コンプライアンス最上位

宮田浩美氏:スズケンの宮田でございます。日頃のご指導ご鞭撻に心より感謝申し上げます。はじめに、当社は10月13日に、東京地方検察庁および公正取引委員会による捜索を受けました。昨年11月に、独立行政法人 地域医療機能推進機構、JCHOの入札に関して、独占禁止法違反の疑いがあるとして公正取引委員会から立ち入り検査を受けた案件に基づくものです。

現在も調査中であり、当社としても全面的に捜査に協力しているところですので、詳細については差し控えさせていただきますが、多くの関係者のみなさまにご心配をおかけしましたこと、この場をお借りし深くお詫び申し上げます。

このような事態を二度と起こさないためにも、今年4月より、新しい組織体制をスタートさせ、同時に、役員および社員の意識改革に向けた取り組みを行っています。具体的には、従来のリスクマネジメント監査室が担っていた包括的な牽制機能をより強化するため、コンプライアンス部と内部監査室に分離し、公正かつ独立の立場で牽制を効かせる組織体制とすることで、ガバナンス体制の一層の強化を図ります。

そして、コンプライアンスに関する教育や啓発活動などの施策を展開していくことで、社員、役員一人ひとりにコンプライアンス最上位の意識を定着させ、早期にみなさまの信頼回復に努めてまいります。

1-1.連結

それでは、2021年3月期第2四半期決算概況についてご説明します。昨日発表した2021年3月期第2四半期の連結の決算状況は、新型コロナウイルス感染症拡大の影響もあり、ご覧のとおり減収、大幅減益という大変厳しい結果になりました。セグメントごとにその要因についてご説明します。

1-2.医薬品卸売事業

はじめに、医薬品卸売事業です。2021年3月期第2四半期の医療用医薬品市場は、抗悪性腫瘍剤の市場拡大や、スペシャリティ医薬品などの新薬が寄与したものの、薬価改定および後発医薬品の使用促進、新型コロナウイルス感染症拡大に伴う受診抑制の影響などにより、マイナス成長であったものと推測しています。売上高は、スペシャリティ医薬品をはじめとする新薬の販売増加があったものの、市場縮小の影響などにより減収となっています。

市場の伸びと当社の売上高の伸びについては、薬価ベースのIQVIAデータでは、市場の伸びがマイナス3.5パーセントとなっていますが、消費税増税分を補正すると、マイナス5.2パーセントになると思われます。同じように当社グループの増加率を補正すると、売上高増加率はマイナス6パーセントとなるため、市場を0.8ポイント下回っているものと推測しています。

営業利益は、販管費の抑制に努めたものの、減収の影響やメーカーの仕切価水準の値上げに加え、新型コロナウイルスの影響でお得意さまからの価格引き下げ要求が強まったこと、さらには卸間の競争激化の影響など、これまで経験のなかった厳しい価格交渉となり、営業損失となりました。なお、9月末現在の妥結状況は金額ベースで91.5%となっています。

1-3.医薬品製造事業

次に、医薬品製造事業です。売上高は、「メトアナ配合錠」の早期売上最大化に向けて取り組むとともに「スイニー錠」や「ウリアデック錠」などを中心に、ウェブを活用した販売促進に努めたものの、新型コロナウイルス感染症拡大に伴う受診抑制の影響による検査数の減少や、薬価改定、「セイブル錠」の特許切れに伴う後発医薬品の影響などにより減収となっています。営業利益は、販管費の抑制に努めたものの、減収の影響により微減益となりました。

TSファーマの取組みおよびパイプラインの状況

なお、東邦ホールディングスと合弁で設立したTSファーマにおいて、今年6月に、5成分13品目の後発医薬品を新たに発売しました。

また、パイプラインの状況として、二次性副甲状腺機能亢進症治療薬「SK-1403」については、今年8月に厚生労働省に製造販売承認の申請をしています。国内第3相臨床試験の成績についても、10月23日に米国腎臓学会の腎臓週間2020において発表し、順調に進捗していますので、早い段階で上市できるよう努めます。

1-4.保険薬局事業

次に、保険薬局事業です。売上高は、調剤報酬改定や薬価改定、新型コロナウイルス感染症拡大に伴う受診抑制による処方箋受付枚数の減少の影響などにより、減収となっています。営業利益は、不採算店舗の閉局や販管費の抑制に努めたものの、減収の影響により減益となりました。

なお、店舗数は、2020年9月末時点で597店舗となっており、新規出店が2店舗、M&Aが1店舗、閉局が19店舗と、2020年3月末に比べ16店舗の減少です。これら不採算店舗の減少に伴う利益改善の効果は、下期以降に出てくるものと考えています。

1-5.医療関連サービス等事業

次に、医療関連サービス等事業です。売上高は、主にメーカー支援サービス事業の流通受託が増加したことにより、増収となっています。営業利益は、メーカー支援サービス事業における増収効果や、介護事業の利用者の増加などにより増益となりました。

なお、メーカー支援サービス事業は、メーカー物流が3月末と比較して4社増加し、2020年9月末時点で42社、希少疾病薬流通は3社6品目増加し、23社39品目を受託しています。以上が、2021年3月期第2四半期の決算概況となります。

2-1.連結

続いて、2021年3月期通期業績予想についてご説明します。新型コロナウイルスの影響が不透明なため、業績予想は未定としていましたが、先ほどご説明した上期の実績を踏まえ、入手可能な情報に基づき策定しました。

ご覧のとおり、連結の通期業績予想については、減収、大幅減益を予想しています。なお、新型コロナウイルスの状況や公正取引委員会などの調査の行方によっては、業績予想に影響が及ぶことも想定されますので、適時開示の必要性が生じた場合には、速やかに開示します。

2-2.医薬品卸売事業

それでは、セグメント別にご説明します。まず医薬品卸売事業です。下期の医療用医薬品市場について、販売価ベースのクレコンデータでは、現時点で市場の伸びはフラットとしていますが、新型コロナウイルスの影響などが含まれていないため、当社としては、新型コロナウイルスの影響で1.5ポイント程度縮小するのではないかと想定しています。

下期においては、お得意さまごとのニーズをしっかり把握し、市場と同程度の伸びを確保する取り組みを実践するものの、上期が市場を下回った影響などを総合的に勘案し、売上高は2兆383億円、4.1パーセントの減収を見込んでいます。売上総利益については、上期の状況を踏まえ通期予想を策定していますが、厳しい価格交渉になることが想定されるため、不退転の決意で価格交渉にのぞみます。

さらに「ESナビゲーション」をはじめ、メーカーの機能代行としてデジタルを活用した取り組みを積極的に行い、デジタルとMSのリアルの活動を融合した新しい機能の獲得に向けて取り組んでいきたいと考えています。なお、新旧原価差については、薬価改定が行われるか否かも不透明であるため、業績予想には含めていません。

販管費は、グループ一体となって抜本的な構造改革に向けてさらなるコスト削減活動に取り組み、営業利益は10億円、96.4パーセントの減益であるものの、黒字化は確保していきたいと考えています。新型コロナウイルスの影響で引き続きお得意さまも厳しい状況ですが、適正な利益の確保に努めます。

2-3.医薬品製造事業

次に、医薬品製造事業です。「メトアナ配合錠」などの早期の売上最大化や、12月にTSファームにより発売予定の後発医薬品2品目の取り組みに注力していきますが、新型コロナウイルス感染症拡大に伴う受診抑制による影響も引き続き想定されることから、売上高は436億円、2.4パーセントの減収を見込んでいます。

また、引き続き販管費の抑制に努めますが、将来の成長に向けた研究開発費の計上を想定しているため、営業利益は4億2,000万円、64.4パーセントの減益を見込んでいます。

2-4.保険薬局事業

次に、保険薬局事業です。引き続き新型コロナウイルス感染症拡大に伴う受診抑制による処方箋受付枚数の減少の影響などを鑑み、売上高は900億円、6.7パーセントの減収を見込んでいます。

利益については、引き続き受診抑制による処方箋受付枚数減少の影響は想定されるものの、上期の不採算店舗の閉局に伴う利益改善の効果に加え、人員適正化などによる人件費の削減に取り組み、営業利益は10億円、42.4パーセントの減益ではあるものの、黒字化を見込んでいます。

引き続き不採算店舗の閉局に加え、新規出店やM&Aによる事業拡大も推進し、スクラップアンドビルドによる経営の効率化と規模拡大の両立を図ります。

2-5.医療関連サービス等事業

次に、医療関連サービス等事業です。スペシャリティ医薬品流通受託量の増加により、売上高は1,330億円、32.1パーセントの増収を見込んでいます。また、利益については、スペシャリティ医薬品流通受託量の増加の影響に加え、介護事業における稼働率の向上、さらに販管費の削減にも努めることから、営業利益は20億円、46.6パーセントの増益を見込んでいます。

約15年前から始めたメーカー物流事業を通じて、当社が推進してきたスペシャリティ医薬品の流通モデルが、連結の業績に大きく貢献するまで成長してきました。引き続き、スペシャリティ医薬品を中心としたメーカー支援サービス事業の受託数の増加を目指します。

2-6.株主還元

株主還元についてご説明します。今期の配当においては、中間36円、期末36円、トータルで年間配当72円を予想しています。引き続き安定的な配当の継続を基本に、株主還元の充実を図ります。

なお、コーポレートガバナンスコードの改訂に対応して、政策保有株式の保有も縮減の方向で取り組みを進めていますが、その際に自己株式の取得も併せて検討していきたいと考えています。以上が2021年3月期の通期業績予想となります。

中期成長戦略の概要

さて、ここからは中期成長戦略の取り組み状況についてご説明します。先ほど通期の業績予想をご説明しましたが、想定した以上に大変厳しい事業環境にあり、中期成長戦略にあるさまざまな改革をより一層加速させ、前倒しで実行していく必要があると考えています。

元の状態に戻ることは今後ないということを認識する必要があると考えています。よって、1つに、仕事のあり方や業務の見直しなど、コスト構造改革を一気に加速させる必要性があり、2つには、取引から取り組みへと、デジタルを活用した新たな機能による収益モデルの構築が待ったなしと考え、その準備を加速させていきます。

その中で、デジタルを活用した取り組みとして、先日リリースしたサスメドへの追加出資と、提携企業各社とのデジタル治験プラットフォームの構築に向けた取り組みについてお話しします。

サスメドへの追加出資

サスメドについては、5月に資本業務提携を発表していますが、同社の臨床研究、治験管理システムと、当社が展開する「キュービックスCT」との相互連携による、製薬メーカーの研究開発領域、主に治験部門への共同提案や、AIを活用したキュービックスデータ分析の自動化などの取り組みを順次開始しており、より連携を強固にしたいと考え、追加出資を行っています。

サスメドのブロックチェーン技術やAI自動解析技術は、当社およびこれまで協業してきた企業のデータ管理、分析において、今後より重要な役割を果たすものと考えています。

提携企業各社とのデジタル治験プラットフォームの構築に向けた取組み

特に治験領域に関しては、同じ10月27日に発表した提携企業各社とのデジタル治験プラットフォームの構築に向けた取り組みにおいて、当社の「キュービックスCT」や治験薬物流インフラと、サスメドが有するデータの信頼性担保を可能とするブロックチェーン技術を組み合わせることで、新たなサービス提供の検討を進めていきます。

また、より安全に治験薬を管理し、そのトレーサビリティを確保するため、EPSホールディングスの子会社で国内最大のSMO企業であるEP綜合と、当社の「キュービックスCT」の臨床現場への普及やサポート体制の強化を進めていきます。

そして、昨年5月にパナソニックと共同で開発した医薬品保冷ボックス「VIXETELL™」は、スペシャリティ医薬品専用保冷ボックスとして展開してきましたが、現在では、メーカーの研究開発部門にご評価いただくまでに品質を認めていただけるようになりました。

このように、提携各社の機能や取り組みと当社の事業基盤をつなげることで、治験におけるコスト効率化やデータの信頼性担保の両立性、被験者の負担軽減といった、治験に関わるステークホルダーの課題解決にもつながるデジタル治験プラットフォームの構築を行っていきます。

今後もこのように、協業企業各社の良いところをつなぎ、リアルとデジタルの融合によるわれわれにしかできないオンリーワンのビジネスモデル構築を目指していきます。

医療と健康になくてはならない存在へ

最後に、スズケングループは、事業を通じてさまざまな社会課題を解決できる「医療と健康になくてはならない存在」の実現に向け、協業するパートナーとともに、さらなる企業価値向上を目指してまいりますので、今後とも一層のご支援を賜りますようお願い申し上げます。

以上で私からの説明を終わらせていただきます。ありがとうございました。