〜61年目からの新たな挑戦〜 日本のシードから世界のSEEDへ 〜当社の歩みと成長戦略〜

浦壁昌広氏(以下、浦壁):こんばんは。株式会社シード代表取締役社長の浦壁でございます。資料に沿ってご説明します。まず、「61年目からの新たな挑戦」「日本のシードから世界のSEEDへ」ということで、当社は日本の中でのシェア拡大とともに国際化を大きなテーマとして動いています。

シードの使命

浦壁:初めての方もいると思いますので、当社の事業について少しご説明します。当社は、「『眼』の専門総合メーカーとして、お客様の『見える』をサポートする」ことをテーマとして活動しています。コンタクトレンズとそのケア用品、眼鏡が事業領域ですが、95パーセント以上がコンタクトレンズの製造販売となっています。

会社概要

浦壁:当社は1951年に創業し、1957年の設立からもうすぐ63年目になります。また、文京区の本郷で起業し、そのまま文京区で営んでいます。

沿革

浦壁:義眼に馴染みがない方もいると思うのですが、もともと当社は義眼の製造をしていた厚澤が創業しています。戦争が終わった段階では傷病を負った方も多く、義眼の需要がありました。そのような中、戦時中から「アメリカでは眼の中にプラスチックではないガラスのようなものを入れてメガネの代わりを果たすことができるらしい」という知識がありましたが、なかなか実用化することができない状態からスタートしています。

最初、厚澤は稼業の義眼の事業を営みながら、順天堂大学の初代眼科教室の教授として赴任された東京大学の佐藤先生に従事した医局員と一緒に日本でコンタクトレンズを事業化することに取り組んでいました。そこで事業を起こし、コンタクトレンズの専業メーカーとして独立しました。

思い出話としては、1970年に大阪万博が開かれているのですが、そのときに当社のコンタクトレンズをタイムカプセルに入れています。開けられるのはあと5,000年後くらいかと思いますが、当時珍しい商品ということで、日本でも紹介されています。

取扱商品 〜コンタクトレンズ〜

浦壁:こちらが、現在我々が製造している主な商品になります。コンタクトレンズの中では、1日使い捨てのコンタクトレンズが当社の事業の75パーセント以上を占めています。とくに日本は清潔や安全性の観点から、70パーセントくらいで1日使い捨てのコンタクトレンズが選ばれています。新型コロナウイルスの問題がありますので、指先の消毒など、いろいろなことが気になる方がいると思います。衛生面で安全だということで、世界中で伸びていくのではないかと思っています。

また、主に女性が使用しているかと思いますが、眼の輪郭を大きくするかたちで縁取りする、いわゆるカラーコンタクトレンズやサークルコンタクトレンズといったコンタクトレンズも販売しています。

坂本慎太郎氏(以下、坂本):コンタクトレンズの連結売上高構成比が95パーセント強となっていますが、商品の販売ルートを教えてください。眼科派またはコンタクトレンズショップ派といったこともあると思いますが、この割合はどのくらいなのでしょうか?

浦壁:国によってさまざまですが、日本における当社の構成比は、眼科ルートが30パーセントくらいです。また、大手のチェーン店がいろいろあるかと思いますが、それが40パーセントくらいで、残りの30パーセントくらいがインターネットとなっています。

基本的には、眼科が併設されている販売店やチェーン店は眼科とタイアップしているため、約70パーセントが医療と隣り合わせになっている事業です。また、30パーセントくらいがインターネットで購入しているとお伝えしましたが、インターネットの比率はだんだん上がってきているのが現状かと思います。

坂本:御社は営業の手法として店舗や病院を回ると思うのですが、それもルートセールスのようになっているのでしょうか? また、営業の方は何人くらいいるのですか?

浦壁:管理者も含めて、全体では100名程度が営業の部署に入っています。札幌から福岡まで全国の営業所がありますが、それ以外にも駐在所を12ヶ所持っており、地域に根差した営業を行っています。さらに、コロナ禍で県をまたぐ移動に敏感なお客さまもおり、駐在所を2ヶ所増やしました。地域によって駐在所を増やして対応しています。

したがって、8ヶ所の営業所と12ヶ所の駐在所で100名となっています。そのうち、コンタクトとそのケアの事業で93名くらい、眼鏡のフレームの事業で10名弱の構成になっています。基本的に、眼科についてはいわゆるルートセールス的な営業活動になりますが、チェーン店の場合はさまざまなケースがあり、店舗にお伺いする場合もあります。

チェーン店の場合は本部がありますので、そこでマーケティングやお客さまに対するキャンペーンなどのお話をしています。インターネットの販売者の方々についても本部がありますので、そちらでご相談させていただくことも多々あります。

製造設備 〜Made in Nippon〜

浦壁:今、国内外で1dayを生産している企業の中で、当社は日本一の企業だと思っています。生産規模で言うと、1dayと2週間の使い捨てのコンタクトレンズを月産で約5,000万枚製造しています。

製造場所については、研究施設や工場の設備等も含めてすべての事業を埼玉県鴻巣市に集約しています。現在、ラインを増設しているところであり、来年度にはプラス500万枚から1,000万枚くらいの上付けができるくらいの生産規模になるのではないかと思っています。

それ以外には、日本向けに台湾に2つの委託工場がありますが、こちらの生産枚数は月産で最大3,000万枚となります。埼玉県と台湾の工場の生産分を合わせると、8,000万枚から9,000万枚くらいの「1dayコンタクトレンズ」を市場に供給できるということになります。

加えて、海外で調達して海外で販売するものがありますが、それは主に中国で展開しています。こちらは最大1,000万枚くらいの生産だと思いますので、当社は月産で1億万枚くらいを世界全体に供給できるパワーがあるということになります。

シードと使い捨てコンタクトレンズの歩み

浦壁:次に使い捨てコンタクトレンズの歩みについてご説明します。当社は、国産の2週間の使い捨てコンタクトレンズを日本で最初に発売していますが、1dayにおいても日本で最初の国産メーカーとなっています。「Made in Japan」の品質管理の商品をお届けするということで、海外で製造したものであっても日本品質のものをお届けすることを大きなテーマとして掲げています。

それ以外にも、先ほどお伝えしたように、消毒や汚れの洗浄のためのコンタクトレンズのケア用品、メガネのフレームなどを販売しています。

取扱商品 〜コンタクトレンズケア用品/眼鏡〜

浦壁:当社の主な事業において、イメージキャラクターとして北川景子さんを採用しています。

市場環境 〜世界市場〜

浦壁:コンタクトレンズの事業はなかなか見えにくいかと思うのですが、意外と大きな市場となっています。ユーロモニターが調べた10月時点のデータで言うと、全世界で1兆7,500億円くらいの市場規模ではないかと思います。そのような意味で言うと、メガネの事業にけっこう肉薄する規模があります。

国別で見るとアメリカが最大のマーケットであり、30パーセントから35パーセントくらいとなっています。日本は2番目に位置付いており、20パーセント弱くらいです。また、ヨーロッパ諸国は合算して20パーセントくらいとなっています。以上で世界全体の市場の70パーセントくらいを占めていますが、その他には中国がだんだん大きくなっているのがポイントかと思います。

市場環境 〜日本市場〜

浦壁:次に日本の市場規模についてです。世界市場の統計と異なり申し訳ないのですが、こちらは日本コンタクトレンズ協会が調べたものをベースにしています。枚数ベースで言うと、この25年間で5倍くらいになっています。

これは圧倒的に1day化が進んでいるということであり、1日に消費する量が上がっていることが大きなポイントかと思います。マーケットの出荷規模で言うと、2,600億円弱くらいが卸売りベースでのコンタクトレンズの市場規模になっています。

もともと日本は、この使い捨てコンタクトレンズの市場に入るのが非常に遅くなってしまい、一時は市場がアメリカの企業に席巻された状態となりましたが、日本のメーカーが一生懸命がんばって取り戻しているところです。

当社シェアの推移

浦壁:こちらのスライドは、日本における当社のシェアを示していますが、約2,500億円の中で10パーセントくらいのシェアとなっています。特に当社が力を入れている1dayで言うと、12パーセントから13パーセントの間であると見ています。

「最近落ち気味ではないか?」と思う方もいるかと思うのですが、その理由の1つとしては、ドラッグストアやバラエティストアで売られるレンズが増えていることが挙げられます。主に台湾や韓国からのOEMの製品で、値段が比較的安いものが入っています。

先ほどのご質問にもあったように、当社は、眼科マーケットや比較的有名なチェーン店、インターネットなど、中価格帯以上のマーケットでお仕事をさせていただいています。枚数ベースや金額ベースではどうしても低価格帯のほうが有利ということで、比率的には若干分母が大きくなっているところがあるかと思います。

坂本:投資家的に見ると、シェアのデータにけっこう関心がある方がいるのですが、今は市場規模が伸びている状況であるということで、シェアの出方はあまり気にならないと思います。御社の場合は、中規模の部分で数を取りやすいと思いますし、その部分については僕はまったく気にならないと思っています。

浦壁:お値段の安いところだけを追って枚数を求めると、日本で生産している意味がなくなってしまいます。

坂本:おっしゃるとおりです。

浦壁:また、OEMなどはどうしても購入品になりますので、規模の経済や減価償却のメリットが取れないということで、そこだけを追っていくのは企業としては得策ではないと思っています。当社としては、乱視用や遠近両用などの高付加価値帯で光学特性のあるものでマーケットのニーズに応えていくことが大切なのではないかと思っています。

坂本:続いて、中国についてお伺いします。12ページの図では緑が中国になっているのですが、中国の人口比と所得を考えるともう少し伸びてもよいかと思います。日本はどちらかというとカラーコンタクトを着ける方が増えてきており、「カラーコンタクトを着けないとノーメイクの時より恥ずかしい」という方もいます。コンタクトレンズを使う人の割合やトレンドを含めて、中国のコンタクトレンズ市場について教えてください。

浦壁:日本は意外とクリアレンズの市場となっており、カラーレンズは400億円台です。20代から30代の女性でカラーコンタクトレンズやサークルコンタクトレンズをお使いの方は5人に1人くらいの割合となります。残りの方々はクリアのコンタクトレンズを使っていることになります。クリアのコンタクトレンズを使用する方が多い理由の1つとして、乱視の方は15パーセントから20パーセントくらいいるのですが、カラーコンタクトレンズで乱視に対応しているものが非常に少ないことが挙げられます。当社は1品目だけ出していますが、そのような機能面で言うとクリアのコンタクトレンズのほうが度数も多いというのがあると思います。

中国の場合は、コンタクトレンズユーザーのうちの約80パーセントが女性です。また、カラーコンタクトレンズの割合は50パーセント以上のため、市場の40パーセントから50パーセントをカラーコンタクトレンズが占めています。

そのような意味では、ファッション性の入れ替わりが激しいということと、インターネットでの販売が50パーセント近くを占めているということがありますので、枚数ベースでは増えているのですが、低価格化も同時に進んでいます。こちらの統計で言うと少なく出ていますが、病院ルートで販売されているものが補足されていないと思いますので、そのようなのを合わせるともっと増えると思います。

中国での普及率は、人口対比で言うと1パーセントから2パーセントに満たないくらいだと思っています。ただ、13億人いますので、1パーセント増えると1,300万人のユーザーが増えることになります。日本のユーザーは1,700万人から1,900万人ですので、1パーセントの数字の規模が異なります。中国は近視率が高いことも考えると、ますます希望を持てるのではないかと思っています。

星野彩季氏(以下、星野):今後の海外の展開において肝になる部分はありますか? どのような点をクリアすると海外への進出がもっと進んでいくのでしょうか?

浦壁:今、当社は30以上の国と地域に出荷していますが、一番の問題はコンタクトレンズが消費材だと思われがちなところにあります。コンタクトレンズは、日本の分類ではクラスⅢ、クラスⅣの高度管理医療機器に入っており、諸外国でも同じような分類となっています。どのようなものが高度管理医療機器かと言うと、ペースメーカーや輸液のときのチューブなどが含まれています。

したがって、ある国へ販売する時には、臨床試験の結果を出して承認を取る手続きが必要になります。あるいは、海外で臨床試験を行なっていても、プラスアルファのものを提出する必要がありますし、中国では、中国の中で行なった試験が必ず必要になります。国ごとにそれぞれ許可を取っていく必要があるため、早く着手することがすごく大事だということです。

中国では承認を取るのに3年くらいかかります。ロシアでは2年くらい、西ヨーロッパでは「CEマーク」という共通認証を使って届けを出すため、3ヶ月から6ヶ月くらいです。アジアの国々で言うと、タイで2年くらい、シンガポールで半年くらいかかります。また、日本やヨーロッパの共通認証を持っていても、それを援用するためには時間がかかります。したがって、その品目別ごとに登録しなければいけません。

坂本:そこを熟知している人材がいないといけないですし、そこが参入障壁になるということでしょうか?

浦壁:おっしゃるとおりです。それに加えて、工場の製造品質にも事前の検査が入りますので、非常に参入障壁が高い事業となっています。また、けっこうアナログなところがあります。生産自体はかなりデジタルにできるのですが、人間が着けた時に「心地がよい」あるいは「よく見える」と感じるかどうかにおいては、かなりアナログ的な技術が必要になってくること大きなポイントかと思います。

そのような意味で言うと、参入障壁が高い一方で、入るためには事前の準備が必要だということが大きなポイントかと思います。

子どもの視力低下

浦壁:現在はパンデミックと言うと新型コロナウイルスが思い浮かぶと思うのですが、実は近視もものすごい勢いで世界全体に広がっています。裸眼視力が1.0未満の高校生の割合は、10年間で約8ポイントも上がっています。このペースでいくと、最終的に90パーセントくらいの方が近視になってしまうのではないかと思います。

アジア諸国で言うと、すでに中国が80パーセント後半台に入っており、毎年数ポイントずつ上がっています。その理由の1つとしては、スマホやタブレットを含め、子どもの時からデジタルの玩具を使うため、近くを見る時間がどうしても長くなることが大きなポイントかと思います。

人口が減っている日本でも、人口の減る率よりも近視になる人の率が高ければ、市場としては広がっていることになりますし、目を酷使する時代になってきていますので、コンタクトレンズ市場においては、我々としてはある意味明るい点もあると思っています。

中期経営ビジョン・目標

浦壁:先ほど、「日本のシードから世界のSEEDへ」ということをお話ししました。我々としては、日本の高齢化社会に適応できるようにいろいろな商品を出していくことと、量産化できる商品、特に1dayのコンタクトレンズをアジアやヨーロッパを中心に横展開していくことが大きなポイントです。

第2四半期連結決算:ハイライト

浦壁:最近の決算についてです。第2四半期の9月が終わった時点の連結の売上高は134億4,400万円、連結の営業利益は5億3,400万円です。第1四半期が非常に厳しかったことが大きなポイントですが、第2四半期はだいぶ回復基調にあると思っています。

去年は、10月の消費税増税によって第2四半期に駆け込み需要があったこともあり、対前年の落ち込みで言うとそのような理由もあると思っています。

新型コロナウイルス感染症に対する取り組み:影響と対策

浦壁:新型コロナウイルスの影響についてです。4月、5月はショッピングセンターや駅ビル等が閉まりました。コンタクトレンズのチェーン店は駅に隣接することが多いため、販売店もピークは40パーセントくらいが閉まり、そのことが売上高の大きな減少の要因になっています。

また、在宅勤務の広がりによって、メガネや裸眼で過ごす方が増えたり、マスクをすることによって化粧をしなくなったこともけっこう大きなポイントです。それによって、サークルレンズも着用しなくなるということがあり、第1四半期にすごく大きな影響を及ぼしました。現在は段階的に回復しており、今の見通しで言うと、来年の1月には対前年にキャッチアップするくらいの回復基調かと思っています。

ただ、今は第3波と言われていますので、この波がどれくらい高いかによって、1月にキャッチアップできるのか、それとももう少し時間がかかるのかということはあると思っています。

坂本:1月のキャッチアップは少し早いと思ったのですが、けっこう需要があるものなのですね。それは、どちらかと言うと成長部分があるのか、それとももともと使っているものがきちんと使われるというレベルなのでしょうか?

浦壁:いろいろあると思うのですが、1つには、やはりこのようなタイミングで2週間のものから1dayに替える方が出てきていることによるボリューム増があります。

坂本:それはボリューム増えますね。どちらかと言うと僕は、コロナ禍になってコンタクトを使わないでメガネで過ごす人が多いイメージがあったのですが、「2週間のものを使っていたけど着ける日と着けない日があるから」と1dayに替えると確かに枚数が増えますね。

星野:私も最近1dayに変えました。

浦壁:毎日使っている場合には、2週間というのは規則正しくてよいのですが、「今日はどうしようかな」と思ったりする方は、使ったり使わなかったりということで、何日使ったかわからなくなるのですよね。保存液などは毎日替えて洗っていただくことを前提にしていますので、だんだん使うことが怖くなったりすると思います。そうすると、1dayの需要が膨らんできます。

また、このコロナ禍でモニターを見る時間が相当長くなったため、どうしても疲れる方もいますし、きちんと矯正して見ないと目が疲れる方もいるようです。

さらに、コンタクトレンズは多くの方が2ヶ月から3ヶ月分を常備していますが、4月、5月、6月に外出を控えたことでそれが尽きてしまったということがあります。そのような意味では、家庭在庫の調整が終わったということが1つのポイントになります。

坂本:新型コロナウイルスが落ち着いたころにまとめ買いする方がけっこういたということですね。

浦壁:また、学校、特に部活動や体育の授業が再開されたことはすごく大きいと思います。東京都が行っている学校健診でも6月くらいから目の健診が再開されたことによって、オルソケラトロジーの需要は対前年でプラスに転じています。

坂本:このあとのお話でもあると思うのですが、こちらは成長分野ですよね。

2021年3月期:業績見通しおよび配当予想

浦壁:第3波がどのくらいの落ち着き度合いなのかわからないということで、実は今のところ来年の3月の見通しは出していません。当社は海外に10ヶ所の現地法人を持っていますが、特に欧州において見えない部分がありますので、見極めてから発表したいと思っています。

2021年3月期:重点方針

浦壁:次に重点方針についてご説明します。当社は国際分野に重点を置いており、30以上の国と地域に出荷しているとお伝えしましたが、アジアにおいては基本的に自分でディストリビューションのネットワークを構築することを前提にしています。海外の販売子会社としては、中国の上海、台湾の台北、シンガポール、マレーシア、シドニーに拠点を置いています。基本的には自分でディストリビューションを行なっています。また、ここから近隣の地域にも出しています。

加えて、ベトナムのハノイ、ホーチミンにも出していますが、アジアについては自分で販売しています。インドネシアやインドについては代理店を使って販売するかたちをとっています。

欧州については、英国の子会社とドイツの子会社をそれぞれ買収し、そこを使って物流を含めて販売を行っています。ちょうどブレグジットがあったため、英国と大陸のほうで持つことがリスク分散にもなると考えています。

イギリスも新型コロナウイルスによってなかなか厳しい状況にあるのですが、1dayの比率が高いこともありますし、4番目の売上市場ですので、着実に伸ばしていけるようにがんばっていきたいと思っています。

海外展開

浦壁:海外の子会社も合わせた昨年の売上高は38億4,000万円なのですが、今年は第2四半期までで16億3,000万円となっています。中国の回復は非常に早く、3月くらいから非常に好調な売れ行きです。インターネットを中心とした11月11日の「独身の日」には、当社も相当販売することができました。次の12月12日もインターネットでのお祭りのようになっていますので、クリスマス商戦も含めて中国は期待できるのではないかと思っています。

ただ、政治の不安もあります。香港あるいはシンガポールは人の往来が非常に厳しいこともありますので、若干苦戦しています。

新たなニーズに対応する企業へ

浦壁:もう1つ、どのようなことに注力しているかについてです。我々のボリュームゾーンの1dayは主戦場だと思っています。一方で、小さなニーズであっても長く続くニーズで、かつ他がなかなか追いかけてこない部分も非常に大切な分野になると思っています。

スライドにあるように、コンタクトレンズの中にICチップを入れ、目の曲率半径の変化を通じて眼圧の変化率を測る「トリガーフィッシュ」を、スイスの子会社を通じて製造販売しています。日本、アメリカ、ヨーロッパで承認を取っています。

また、近視遺伝子のチェックのためのキットや、犬や猫の高齢化による目の障害が増えていますので、我々のコンタクトレンズを使った治療用としてのバンテージコンタクトレンズなどがあります。

さらに、夜寝る時にコンタクトをつけて角膜を矯正することにより、昼間に裸眼で過ごせる、オルソケラトロジーもあります。もともとスポーツをする方向けにスタートしていますが、今は日本眼科医会の標準治療指針も変わりましたので、若い方や学生にも利用されています。

坂本:子どもでも使用していることがありますよね。

浦壁:認可されているものはなかなかないのですが、当社のものでも臨床研究で近視の進行を抑える効果があるのではないかということで着目されており、いろいろな研究が行われているところだと思います。

また、私は新しいEDOFを着用しているのですが、これはカメラのレンズと同じで、ピントが合いやすい幅を広げるという発想の焦点深度拡張型の遠近両用コンタクトレンズです。日本を皮切りに発売していますが、オーストラリアのBrien Holden研究所と一緒に取り組んでいる案件となっています。

このように新しいレギュラー、あるいはニッチでも長く続く分野、コモディティではない分野に非常に力を入れています。

トピックス①

浦壁:今お伝えしたEDOFのレンズについては、米倉涼子さんを起用してプロモーションしています。

トピックス②

浦壁:一方で、ファッションの分野も大きなポイントになります。アパレルブランドや化粧品ブランドとして有名なJILL STUARTとコラボレーションしたファッション感覚のコンタクトレンズも出しています。

こちらは色の魅力もさることながら、色素をダブルサンドイッチしてクリアレンズで囲んでいるため、非常に安定性の高いレンズの設計になっているのが大きな特徴です。こちらは女優の福原遥さんを起用してプロモーションしています。

また、シリコーン素材で酸素の透過性の高い素材の開発に取り組んでおり、今年の11月から海外の市場で「SEED 1day Silfa」という自社製造のシリコーンのコンタクトレンズを発売しています。日本でも申請手続きを行い、来年以降に発売できるように準備を進めています。

トピックス③

浦壁:先ほどお話ししたオルソケラトロジーレンズについてです。こちらは当社と東レ㈱でコラボレーションしながら進めており、「ブレスオーコレクト」という名前で販売しています。ジョイントベンチャーで運営しており、ユニバーサルビューが我々の関連会社になっています。ユニバーサルビューがライセンスホルダーになって、東レで材料の提供と製造を行ない、当社で国内外での販売を行うかたちでコラボレーションしています。

坂本:けっこう伸びがよいですね。

浦壁:おっしゃるとおりです。新型コロナウイルスがあり、非常に危惧したのですが、第2四半期が終わった段階でも対前年で18パーセントの増であり、下期も同じようなペースで成長すると思っています。去年は1.4倍くらい成長していますので、1.2倍から1.4倍くらいのキャパシティで増えていくマーケットであると思っていますが、実は中国ですごく大きなマーケットとなっています。

坂本:そのように思いました。

浦壁:現在、中国には輸入ベースでも300億円くらいの規模のマーケットがあるのではないかと思っています。こちらについては、中国の現地企業と合弁を組み、製造プラントの準備と治験がかなり進んでいます。当社が支援し、あと2年後くらいには当社ブランドのものを発売できると思っています。

坂本:僕も使ってみたいと思います。実は20年くらいシードのハードコンタクトを使っています。

浦壁:ありがとうございます。

坂本:いきなりソフトからハードにするよりは、ある程度の親和性があってよいかと思います。

浦壁:これは角膜の矯正のため、若い方のほうが矯正しやすいかとは思います。40歳から50歳になってくると角膜も厚くなってきますので、難しいところもあるかと思います。

トピックス④

浦壁:また、この上期は学生が厳しかったということもあり、当社を知ってもらうチャンスということで、学生向けの「SEEDで大喜利~笑顔にピントを~」というキャンペーンを行いました。2回開催していますが、金券やコンタクトレンズを購入できる商品券3万円分をプレゼントすることで、学生のお手伝いができればと思っています。

さらに、我々は化学の会社ですので、社員による子供向けの理科実験をYoutubeで配信したり、当社の鴻巣の研究所に140名規模の認可保育園等の企業内設置型の保育園と学童保育を複合した、日本でも珍しい複合保育施設を設置しています。

実際の運営は社会福祉法人にお願いしているのですが、その中で理科実験を行う場所を確保し、近隣のお子さまに集まっていただいてスライムや割れないシャボン玉を作り、実験を通して化学に親しんでいただく取り組みを行なっています。

あるいは、当社の所有ビルの空いているスペースを貸し出して、学生や若者にバイト経験を通して社会に参画してもらう機会を作り、CSR活動を行なっています。

トピックス⑤

浦壁:廃プラスチックの問題が大きな話題になっていたと思うのですが、そこで衝撃的なのは、アメリカではかなりの方が使い終わったコンタクトレンズをトイレに流しているということです。それがマイクロプラスチックになっているのではないかという記事がありました。

コンタクトレンズはいろいろな細菌も付いているため、使い終わったら燃えるごみとして焼いていただければよいのですが、それよりもコンタクトレンズのケースのほうが大きな問題になっています。

当社は、当社以外の空ケースも含めて回収し、輸送用のパレットのプラスチックとして再生しています。燃やさないゼロエミッションとして、「BLUE SEED PROJECT ~海に愛(Eye)を~」という運動を行なっています。

現在、160ヶ所ほどに回収拠点を置き、400キロくらいを回収していますので、これをどんどん広げていきたいと思っています。ご覧になっている方もぜひご協力いただければと思います。

株価推移

浦壁:最近の株価はあまり思わしくなく、株主さまに対しては大変申し訳ないと思っています。コンタクトレンズは非常に息の長い商品であり、新しい商品を開発しても市場に出るまでは5年から6年かかります。ある程度長いレンジで成長を見ていただければ、企業としては着実に成長していると思っています。

株主優待制度

浦壁:株主の方には当社の商品を使っていただき、商品においてもファンになっていただきたいと思います。全国80ヶ所で使えるコンタクトレンズ・メガネの優待券を株主優待でご用意しています。これは保有株数に関係なく、単元株100株以上であればお配りしていますので、商品を通じて当社に関心を持っていただければと思います。

坂本:このケアセットは非常に手厚い優待だと思います。僕も御社を持っていたことがあるのですが、箱に入って送られてから1年くらい使えそうでした。

浦壁:そうですね。10ヶ月分くらいあるのではないかと思いますので、すごくお得なセットです。また、当社の工場は埼玉県鴻巣市にありますが、地域の名産ということで、スライドの写真にある川幅うどんなどもご用意しています。さらに、被災地を応援しようということで、必ず東北や熊本県の名産品を入れるように優待を組んでいます。株式を保持している方には優待を通じて還元していきたいと思っています。

このようなものが我々の企業としての活動であり、株主のみなさまに対するいろいろなコミュニケーションです。できるだけみなさまとお会いしたり、このようなインターネットを通じてお話しする機会を持つことで、会社あるいはコンタクトレンズ事業についてご理解いただき、ぜひファンになっていただきたいと思っています。

質疑応答:研究開発費がかかる場面について

星野:それでは質問を見ていきます。

坂本:私からはけっこう質問してしまいましたので、Twitterからいただいている質問を見ていきます。まず、「研究開発費がかかるのはどのような場面でしょうか?」という質問です。御社はいろいろな研究をしていると思うのですが、基礎研究なのか、製品に近い研究なのか、認可を得るための研究なのかといった質問だと思います。

浦壁:単品として一番高いのはいわゆる治験のコストです。通常はコンタクトレンズの治験は1回で済むのですが、新規のコンタクトレンズの材料あるいは効能を持った商品を出すときは、場合によって60人から100人であったりとさまざまかと思います。

PMDAと相談の上、複数の施設で治験を行っていくことになると、日本国内だけでも2億円から3億円くらいのお金がかかってくると思います。同じことを中国で行う場合は、材料から中国国内での治験になりますので、若干日本より安くなりますが、それでも2億円くらいはかかると思います。ただ、長い年月で考えると、基礎研究やいろいろな光学機の設計のための施策などを延べ、ずっと一定の費用をかけています。

先ほどのお話にあったように、研究開発の分野は2つに分かれます。まず1つ目としては、化学と薬学で新しい素材を開発し、コンタクトレンズの量産に向くもの、かつ人間に適合するものを作っていくことになります。基礎から応用までありますが、応用は量産に耐えうるものや、1,000万枚作っても2,000万枚作っても同じものができるかなどを1つの大きなポイントにおいて取り組んでいます。

もう1つは、どのような光学設計ではどう見えるのかいったシミュレーションを研究、開発しています。また、コンタクトレンズの中にICチップを入れてデバイス化することは、いわゆる生体モニターの使い方になります。我々はチップ自体を作るわけではないのですが、「どれがモニタリングするチップで、どれを中に挿入して採取するか、それが人間の体に適合するか」といったことを、きちんとテレメトリーとして測らなければなりません。

我々が今テーマとして考えているのは、「近視の進行の抑制に何か役立つものがないか」「生体をモニターして何かコンタクトレンズの役に立つことはないか」「何か薬と融合できることはないか」といったニッチなことです。その土台としては、マスの製品として新しい商品を提供したり、新しい光学デザインを提供したりすることが研究開発になっています。

坂本:確かに、僕らが直接目に触れるものですので、すごく気を付けられているのだと思います。

質疑応答:収益の回復のタイミングの目処について

坂本:次に収益についてお伺いします。先ほど「数量ベースでは来年の1月くらいには戻る」というお話をいただいたのですが、収益の回復のタイミングはいつごろなのでしょうか? この回復のタイミングで投資したいと思っている方もいると思いますので、そのイメージなどを教えてください。

浦壁:非常に不確実性の高い期のため、なんとも言えないところがあるとは思いますが、新型コロナウイルスの第3波がそこそこで収まるという前提で、1月、2月には去年の需要ベースに戻ると考えると、第2四半期よりも第3四半期、第3四半期よりも第4四半期といったかたちでベースの収益としては次々と上がっていくと思います。

一方で、新型コロナウイルスの関係でいろいろな商品の販売の構成も変わってきました。在庫については今期に見直しを行い、バランスシートのクリーンアップをしなければいけない部分もあるかと思います。

もう1つは、ブレグジットがもたついたことがあり、ブレグジットを前提とした中で欧州に在庫を積み上げているということがあります。これについては、最終的にどのような合意がされるかによって、我々も苦しい中で整理する部分もあるかと思います。

我々では決められないことが起きるため、なんとも言えない部分ではあるのですが、そのようなことを睨みながら、どちらかというと今期はいろいろなことを我慢しながら足元をしっかり固める1年かと思っています。

来年の第1四半期以降は新型コロナウイルスが一種の定常状態になり、その中でどうするかという観点になりますので、比較的不確実性は低くなるのかとは思います。

質疑応答:バランスシートの安全性について

坂本:バランスシートの安全性については、どのあたりを見ておいたらよいでしょうか? 御社の考えもあると思うのですが、この部分はどちらかというと監査法人との絡みもあるかもしれません。そのあたりの安全性も含めて教えてください。

浦壁:当社のバランスシートをご覧いただくと、圧倒的に固定資産が多くなっています。これは製造にまつわる機械をはじめとするいろいろな設備になると思っています。このあたりについてはなにかリスクにつながるものはあまりないとは思います。

また、先ほどお伝えしたように、いろいろな国に合うような認証の下で在庫を用意しています。制度変更あるいはイギリスがヨーロッパから出ていった時にリンクがなくなってしまうといったことになると、「どの認証をどう使うか?」ということにもなるため、若干の影響はありますが、それほどびっくりするようなものがあるとは思っていません。

我々の事業はどうしても総資産のようになるということと、投資先行型の産業ということ、ここ5年間くらいは借入金で調達するコストが非常に低かったこともあり、借入金で調達しながら優先して設備投資してきました。

今期は、物流倉庫と資材倉庫を新しくして生産設備に向ける面積を拡大することに取り組んでいますので、これが一段落すると、投資としては凪の期間になると思いますので、バランスシートとしては回収しながらステップアップしてきていると思います。

また、この5月、6月にいろいろなことが起きることを想定し、金融機関から43億円ほどの調達しています。バランスシートにも載っていますので、少し重いのだと思いますが、逆に言えば流動性を積み上げることで安全性を高めたと思っています。場合によってそのベンチマークは変わってくるのかとは思います。

そのような意味で言うと、今期は負債比率が上がるかもしれませんが、流動性を確保するのは、企業として何かあった時に備えるということかと思います。長い目で見ると、償却の進行とともにバランスシートをスリム化しながらアセットの回転率を上げていくということです。収益性は資本に関わると同時に、総アセットに対する収益力も大事かと思います。

また、EBITDAですが、マルチプルとしてどれくらいの借入の比率があるか、あるいは設備投資の償却の割合がどれくらいあるかということを見ながら、バランスシートとしてのマネジメントを考えようと思っています。

質疑応答:拠点を1ヶ所に集約するリスクついて

坂本:次に、会場から「中国でも展開するというお話がありましたが、国内の鴻巣工場に集約されている部分もあり、そのあたりのBCPについて教えてください」という質問が来ています。

浦壁:1ヶ所に集約するリスクや分散するメリットもあるかとは思うのですが、いろいろなことを考えると、日本国内においては1ヶ所に集約したほうがメリットは高いと思います。

坂本:効率はよいですよね。

浦壁:おっしゃるとおりです。生産棟自体はそれぞれ独立したかたちになっていますので、仮に何かで1つが駄目になった場合でも他の棟で生産できるかたちになっていますし、そのような面での効率と遮断性は考えています。

安全性や効率性、リードタイムの短さの点で、基本的には国内で作ることができるものは国内で作ったほうがよいと思っていますので、さらにもう少し集約することも考えています。

また、資材などが止まることもあるかと思いますが、資材やアルコールなどの材料関係は、基本的には常に生産の3ヵ月分を保有するかたちにしています。サプライチェーンに何かあっても代替するものを補充するかたちになるかと思います。

実際、東北の震災の時にも厚生労働省に柔軟に対応していただきました。そのような面では、何かあった場合についてのBCPにおける一定の備えはあるかと思います。