70年目の転進

栗原権右衛門氏:みなさま、こんにちは。本日は大変お忙しい中、またコロナ禍の中、令和2年度第2四半期の決算説明会にご出席いただきまして誠にありがとうございます。また、日頃より弊社に対してひとかたならぬご支援とご愛顧をいただきまして、重ねて御礼を申し上げたいと思います。

当社は昨年5月におかげさまで創立70周年を迎えましたが、これを機に「70年目の転進」というメッセージを内外に発信しました。

スライドに掲載している絵が示すように、創立以来、電子顕微鏡やNMRを中心とした理科学機器、分析機器を核に、アカデミア市場を中心に事業を継続してきました。ここで培った技術と人脈は、当社のDNAであり、また財産でもあります。

しかし、こちらの市場規模は限られており、さらなる業容拡大のためにはここから発生する技術をもとに、さらに大きな半導体や、現在開発中の3Dプリンタなどの産業機器、あるいは医用機器事業、そしてすべての機器に共通するサービス事業を推進する必要があります。

当社は3年ごとに中期計画を策定しており、現在「Triangle Plan 2022」の2年目に当たりますが、今後は「70年目の転進」を長期的な経営戦略のバックボーンとして位置付け、さらなる業容拡大を目指していきたいと思っています。

おかげさまで今、第2四半期も電子ビーム露光装置を中心にした事業が好調で、「70年目の転進」に沿った事業運営が着実に実行されていると思っています。

今後、ご理解、ご支援をみなさまにはお願いしたいと思いますので、よろしくお願いします。本日は大変ありがとうございました。詳細については社長の大井からご説明します。

サマリー

大井泉氏:日本電子株式会社、代表取締役社長兼COOの大井でございます。それでは私から、2020年度上期の実績と通期の見通し、そしてコロナ禍の最新の市況も含めた各事業の状況およびトピックスについてご説明したいと思います。よろしくお願いします。

最初にサマリーです。先ほど会長の栗原がお伝えしたとおり、当社は成長への指針として「70年目の転進」に沿った各施策を実行しています。前回の決算説明会でご説明した、武蔵村山の新工場の取得、あるいは海外のサイエンスベンチャー企業のM&A等を展開しています。

また、「70年目の転進」の成長に欠かせない「YOKOGUSHI 戦略」も引き続き実行しています。こちらは自社の部門同士の「YOKOGUSHI」だけではなく、オープンイノベーションと言い換えられると思いますが、産学・産産連携など外部との「YOKOGUSHI 戦略」を積極的に推進しており、それが当社の現在の成長の一助になっていると考えています。

後ほどお伝えしますが、おかげさまで今年度上期は過去最高益を達成しました。そちらに大きく貢献しているのが半導体事業です。

一方、通期見込みですが、こちらはすでに発表しているとおり、新型コロナウイルス感染拡大の影響が引き続きありますので、減収減益の見通しとなっています。こちらについてはそれぞれ詳細をご説明したいと思っています。

2020年度第2四半期累計期間決算実績(P/L)

今年度の上期の実績および通期の予想についてです。6ページをご覧ください。2020年度上期の実績です。先ほどお伝えしたとおり、営業利益、経常利益、当期純利益ともに上期としては過去最高利益を達成しました。売上高494億円は、昨年度の511億円に次いで過去2番目の数字です。

経常利益の昨年度の上期と比較した要因分析ですが、プラス要因として原価改善があります。こちらは装置、サービスとの構成差ですが、特に上期は今収益を牽引している産業機器、特に半導体事業の影響、あるいはサービスの売上比率が多かったということです。

販売管理費の減は、他社も非常に似たような状況かと思いますが、コロナ禍の影響です。我々が参加を予定していた展示会や学会がなくなり、出張等の経費がかなり下がりました。営業外損益の改善は5億円です。

マイナス要因ですが、持分法投資利益は今まで持分法適用会社だった海外の子会社が3社ほど連結化しましたので、そちらの部分の投資利益が経常の部分でマイナスになっています。また、昨年度に比べて若干ですが円高に推移しましたので、為替差および売上の数量減があります。

研究開発費は予定どおり使っていますので、マイナス要因が15億円となりました。経常利益は差し引きで昨年度より9億円増加した状況です。

事業セグメント別連結売上高・営業利益の推移(第2四半期累計期間)

7ページをご覧ください。事業セグメント別の連結売上高・営業利益の推移です。ご存知のとおり、当社は3つのセグメントがあります。

まず、当社の売上で7割程度を占める当社のDNAビジネスの理科学・計測機器事業ですが、減収減益となっています。コロナ禍の影響を非常に受けている事業です。内容については後ほど詳細をご説明します。

産業機器事業は半導体の事業が含まれており、我々の電子ビーム描画装置、特にマスク用の描画装置の売上が非常に好調に推移して、売上は増収増益となっています。

医用機器事業は、臨床検査機器の生化学分析装置の販売、サービスを行っていますが、こちらは減収で、営業利益的には若干の減益となっています。

事業環境

8ページをご覧ください。当社の今の事業環境の見立てをまとめています。新型コロナウイルス感染拡大の影響が続いており、通期としては減収減益の見込みです。また、当初は107円で事業の見通しを立てていましたが、最近の円高傾向により、下期は105円のレートで見ているため減収減益の見込みとしています。

理科学・計測機器事業ですが、我々のお客さまは大学・官庁(アカデミア)がざっくり半分くらいで、民需が半分くらいと見ていますが、大学・官庁は国によって状況が異なります。

ポジティブな面では、中国は完全に新型コロナウイルス流行前の状況に戻っています。科学技術投資が盛んということで、多くの大学・官庁の予算が付いており、現在は非常に活況です。

国内は、政府の研究基盤強化の補正予算も一部ありますが、政府の科学技術への投資はあまり変わっていない状況で、それほど伸びてはいません。インドあるいは欧州では新型コロナウイルスが非常に拡大していますが、この時点でいろいろな商談のプロセスの遅延や納入の遅延が発生している状況です。

新型コロナウイルスの影響もあるかと思いますが、世界的に創薬やウイルス研究向けの研究開発の予算が非常に付いている状況で、当社のクライオ電子顕微鏡の商談が今増加している状況です。

民需については半導体は非常に活況ですが、その他はやや厳しい状況です。半導体ですが、電子ビーム描画装置と同様に、特に極東あるいは中国を中心に半導体の大手から透過型電子顕微鏡の引き合いが引き続き好調に推移しています。

他産業ですが、やや復調してきたところもありますが、全般的には自動車、鉄鋼、機械、化学など幅広い分野で設備投資が減少しています。特に、理科学・計測機器事業の中でも民需の売上が高い装置、例えば走査型電子顕微鏡はその代表例ですが、そのような装置の受注・売上がやや低くなっている状況です。

産業機器事業ですが、先ほどからお伝えしているとおり、電子ビーム描画装置の受注、売上が拡大しています。

こちらはマルチビームやマスク描画装置のシングルビーム、さらにマスク描画装置以外のウェハ等に直接描画する装置、我々はスポットビームの描画装置と呼びますが、それらの引き合いも増えているということで、全般的に受注、売上が拡大傾向です。我々の今の利益、受注、売上拡大に貢献している最も大きなところです。

一方、我々は電子ビームで薄膜を接着させる電子銃を販売していますが、主にスマートフォン、特に高級スマートフォンの市況に依存するところがあります。特に第1四半期あるいは第2四半期の期中までは非常に市況が悪く、非常に厳しい状況ということでバツにしています。

最後にメディカル事業ですが、国内と海外で大きなコントラストがあります。国内はみなさまもよくご存知のとおり、新型コロナウイルス対策以外の医用機器の新規導入が、病院の経営状況が悪化している傾向もあって非常に停滞しました。

また、第3四半期に入りやや復調気配が出てきていますが、新型コロナウイルスの再拡大がありますので、予断を許さない状況だと思っています。

一方で海外市場ですが、今まで紆余曲折の上、シーメンスから日本電子への生化学分析装置の注文がなかなか来なかったり、止まっていた時期がありましたが、昨年の期末より売上が増えています。今、安定してシーメンス向けの受注・売上が確保されており、海外市場については昨年に比べて伸びている状況です。

2020年度予想(P/L)

9ページをご覧ください。当社の現状の通期予想としては、連結売上高は1,090億円、営業利益は51億円、経常利益は55億円、当期純利益は38億円です。上期の決算の発表時にこちらの見込みを出しました。コロナ禍で非常に不透明な部分もありますので、さらに大きな変化があった場合は速やかに開示していきたいと思っています。

利益の増減要因

10ページをご覧ください。通期の見込みに対する経常利益の増減分析です。特に理科学・計測機器事業の売上数量減に伴う利益の悪化が1つの要因となっています。

ただし、引き合い等は非常に堅調で、新型コロナウイルスによって引き合いの予算化、あるいは予算化したものは、受注へのプロセスに時間がかかっているところがあります。新型コロナウイルスの状況がいったん平時になれば、理科学機器の市場のマーケットはまたアクティブになってくると思っています。

事業セグメント別連結売上高・営業利益の推移(通期)

11ページをご覧ください。通期の連結売上高・営業利益の推移です。理科学・計測機器事業が減収減益、産業機器事業が増収増益、医用機器事業が減収で、若干の減益という見込みになっています。

基本的には上期の状況と大きく変わっていません。新型コロナウイルスの影響が世界的に通期にわたって続く見込みの中でこちらの予想を立てていることをご理解いただければと思います。

主要勘定の推移

12ページをご覧ください。主要勘定の推移ですが、特徴的なところは海外の売上比率が高くなっているところです。今年度の上期は69パーセント、通期の見込みは67パーセントで、特に半導体向けのマスクの描画装置の売上が増えていることで、海外の売上が高くなっている状況です。

配当については以前より発表しているとおり、12円、12円の24円を見込んでいます。設備投資は昨年度32億円に対して75億円と非常に伸びていますが、特に半導体のマルチビームや、その他の半導体の製造装置の増産に使う目的で購入した武蔵村山の工場の設備投資の金額が増加の要因となっています。

理科学・計測機器事業 数値目標

各事業の状況ですが、まず理科学・計測機器事業についてご説明します。14ページをご覧ください。現状ですが、先ほどお伝えしたとおり残念ながら減収減益の見込みになっています。

半導体向けの電子顕微鏡や、クライオの電子顕微鏡の引き合い等が活発にありますが、走査型電子顕微鏡や表面分析装置の事業は民需が中心ということで、予算の確定がやや遅れている状況が目立ってきています。

また、インドやヨーロッパで国の予算の執行が止まっている、あるいは遅れていることを見越し、このような見込みとなっています。

新製品 JSM‐IT700HRの紹介

15ページをご覧ください。そのような中、当社はこの8月にスループットを追求した新しいSEMを出しました。民需の需要が増えてくれば、非常に競争力がある走査型電子顕微鏡であると期待しています。

新しい特徴としてはスライドに図がありますが、電子ビームをヒットさせると特性X線というのが発生します。この特性X線を拾って、EDS分析を行います。

電子顕微鏡の条件、特に加速電圧という条件や試料の材料によって、「特性X線の発生領域や深さがどのくらいから出てくるか」というのが、実はかなり違ってきています。

こちらの電子顕微鏡では、どこの発生領域(深さ領域)から発生しているかを即座に表示できる機能を新しく付けました。こちらは当社のオンリーワンの機能になっています。

SEMのラインナップ拡充

16ページをご覧ください。我々はこのような「ITシリーズ」という非常にスループットが高く、かつEDSという分析装置とインテグレーションをより深く追求した装置のシリーズを出してきましたが、「IT-700HR」はその中で「ITシリーズ」としてラインナップが幅広くできたということです。

国内の民需で言いますと、自動車、鉄鋼、材料、化学等に幅広く使われる電子顕微鏡ですので、景気が戻ってきた場合にかなり売れるのではないかと期待しています。

JRI、経済産業省「グローバルニッチトップ企業100選」に認定

17ページをご覧ください。NMRのトピックです。経産省では「グローバルニッチトップ企業100選」の認定作業を行っています。趣旨としては、「個々の市場は小さいものの、世界のシェアが極めて高い製品が多数あり、それを製造する企業は世界において『なくてはならない』存在である」ということです。

この企業群を「グローバルニッチトップ企業100選」として表彰しており、当社は2013年に透過型電子顕微鏡で認定されました。NMRの事業は、JRIという関係会社で行っていますが、そのJRIがNMRの事業で今回表彰されたということです。

ノーベル賞受賞者を囲むフォーラムへの協賛

18ページをご覧ください。NMRの事業の必要性についてです。9月19日に福島県いわき市で読売新聞社が毎年開催している「ノーベル賞受賞者を囲むフォーラム」が開催されました。我々は昨年から協賛していますが、今回のフォーラムでの講演はノーベル賞を受賞された吉野先生と野依先生が行いました。

2人とも我々のNMRのユーザーであり、NMRの装置を使って研究し、成果を出して、その成果がノーベル賞につながったということで、最先端の研究とNMRがいかに結び付いているかが、この講演の中でもありましたが、1つの証左になっていると思っています。

リモートデモによる販促活動

19ページをご覧ください。コロナ禍での販促活動についてです。当社は昭島に世界的にも非常に最先端の装置がずらっと並んでいるデモ場があります。今までは世界からもかなりお客さまが来られて、サンプルの測定や実験を行っていました。

現在はそのようなことができなくなっているため、グローバルに遠隔操作を活用したデモを行ったり、お客さまへのトレーニングを連日のように行っています。このようなインフラはもうできていますので、特に海外のお客さまへのデモやトレーニングを実施している状況です。

産業機器事業 数値目標

産業機器事業です。21ページをご覧ください。通期の業績見込みは売上で240億円、営業利益で76億円で、増収増益の見通しです。

電子ビーム直接描画装置の引き合いが拡大

22ページをご覧ください。マスクの描画装置以外に、当社は直接ウェハ等に描画するシングルビームという装置も作っています。

今までこの装置はどちらかと言いますと研究開発用ということで、アカデミアや民間企業でも研究開発の目的に使われていました。最近はシングルビームの描画装置、こちらはDFBレーザーになりますが、DFBレーザー等の製造用、生産用に使う目的が増えてきています。

こちらがスポットビームの市場そのものの拡大につながっており、受注、売上、引き合いが非常に増えています。特にアジア圏で増えている状況で、こちらの拡大も来年度以降、特に期待しています。

次世代型産業用3Dプリンター

23ページをご覧ください。毎回出している次世代産業用3Dプリンタですが、順調に開発が進んでおり、今年度のおそらく末頃だと思いますが、商品機の販売開始を予定しています。

非常によい造形が出てきていますが、注目していただきたいのは造形時間です。123時間や68時間と非常に長い造形時間で、かつ品質のよい造形が出ているのが特徴で、我々もかなり自信を深めているところです。

電子ビーム3Dプリンタの他社の動きですが、数年前に電子ビーム3Dプリンタの製造会社Arcam ABという会社を買収したGE Aviationが、すでに300点以上の3Dプリント部品を備えた新型エンジンをボーイングの初飛行に使ったり、新型エンジンがアメリカの連邦航空局の認証を取得したりと、3Dプリンタの航空機の製造への本格導入が非常に進んでいます。

レーザー型も電子ビームもそれぞれ特徴がありますので、両方の本格的な導入が進むと思います。もちろん今は、新型コロナウイルスで航空機業界は非常に厳しい状況が続いていますが、航空機の製造への3Dプリンタの導入は、中長期的には我々のビジネスの拡大機会になると思っています。

医用機器事業 数値目標

医用機器事業です。通期の見込みとしては、国内は非常に厳しい状況がありますので、売上は若干落ちます。ただし、サービスあるいは消耗品は引き続き堅調に推移していますので、利益的にはそれほど落ちないと見ています。

拡大する海外市場向けに競争力のある製品を供給

26ページをご覧ください。医用機器事業の成長の考え方を表しています。生化学分析装置とは、臨床検査の機器の市場では非常に必要な装置です。我々はこの生化学分析装置で大変特徴のある強い装置を持っています。

一方、いろいろな考え方やカテゴリーは違いますが、シーメンス、堀場製作所、富士フイルムと、さまざまな会社がそれぞれの臨床検査の機器市場でトータルのソリューションを提供しようということで努力されています。

その中で、生化学分析装置は我々の装置を担いでいただくところが、我々の医用機器事業の成長のキーになるのではないかと思います。

それだけ我々の装置には特徴があります。「どの会社も日本電子の装置を担いでトータルソリューションをオファーしていく」、そのようなようなかたちを目指しており、そのような話がどんどん進んでいます。

また、これらの会社以外にも新しい販売ルートで「日本電子の生化学分析装置を扱いたい」という会社も増えてきていますので、海外での売上増を特に成長させていきたいと考えています。

研究機器の遠隔操作が本格化

28ページをご覧ください。サービス事業について簡単にご説明します。国内ですが、現在新型コロナウイルスの影響で「遠隔操作したい」「リモートで装置を動かしたい」という需要が非常に増えており、国の予算もそのような目的で付いているという状況があります。

我々はすでにそのような技術を持っており、例えば、長岡技術科学大学は我々の装置を5つの高等専門学校とつないで、すでにリモートでのオペレーション、教育を行っています。こちらは新型コロナウイルスが流行する前から、そのようなインフラを整えています。

また、大阪大学には何十台とNMRが入っています。近隣の大学や高等専門学校とつないで、リモートのオペレーションをすでに行っていますが、大阪大学といえども800メガヘルツという超高級のNMRは持っていません。

そちらについては我々が持っている、昭島の本社にあるシェアリング用の装置を使って日本電子のNMRを組み込み、遠隔活用しているという例もあります。

新型コロナウイルスで大変な状況ではありますが、このようなリモートでさまざまなインフラができるというのは1つのビジネスチャンスだと思っていますので、積極的に取り組んでいきたいと思っています。

サブスクリプションサービス「JEOL‐rento」提供開始

29ページをご覧ください。10月に発表したJEOLのサブスクリプションサービスで、「レンタルで装置をお貸しします」という事業を始めました。こちらは分析機器でどのようなかたちで発展したかというのを、1つのトライアルのようなかたちで始めています。

単に「装置をリースします」というだけではなく、その装置のサービスや「受託分析を行います」「シェアリングします」など、「JEOL-rento」でさまざまなサービスのパッケージが利用できることを特徴として始めたいと思っています。

どのようなお客さまでこのような評価を得られるかについて、今後フォローしていきたいと思っています。私からは以上です。少し長くなって申し訳ございませんでした。どうもありがとうございました。