて商談の場をもって顧客化する流れでした。

しかし、スライドの下側の「これから」を見ていただくと、その流れはもちろん継続しているのですが、プラスして、プラットフォームの中に持っているSaaSの管理機能をうまく使い、お客さまが自ら検証・評価するかたちを作っています。これを、お客さまのセルフサービス化と言っています。そして顧客化していくような流れを新しく作りたいと思っています。

弊社も人が動くとコストがかかりますので、低価格化を実現するためには、できるだけ自動化を施し、お客さまが自分で進められるよう、セルフサービス化できるようなグローバルDXプラットフォームにしようと考えています。

「では、具体的にはどのような機能があるのか?」ということは、スライドの上のほうに記載しています。グローバルDXプラットフォーム、通称GDXPのSaaS管理機能により、アカウントの管理や監査等の各種レポートなど、法人顧客がSaaS利用時に共通で必要となる付加機能を提供できるようになります。さらに、弊社から見た視点ですが、集客から顧客化するまでの工程を限りなく自動化できるような機能を想定しています。

当社の事業全体を整理し、2つの業務へ

続いて、「では、このグローバルDXプラットフォームができると、リックソフトのビジネスはどうなるのか?」というところが、こちらのスライドです。最初にお伝えしたように、当社は3つのビジネスを展開していましたが、それが2つに集約されると思っています。

その1つはグローバルDXプラットフォームです。定義として、スライドに補足を記載しています。弊社はアジャイル開発をする製品を多くのお客さまに提供していますので、そこは外せないということで、引き続き提供していきます。しかし、そこだけではなく、DXに対する支援まで広げていきたいと考えています。

そこまで提供するのに最適なツールの選定についてですが、その時に必要なのは情報だけではありません。「システム統合」と言いますが、SaaSはさまざまな単品の機能ですので、それを複数組み合わせて使うことが実現できる実践的なプラットフォームも考えています。世界中からよい製品を選定し、そのプラットフォームの周りに並べ、日本のお客さまに提供します。スライドの絵で言うと左側のループです。

そして、そこで得られたノウハウを自社プロダクトの開発で使います。こちらは引き続きAtlassian製品を機能拡張するアプリを開発し、海外および国内に提供していきます。このループをうまく回していくことが当社の事業の全体像になっていくと考えています。

M&Aや業務提携の推進

次のスライドをご覧ください。当社単体ではやはりスピードも落ちますし、実現できる範囲も狭まるということで、M&Aや業務提携をうまく活用し、スピーディに進めていきたいと考えています。

堅調なAtlassianライセンス取引の積上げ実績

続いて、事業の概況についてご説明します。まず、「Atlassian」のライセンス取引の積上げ実績ということで、いつも見ていただいているグラフになりますが、お客さまは引き続き過去から継続して使われています。直近2月に多くのお客さまが先行発注をかけましたが、それがグラフからも読み取れるくらい、右端で緑の部分が上がっており、先行受注が多く発生したことを物語っています。

リッククラウドの売上高とインスタンス数の推移

続いて、「リッククラウド」の売上高とインスタンス数の遷移です。直近の四半期の推移的にはインスタンス数が多少下がっていますが、全体的に見れば堅調に推移していると判断しています。

自社ソフト開発の顧客数の推移

続いて、自社ソフトの顧客数の推移です。こちらは4年間を並べていますが、直近では、国内・海外合わせて約3,900社のお客さまを持つほどまでに成長することができました。1年前が約2,000社でしたので、この1年間で2倍弱増えることができました。ただ、自社ソフトのマーケットは、Atlassian顧客数とイコールですので、今、Atlassian顧客数は約17万社あります。その中の3,900社とは、まだ2パーセントですので、今後この3,900社をより増やすことはまだまだ可能だと考えています。

自社ソフト開発の売上高推移

次のスライドは金額ベースに変換したものになります。青い部分で示されている海外が伸びているのを見て取れるかと思います。海外売上が3年間でプラス287パーセントアップという実績を持つことができています。そして、70ヶ国以上に販売する実績を残しています。

従業員の推移

続いて、従業員の変化についてです。3年間の推移を記載していますが、1年前は約10人増えたのですが、直近ではそれほど増えていない結果となっています。やはり新型コロナウイルスの問題が発生しましたので、社内でも計画どおり人を入れるか否かと、人材を増やすスピードをコントロールしていたこともあり、過去より人を増やすスピードが少し鈍った1年だったと思っています。

ただし、今後は営業や技術を増員する計画です。先ほどお伝えしたグローバルDXプラットフォームやお客さまのクラウド化、「リッククラウド」への新しい顧客の取り込みなど、営業も技術も必要となりますので、今期は増員する方針で考えています。私からのご説明は以上です。

質疑応答:先行受注が新しい期に与えるインパクトについて

質問1:決算結果におけるライセンスの売上高が過去最高であり、第4四半期の先行受注により前倒し更新となる結果となりましたが、新しい期に与えるインパクトはどのように理解しておけばよいですか?

大貫:スライドのグラフの青い部分が11億5,000万円と、過去の四半期に比べて非常に高い売上になったことが、今期にどう影響するかというご質問だと思います。非常に申し訳ないのですが、具体的な数字のご回答は差し控えたいと思います。

少し補足しますが、すべてのお客さまが前倒し注文したのではなく、一部の、前倒し注文ができるタイミングとライセンス更新のタイミングが合ったお客さまが行いました。加えて、「Atlassian」のルール的に、先行受注できる上限はマックス2年間ですので、今期に多少は影響がありますが、そこまでガツンと下がるとは考えていません。

質疑応答:グローバルDXプラットフォームの取り組み例について

質問2:グローバルDXプラットフォームの今後の構想の中でお話ししていましたが、具体的な取り組み例などがありましたら、支障のない範囲で聞かせてください。

大貫:グローバルDXプラットフォーム構想により顧客数を増やそうと思っています。例えば、中小企業のお客さまです。50人未満のお客さまの中にはIT要員がいないのが現実だと思います。しかし、何かしら新しいよいツールを使って生産性を高めたり、DXに対応していったりすることが必要になってきていると思います。このプラットフォームには、安全に使いやすくする役割があると思っています。

先日、「Atlassian」のツールが、設定によってある重要な社内情報をインターネット上に保管してしまっていたというニュースが流れました。そのようなこともメーカーであるAtlassianからすると1つの機能であるという認識になります。

「Atlassian」のツールは、企業の人たちだけではなく、NPO法人も使いますので、インターネット上に公開する使い方ももちろん想定しています。メーカーから見ると1つの機能なのですが、私たち法人顧客を相手にするメーカーが見ると、インターネットに公開することは決してないと思います。もし、仮にその設定になっていたら、すぐにわかる警告を与えるなどということをプラットフォームでできるようにします。そうすると、専門のIT要員がいなくても、安全に使える環境を提供することができると思います。そのような顧客の課題や、SaaSのメーカーでは提供できないところを提供することがこのプラットフォームの目的・役割だと思っています。

これまで、私たちは大手企業に対して、100以上ものさまざまな機能追加やプログラム提供を行ってきました。それはオンプレミスで行われていたため、なかなか外に出せるものではなかったのですが、SaaSになった瞬間、今まで培ってきたノウハウをプラットフォームの中に入れてSaaSを使いやすくすることができ、みなさまの目に止まるかたちで、私たちの技術力の結晶をお見せすることができると思っています。

質疑応答:どのような顧客層をどこまで取り込む想定なのかについて

質問3:外部多数のSaaSのプラットフォームになる戦略は、会計SaaSやECサイト構築運営など、多くの企業が立ち上げています。会計やECサイト運営は顧客の商流を握っており、プラットフォーマーへのドアノッカーとして強力ですが、リックソフトのようなAtlassian製品ではニッチ過ぎて幅広い顧客を取り込めないのでしょうか? それとも一部を取り込むだけでも業績寄与は十分と考えているのですか?

大貫:どのような顧客層をどこまで取り込む想定なのかというご質問だと思いますが、実はAtlassianの戦略とも似ています。AtlassianのIR資料を見ると、今までは製品開発に特化した人をメインのコアユーザーとし、業績を伸ばしてきていたのですが、それを日本で言うホワイトカラー、一般の客層に増やそうとしています。

客層で言えば10倍くらいの市場規模になることがIR資料にも出ていますが、実は私たちもその資料を見て、Atlassianの戦略として、日本にも開発以外の顧客層を取り込み、一般的なホワイトカラーのワークマネジメントを取り込むことを目指しています。これによって会計などの業種というよりは、一般的な作業の効率化を目指します。そのようなところを機能展開として考えています。

質疑応答:時間軸のイメージとプラットフォームの基盤の完成時期について

質問4:どのような時間軸をイメージして動くのでしょうか? SaaS管理機能などのプラットフォームの基盤はすでに完成しているのですか?

大貫:時間軸についてはまだ完成してはおらず、主要な開発はこれからになります。ただ、100パーセント完成してから世の中に出すというものではありません。先日発生したセキュリティ接点のチェックなど、時期的に急ぐ必要があるものもあります。それをできるだけ早くお客さまに提供していきたいと思います。

例えば、クラウド製品は弊社もAtlassianと同じ価格で出していますので、プラスアルファの機能があれば、今までリックソフト以外から買っていたAtlassianのクラウド製品をリックソフトに乗り換えて買っていただくような可能性もあると考えています。

どれだけの時間軸でどれだけのSaaSをつなげていくかということについては、申し訳ありませんが、まだ具体的に公表できる資料はありません。

質疑応答:インスタンス数の減少について

質問5:クラウドサービスのインスタンス数の減少は、クラウド利用の減少を意味するという理解でよいでしょうか? もしそうであれば、第4四半期のインスタンス数の減少はどのようなユーザー状況を反映しているのでしょうか?

大貫:インスタンス数が下がっていますが、今までも新規のお客さまになる数から抜けていく数を差し引きして増えていったという実情があります。減ったのは、要は入ってくる数が減る数に足りないということなのですが、これにはAtlassianのサーバー製品の終了と新型コロナウイルスが影響しています。

弊社のクラウドサービスは、ある程度お客さまと密に相談しながら実装していくため、インスタンス数が増えていくという実情があります。新しいサーバー製品の集束ですので、今はお客さまがData Centerを選ぶのかAtlassian Cloudを選ぶのかを考えている時期にあります。

今までであれば、サーバー製品一択でリッククラウドの上にインスタンスを作ってインスタンス数が増えていくことがスピーディに行われていたのですが、現在はお客さまが考えている、かつ新型コロナウイルスの影響があるわけです。弊社と一緒に検討していただいているのですが、その検討がスローになっているということで、減っていく数のほうが入ってくる数より多かったということが起こっており、台数が減るという現象になっています。

質疑応答:自社ソフト開発の売上成長について

質問6:自社ソフト開発の売上は順調に成長していますが、売上高全体に対する寄与は10パーセント弱だと思います。今後、どのような売上成長をイメージしていますか? また、そのための具体的な取り組みについて教えてください。

大貫:ご覧のとおり成長はしているのですが、全体の中では6パーセントになっており、私もなかなか売上のレベルでは寄与できていないと認識しています。ここをどのくらいの時間軸、スピード感で何パーセントずつ上げていくのかというところですが、終わった期では前年比で45パーセント弱成長することができています。

しかし、来年も45パーセントに届くかと言うと、正直厳しいと思っています。だからと言って、20パーセントまで下がるということではなく、20パーセントから40パーセントの間で成長していきたいと思っています。また、それ以上に成長することは考えていないのかということですが、先ほどお伝えしたM&Aにより製品を一度に増やしたりすることは検討しています。

最初にお伝えした20パーセントから40パーセントという数字ですが、既存製品の中での自然な成長としてはそのくらいしかできないと思っていますので、そのような数字となっています。M&Aなどを検討しながら線形的ではない成長ができると考えています。

質疑応答:先行受注の計上とAtlassianの方針変更の影響について

質問7:Atlassianの方針変更の影響について教えてください。Data Center型、Atlassian Cloud版移行により、リックソフトを介さずにAtlassian製品を使えるようになってしまうのでしょうか? リックソフトを通じて導入するメリットは、顧客にとってどのような点がポイントになりますか? また、先行受注について、既存顧客の保守更新ならびにアップセルは、この四半期だけの計上でしょうか?

大貫:先行受注はこの四半期だけかというところですが、おっしゃるとおりです。「Atlassian」の先行受注分は2月までという期限が切られていますので、弊社の会計期の終わりの2月末までにはほとんどの売上が計上されます。先行受注は、ここで言う第4四半期が最後になると認識しています。

また、弊社の存在価値についてですが、スライド44ページに代表的なAtlassian製品の販売価格があります。Atlassian Cloud製品とData Center製品がありますが、その下を見ると、Atlassian Cloud製品はStandardとPremiumがあります。こちらはAtlassian製品そのものでして、この価格が弊社から提供している価格であり、イコール「Atlassian」が提供している価格です。これがCloud製品になると、なかなか弊社の技術力を示しにくい事実はありますので、価格は一緒にしています。

ただし、一度これで出したのですが、より強い、今までどおりのサポートが欲しいというお客さまのリクエストもありました。ここには記載していないのですが、「サポートプラス」や、さらにその上位の「サポートプラス Pro」というアドオンサポートを弊社で用意しています。まずは「Atlassian」と同じ金額でAtlassian Cloudを使い始めることができ、だんだんと使い方が高度になっていって、「難しい」「まずい」と思ったお客さまには、プラスオンでサポートを提供することができる商品の品揃えを、私たちで用意しています。

また、スライドの右側のData Center製品は、オンプレの製品より高度な製品になりますが、ご覧のとおり、数千万円、1億円という金額単位になります。このくらい高い製品ですので、ユーザーだけではなかなか使いこなすことができません。

したがって、Data Centerの価格付けとしては、「RSナレッジ付き」や「RS標準サポート付き」の製品を販売しており、私たちの技術的なナレッジをライセンスと一緒に提供しています。そこにはまだ市場価値があると思っていますので、この製品をお客さまに買っていただいています。

したがって、Atlassian Cloudの方が私たちのサポートや技術力を示しにくいのですが、プラスオンできます。さらに、先ほどのグローバルDXプラットフォームにAtlassian Cloud製品を寄せていこうという長期的な考え・戦略がありますので、私たちの今まで培ったノウハウをこのプラットフォームに乗せ、私たち以外から購入されたAtlassian Cloud製品もこのプラットフォームの存在によって集めることができないかと考えています。

質疑応答:2年契約のライセンス料の計上について

質問8:2年契約のライセンス料は、契約年に一括売上計上するのですか? それとも利用期間に応じて按分して売上計上するのでしょうか?

大貫:一括計上になります。理由としては、監査法人とも議論の対象になったのですが、そこで出た1つの大きな考え方として納品義務があります。ライセンスの納品によってすべて終わるかどうかという観点で、1,000万円なら1,000万円の、お客さまが支払った金額に対する義務が生じます。

ライセンスを2年分一括でお客さまに納品してしまえば、その後、仮に私たちの会社に何かあったとしても、お客さまには2年分使える権利が渡っています。よって、それ以降の義務はリックソフトには生じていないということで、売上はその時点で一括計上してよいという考えです。

質疑応答:競合に対するメリットや優位性について

質問9:国内で続々と新たなSaaSが誕生していますが、あえて海外のSaaSをリックソフトのプラットフォームで利用することによるユーザー企業のメリットは何でしょうか? また、SaaSの管理システムにはすでに競合も多いと思いますが、競合に対して優位性を発揮していくとしたら、それはどこになりますか?

大貫:優位性に関してですが、数多くのSaaSを品揃えするわけではありません。まず、私たちの慣れているソフトウェアの開発環境、「DevOps」と言われるキーワードで広まっていますが、そこについて品揃えをしようとしています。そこに関しては、開発ツールについてのナレッジが約10年たまっていますので、他の業者、ベンダーより慣れているところがあると思っています。そこが優位性でもありますし、ノウハウをプラットフォームに機能化しやすいです。そこが私たちの生きる道と言いますか、買っていただく一番のポイントであると思っています。

また、日本のSaaSも数多く出ており、日本の考え方に合った方法もあるのですが、日本のSaaSがうまく成長できていない分野もあると思っています。まさにそれが、「Atlassian」が日本で伸びたところです。したがって、もちろん国内のSaaSにも目を向けますが、海外にまで目を向けて、ある分野で一番よいものを提供することを考えています。国内のSaaSのほうがよければ国内のSaaSを選ぶこともあります。よって、海外のものも含めたセレクトショップになるということです。私たちも、必ずしも海外のSaaSが優れているとは考えていません。適材適所だと思っています。

最後になりますが、本日は貴重なお時間をいただき誠にありがとうございました。今期は、ご説明の中で何度も出てきました、グローバルDXプラットフォームに力を入れて事業を進めていきたいと思っています。引き続き、リックソフトに注目していただけますと幸いでございます。本日はどうもありがとうございました。