第14回 個人投資家向けIRセミナー

徳重敦之氏(以下、徳重):東京エレクトロンデバイスの社長の徳重でございます。休日にもかかわらず、当社IRセミナーにご参加いただきまして誠にありがとうございます。1時間足らずではございますが、可能な限り当社の現状、将来についてご説明させていただきたいと思います。よろしくお願い申し上げます。

本日の内容ですが、まず会社概要、それから将来の成長への取り組みとして、本年5月にリリースした次期中期経営計画「VISION2025」に関してご説明します。その後、質疑応答を少しはさみ、業績見通しおよび第1四半期の決算、そして配当政策に関してお伝えした後、ご質問をお受けしたいと考えています。

会社概要

まず会社概要です。設立は1986年3月3日、本社は神奈川県横浜市です。会社の規模としては、昨年度の売上高は1,353億円、連結の従業員は1,216名、拠点は国内で18拠点あり、子会社7社、関連会社3社という構成になっています。

当社のあゆみ

当社のあゆみ、沿革です。1965年に東京エレクトロンが電子部品ビジネスを開始して、その商社部門を分離、独立したのが当社になります。1998年に分離・独立して、2006年に東京エレクトロンの中で同じ商社機能だったコンピュータネットワーク事業を承継して、商社部門が1つに集まったというかたちです。

その後、東証1部に上場しました。そして、2017年に現在の東京エレクトロンデバイス長崎を子会社化し、ファーストも連結子会社化しています。設立からは35年ですが、事業歴としては55年とご理解いただければと思います。

東京エレクトロングループ

このようなご説明をするにあたり、「東京エレクトロンとの違いは何か」と聞かれることが多くあります。

東京エレクトロンは半導体や、フラットパネルディスプレイの製造装置のメーカーであり自ら販売しています。「東京エレクトロンデバイスは、東京エレクトロンが作った装置を販売しているのか?」というご質問もいただきますが、そうではありません。

また「東京エレクトロンは親会社なのか?」というご質問もいただくのですが、東京エレクトロンの出資比率が33.82パーセントで、持分法適用関連会社という位置付けになっています。展開している事業も異なります。

事業内容

事業内容についてですが、取扱製品としては、半導体分野ではTI(Texas Instruments)やIntelなどの外国製半導体、また半導体を搭載した基板の提供、またお客さまの仕様に合わせて開発を行なう設計・量産受託サービスなどを、製造業を中心としたお客さまに提供しています。特徴として、商社でありながらメーカー機能を持つことが挙げられます。

のちほど詳しくご説明しますが、これまで「メーカー機能を持つ商社」と言っていたものを、次期中計においては「商社機能を持つメーカー」としています。

また、ITシステム分野ではシリコンバレーの最先端のITインフラ製品およびセキュリティソフトウェア、IT保守・運用サービスに力を入れて、そのようなサービスを提供しています。

当社の製品が使用される分野

当社の扱う製品がどのあたりに使われているかをご説明します。一言で言うと、非常に幅広く使われています。コンピュータ、自動車、医療機器、社会インフラ、スマートフォン、家電など、身の回りのもの、あらゆる分野に当社の半導体やIT製品が入っています。

当社製品の使用例

自動車、クラウドサービス、テレワークを例として説明させていただきますが、自動車はとくに車載向け半導体に力を入れており、「ADAS」、つまり自動運転システムの開発を促進するような半導体を提供しています。最近、ams社の製品の取り扱いを始めました。専門用語では「ライダ-」というのですが、そこに強みを持つ製品を扱っています。

スライド中央ですが、みなさまもご存知の「MicrosoftAzure」というクラウドサービスの販売も行なっています。MicrosoftはコンピューティングストレージからAI、IoTまでをカバーできるクラウドサービスを持っており、このサービスを当社の産業機器分野のお客さまに販売していくことで、IoTの推進につなげていきたいと考えています。

今まで当社は、半導体を売る物販が中心でした。しかし「MicrosoftAzure」というクラウドサービスのように、いわゆる「サブスクリプション」「課金型」のところに少しずつ軸足を移していきたいと考えています。

坂本慎太郎氏(以下、坂本):最近、そうしたクラウドサービスを導入したいという企業がかなり多いと伺っていますが、やはり需要はかなりありますか?

徳重:かなり伸びています。「Azure」はいろいろな業界で使われていますが、我々はその中でも電子機器メーカーや産業機器メーカーに特化しています。我々は半導体ビジネスを展開していたため、お客さまはメーカーであり、IT企業はそこにあまりアクセスしていなかったためです。

坂本:「AWS」と「Azure」とがある中で、なぜ「Azure」なのでしょうか? 産業機械に強いからなど、理由はありますか?

徳重:Microsoftとは30年以上の付き合いがあるからです。OSを販売しているときからの付き合いで、Microsoftがクラウドサービスをはじめるときに当社も舵を切ろうということで、「当社は産業機器メーカーなどにフォーカスしていきたい」とお伝えして、それが認められたという流れです。

次にテレワークのところです。我々はセキュリティ商品など、いろいろなものを販売している立場ですが、新型コロナウイルスの問題が起きる前から、社内システムにはすべて組み込まれています。ですので、コロナ禍が起こった瞬間にすぐ対応できたのですが、そのような知見を生かして「このようなシステムを構築するとセキュリティが担保される」というかたちで販売しています。

事業セグメント

徳重:事業セグメントは「EC」と「CN」の2つなのですが、事業としては3つあります。1つは半導体などのEC事業、そして自社ブランドを扱うPB事業、さらに今お話ししたコンピュータのセキュリティなどを扱うCN事業です。

PB事業(メーカー機能)

PB事業に関してです。もともと我々は商社から始まっており、お客さまから「このようなものが欲しい」というリクエストをいただきます。そこで世界のいたるところから探してくるわけですが、「帯に短し」と言いますか、求めるものがどうしてもない場合は「自分で作ろう」ということで、実は35年前ぐらいからそのようなコンセプトで進めています。

お客さまの要求に沿うためにはどういったアプローチをすればよいのかを追求した結果、今のようなかたちになり、設計から開発、量産まで全部対応できるようになりました。また、お客さまが欲しい商品を作るために、3年前に東京エレクトロンデバイス長崎を連結子会社にしました。

さらに、「このようなものを作って欲しい」というお客さまの要望に応えるだけではなく、「我々が目指す商品はこういったものだ」というものを作るために、画像処理に着目して、ファーストという会社も連結子会社化しています。

八木:スライドに「少量多品種への対応が可能」と記載がありますが、取引先からの要望は多岐にわたるものなのでしょうか?

徳重:かなり多岐にわたります。

徳重:中国で展開しているEMSは、決まったものをものすごくたくさん作ります。安い基板をたくさん作るビジネスモデルがある中で、我々は50センチの大型基板なども含めて、少しずつ、いろいろ作っています。しかし、それはものすごく難しいのです。

では、なぜそのようなことを行なっているかですが、我々のお客さまには産業機器メーカーが多く、そうしたメーカーはすごくたくさん作るわけではありません。ですので、「大きな基板に対応することができないか」といったカスタマーアドバイスをいかに生かすかをベースにしています。

八木:対応できる技術をお持ちだということですね。

徳重:そうですね。技術もありますし、ノウハウもあります。いろいろなものをいかにたくさん作るかというノウハウを積んできている会社です。

想定する事業環境

中期経営計画についてです。将来の成長に向けた取り組みとして、「中期経営計画 VISION2025」についてご説明します。現行は「VISION2020」ですが、今年度が最終年度にあたり、本年度5月に次期中計を発表しています。

2025年に世界がどうなっているかという議論があったわけですが、みなさまもご存知のとおり「Society 5.0」が到来すると考えています。

高効率スマート社会で必要とされる技術要素

高効率スマート社会でどういう技術が必要とされるのかを記載しています。こちらは国立研究開発法人産業技術総合研究所のデータも利用しているものになります。

まず、革新的なAIのハードウェアで、AI応用による自立進化型セキュリティおよびサービスインフラ、高効率なデータストレージおよびネットワークシステム、一体感のある自動運転システム、協働型ロボットシステム、計測システム、そしてマス・カスタマイゼーション対応の次世代型製造システムです。なお、マス・カスタマイゼーションは、少量多品種ということです。

それらが必要とされるということで、我々は過去からこの分野に注力していますので、その流れのまま進めていければと考えています。

当社のMISSION

MISSIONとしては、デジタルトランスフォーメーションを実現する製品およびサービスを提供し、高効率スマート社会の持続的発展に貢献します。

当社のVISION①

そのMISSIONを実現するためにどのようなVISIONを持っているのかについてです。商社機能とメーカー機能がありますが、「技術商社機能を持つメーカーへ」ということで進めていきたいと思っており、技術商社機能も進化していくと考えています。

利益の源泉としては、先ほどの「Azure」のように、データビジネスやサービスビジネスなどのストックビジネスに力を入れていきたいと考えています。

また、顧客基盤の維持、拡大が重要です。半導体ビジネスは最先端の製品のため、それを使っていただいたことによって、お客さまのカスタマーベースを維持し、世界へ拡大していきます。このように、EC事業とITの組み合わせでがんばっていきたいと思っています。

坂本:「Society 4.0」から「Society 5.0」になったときの活躍の場はかなり広がるイメージがあるということですね。扱うチップの量も当然増えますし、それ以外の部分もあると思うのですが、このあたりがかなり期待できるところですよね。

徳重:おっしゃるとおりです。

坂本:将来への布石を含めて、この続きをお聞かせください。よろしくお願いします。

当社のVISION②

徳重:進化する部分に関して、例えば昨年12月にセレブラスシステムズという会社と契約して超高速のディープラーニングシステムを日本で販売する権利を持っています。スライドの左側がそれなのですが、ホテルにある冷蔵庫くらいの大きさです。

八木:そんなに大きいのですか?

徳重:スーパーコンピューターはもっと大きいですよね? それがこのサイズになっているわけです。

八木:なるほど。逆に小さいわけですね。

徳重:21.5センチメートル角の大型半導体を開発して、それをこのシステムに入れることができたため、ものすごく小さくなったわけです。

坂本:半導体でもそんなに大きいのですか?

徳重:普通は1センチメートル角くらいですよね。これを初めて見たときは私も驚きました。

坂本:これだけ大きいと、夢はもっと広がりますよね。

徳重:この処理にものすごい技術を使っています。その結果何ができるかと言うと、今までのAIのディープラーニング、深層学習のシステムでは計算に3ヶ月かかっていたものが数週間でできるようになり、また数週間かかっていたものが数時間でできるように、といったかたちで高速化できるということです。

ですので、今後は自動運転の解析などいろいろなことに展開していくわけですが、当社は1台購入しました。

坂本:ちなみに、いくらくらいするものですか?

徳重:すごく高いです。これはものすごくパフォーマンスが高いため、いろいろなスパコンでもそうしているように、時間貸しをします。能力が余っているところで、「ここは、このお客さま」「ここは、このお客さま」ということができるため、いわゆるデータビジネスやサービスビジネスなどのストックビジネスに活用できます。

今まで、我々は保守やセキュリティオペレーションセンターを展開していましたが、それに加えてこうしたことも行なっていきます。

当社のVISION③

モノづくりのシステムメーカーの部分に関してです。先ほどお伝えしたとおりファーストを子会社化して作ってきたものとそうでないものとがありますが、マクロ検査装置は非常に薄いものを検査します。化合物半導体ウェハのような非常に薄いものを検査するのですが、それはものすごく難しいわけです。しかし、マクロ光学技術を使って非常に速く検査できます。

もう1つはロボットですが、これはファーストの画像処理技術を使っています。通常のロボットは決まったものをつかむことはできるのですが、連続して流れてくるいろいろな種類のものをつかむのは非常に難しかったわけです。それに対応できるように「目」を入れてつかめるようにするといったシステムになります。

坂本:だんだん人間に近づいていきますね。

徳重:人間に近づけるためには、やはり「目」が重要だということです。

当社のVISION④

先ほどもお話ししたとおり、我々はお客さまの設計あるいは量産を受託して行なっています。我々は非常に難しい世界のものに取り組んでおり、医療や医薬系のお客さまも非常に多いです。

我々が設計から入らせてもらい、全部開発してお納めするという方向に持っていきたいということで進めています。

VISION2025 財務モデル

財務モデルについてです。2025年3月期の売上高は2,000億円のプラスマイナス10パーセント、経常利益率は5パーセント超、ROEも15パーセント超を目指していきたいと思います。

新型コロナウイルスの影響

中期経営計画における新型コロナウイルスの影響です。「Withコロナ」「Postコロナ」ということで、我々としては「自動化」「リモート」「非接触」が技術的に求められるポイントではないかと考えています。それはもともと「Sociery 5.0」の必要要件と一致するため、現在考えている中期経営計画においてはプラスの部分が多いと思っています。

坂本:チャンスが広がるわけですね。

徳重:そのように考えています。

質疑応答:CN事業の利益率が高い理由や成長ポイントについて

坂本:質問を挟ませていただきたいと思います。事業が「EC」「PB」「CN」と3つに分かれていますが、CN事業は人の手が入る部分もあるため利益率が高いと思っています。その理由と成長ポイント、力を入れていることを教えていただきたいと思います。

徳重:技術的な意味も非常に高いと思っており、先ほどお伝えしたような製品を販売することを心がけています。つまり、お客さまが独自で動かすことが非常に困難な製品を中心として、そこに当社独自の高品質な技術サービスを有償で付加します。

そのレベルとしては、24時間365日の保守メンテナンスサービスやセキュリティ監視サービスなどに相当な人数をかけており、そこが有償であるところが営業のドライバーだと考えています。

坂本:技術が高ければ儲かるという考えでしょうか。

徳重:おっしゃるとおりです。

質疑応答:EC事業における米中貿易摩擦の影響について

坂本:今日の個人投資家からの質問でもセグメントのお話が多いです。企業の今後の成長を見るにあたり、やはり成長して利益率の高いセグメントがどうなるのかを注視しています。御社で売上が大きいのはEC事業ですが、八木さんも、EC事業のところで何か質問があればお願いします。

八木:EC事業に関して、世界情勢なども関係してくると思うのですが、米中貿易摩擦の影響などはありますか?

徳重:米中関係は中計にも大きく関わります。この中計の期間中でも、米中貿易摩擦はずっと続くでしょう。政権が替わったとしても、中国に対するアメリカの姿勢は変わらないと思っています。しかし、もともと中計を作った時からそれをベースに考えているため、今後の状況で中計の内容が大きく変わるとは考えていません。

八木:中計の中ではそのような状況は織り込み済みということですね。

坂本:米中貿易摩擦で日本が恩恵を受けることもありますよね。例えば、関税がかかるとなると迂回といったこともあると思うのですが、そのようなところでの影響はありますか?

徳重:あまりないですが、当然、中国で作っていたものが減るということはあると思います。そこは、ベトナムなどのアジアに転換します。販売網もありますので、こっちで取れなければこっちで取ろうといったことが可能です。

アメリカに戻るとしたら、アメリカでも回収すればよいわけですので、長期的な部分でインパクトはないのですが、中国はパイが大きいため、その部分でのインパクトはベースとしてあるとご理解いただければと思います。

質疑応答:CN事業の拡大について

坂本:中計に関して、CN事業は伸びる予定になっているのですが、ここに注力すれば利益がもっと上がるのではないかと思っています。それは難しいものでしょうか?

先ほどのお話にあったように、技術力が高く、時間も人員もかかるところではありますが、パイはもっとあるのか、またあえてそこは増やさないのかということも含めて教えてください。

徳重:例えば、「量をこれだけ増やす」ということだけを考えれば策はあると思います。しかし、高い利益率のまま量を増やしていくことになると、やり方が異なると思っています。

我々としても、CN事業の比率をもっと増やしていきたいという気持ちもあるのですが、利益率も確保しながら増やしていくとなると、このくらいのスピードになると考えています。

質疑応答:次期中計での成長イメージについて

坂本:また中計のところで、2025年3月期の売上高が2,000億円、経常利益率が5パーセント超だとすると、100億円くらいの利益が出ると思います。そこで、増収のイメージや成長のイメージ、そして中計を経た時に、御社はどういう会社になっていて、どういうところに注力していきたいかというビジョンも教えてください。

徳重:売上高が2,000億円、利益が100億円というところで、実は現状の中計からそこを狙っているところがありました。しかし、そこまで達しませんでした。伸びとしては、EC事業もCN事業も、やはりこのような(なだらかな)成長になります。またメーカー機能に関しては、現在開発フェーズになりますので、伸び方としてはこのように(今は低く、のちに大きな伸びに)なります。

とくに注力したいのはCN事業とPB事業ですが、その中でも利益の成長性ということで、我々は「増益増収」と言っています。

坂本:「増収増益」ではなく、「増益増収」なのですね。

徳重:増益率が増収率を超えて、持続的に成長できるようなモデルということです。当社は、ちょうど事業モデルの変革のタイミングであり、今後はベースができて増収増益になるかもしれないのですが、今は事業変革の時のため、そのような考え方で取り組んでいます。

坂本:確かに、利益が増えれば株価も上がりますからね。投資家としてはウェルカムです。

質疑応答:新型コロナウイルスの影響について

八木:あらためて、身近な問題ということで質問したいのですが、コロナ禍でテレワークが進む中、御社にはどのような影響がありましたか?

徳重:例えば、緊急事態宣言が出た時は在宅比率が85パーセントになったのですが、それでも問題は起きませんでした。現在は60パーセントくらいですが、今後もこの方法で進めていけるのかは検証中です。リモートでの教育制度やオフィスのあり方などを検討していきたいということで、試行錯誤の段階です。

八木:事業環境として変わってきた面はありますか?

徳重:私の感覚として、「コロナプラス」と思っているところがあります。

さきほどお話しした「自動化」「リモート」「非接触」のところですが、「自動化」は、当社のPB事業でロボットによる自動化が実現できます。「リモート」は、IT分野でのセキュリティになります。「非接触」は、半導体でいろいろなアプローチを進めています。そのようなところを考えると、コロナ禍でもプラスの部分があったと考えています。

坂本:続いて、業績見通しの説明をお願いします。

2021年3月期 業績見込み前提条件(2020年4月30日発表)①

徳重:ここはみなさまもご興味があるところだと思いますので、詳しく説明していきます。4月30日の決算発表時点で、当社がどのようなコメントを発表したのかについて記載しています。

全社としては、新型コロナウイルス感染拡大によって、上半期は経済減速の影響が出たものの、感染はピークアウトののち、下期からは回復する。

EC事業についてですが、米中問題に起因する中国減速は継続する。新規商権の取り込みによる増収が、コロナ禍での自動車の減速、またブロードコムとの契約解消による減収影響をカバーする。この「顧客商権の取り込み」については、別途ご説明します。

2021年3月期 業績見込み前提条件(2020年4月30日発表)②

PB事業についてですが、5Gサービスが本格化しているため、半導体製造装置への投資を再開する。

CN事業は、先ほどお伝えしたとおりです。テレワークでセキュリティ製品の導入が加速し、データの通信量もすごく増えますので、そのような部分の投資が確認されており、プラスの影響がある。それらをベースにしています。

2021年3月期 業績見込み

通期予想では、売上高が1,380億円で、そのうちEC事業が1,156億円、CN事業が224億円です。経常利益は41億円で、前年同期比で約15パーセント増加です。また当期純利益も18パーセント増加という見込みで、現状では数値自体は変えていません。

2021年3月期 第1四半期 業績概要(2020年7月27日発表)

その中で第1四半期の業績は、売上高が約41億円減少の284億5,800万円となりました。EC事業では産業機器は堅調ですが、中国での新型コロナウイルスの影響も含んでいます。CN事業は、代理店契約解消等の影響もあったのですが、かなり健闘しています。これが、第1四半期の業績概要となります。

第1四半期が終わりましたが、上半期の業績予想に変更はない状況で、通期の予想も変更していません。

2021年3月期 今後の当社事業環境

2021年3月期はどのような変化があり、どのような取り組みをしているのかについてです。新型コロナウイルスについてはいろいろなご意見が出ていますが、上半期では感染はピークアウトしないという考えが自然だと思っています。当社が参画する市場への直接の影響は少なく、逆に新型コロナウイルスへの対応によるプラス影響も受けると考えていますが、プラス要素は2つ、マイナス要素は1つあると思っています。

プラス要素の1つは、先ほどお話しした「コロナプラス」のところで、「自動化」「リモート」「非接触」など、DX関連の需要が増えます。もう1つが、EC事業の新規顧客商権の取り込みです。特殊な業界ではあるのですが、半導体の商社はいろいろなメーカーに対して「分業」で販売しており、例えば我々はA社に販売し、別の商社はB社に販売して、ほかの商社はC社に販売するといったことがあります。その部分の効率化ということで、「代理店の数を減らしてまとめましょう」という流れがあり、そこが当社に来たわけです。それが新規顧客商権の取り込みになります。

ですので、新型コロナウイルスで変わるわけではなく、戦略的な意味で他社が担当していたものを当社に任せるといった流れです。それは、新型コロナウイルスのマイナス影響を打ち消すくらいの規模があります。新型コロナウイルスによってどのような状況になるのかについては、このようなところを考えています。

八木:大きなプラス要素があるのですね。

徳重:一方のマイナス要素ですが、製造業の工場稼働率の低下や、半導体の需要の不透明さがあります。4月や5月は、自動車の影響がとても大きく、かなり下がりました。6月は中国の回復が早かったため上昇したのですが、中国の工場で作れるものの生産比率が戻ってきたというだけで、各企業も投資まではできていないため、工場設備などでの需要が厳しいという状況です。

産業機器関連は、なかなか難しいのではないかということでマイナス影響を予測していますが、全体を見ると、今期の業績を修正する必要性はないというのが今の状況です。

配当政策と配当予想

配当ですが、2020年3月期の1株当たりの配当金は、年間90円とさせていただきました。

坂本:非常に高い配当ですね。利回りの平均が2パーセント前後と考えると、かなり高配当です。

徳重:当社は個人の株主さまに非常に重きを置いおり、配当性向には気を配っていきたいと考えています。本年度の1株当たりの配当金額は、中間が40円、期末は68円です。配当性向40パーセントを目安に、108円と考えています。

株価推移

株価推移です。スライドは10年間の株価チャートになります。8月21日で3,125円で、先週末は下がりましたが2,923円でしたので、100株単位では現在30万円くらいで買うことができます。また、3,125円ベースですが、PERは11.61倍、PBRが1.19倍、配当利回りは3.46パーセントという状況です。

坂本:最近は非常に調子がよさそうですね。新型コロナウイルスの影響も加味しながら今期の業績予想もきちんと出しているため、安心感はあると思います。投資家は新型コロナウイルスの影響の有無も見ますので、非常にありがたいと思っています。

徳重:さきほどからお話ししているように、いろいろな要素で補完しあっているということです。

質疑応答:業界再編について

八木:それでは、質疑応答に移りたいと思います。

坂本:個人投資家は、業界再編のところをかなり聞きたいと思います。さきほどのお話のとおり、商社は分業と言いますか、代理店ごとに任せるというかたちになっていますので、それが効率化すれば、もっと利益が上がるのではないかなと思います。

実際のところ合併もあるとは思うのですが、上場企業の数だけを見てもまだまだ多いと思います。御社の新事業もそうですが、技術者を派遣することが主になっている半導体商社もありますので、「自社で独立できる」という考えもあるかもしれないのですが、もともとのボリュームディスカウントを考えたり、顧客アクセスを考えると、たくさん取り扱いができるという面も含めて、統合のようなかたちになったほうが効率化するのではないかなと思います。

ボリュームディスカウントや購買力も含めて、他社の協力もあるのでしょうか? 業界再編も含めて、もう少し深掘りして聞きたいと思います。

徳重:上場企業で半導体の商社と呼ばれる会社は30社くらいで、けっこう多いです。ただし、業界再編は進んでいると理解しており、商社同士が合併するということも多々見受けられる状況です。

当社の取り扱いはほとんどが海外系の半導体なのですが、メーカー主導により扱う数が減ってきています。1社にまとめる、あるいは2社にまとめるという動きもあり、これも業界再編だと考えています。海外半導体メーカーも5年前くらいからそうした動きがあり、ほぼ一巡したと思っています。

国内半導体のところはまだまだこれからだと思いますが、我々のビジネスも含めて、海外系半導体に関しては、事実上はそのようなプロセスで進んでいると理解しています。

質疑応答:これから強化する領域について

坂本:それでは、みなさまからいただいた質問をご紹介していきます。

八木:「技術商社機能を持つメーカーへ」という方針がすごくキャッチーということで個人投資家の方も気になっているようです。あらためて、特化する、強化する領域を教えてください。

徳重:メーカー機能の強化を考えた時に、一番大事にしたいと思っていたのが生産性の向上です。工場で働いている人員を効率化するなどが一番コスト削減につながりますので、そこに関連する製品を投入できれば利益率も上がると考えており、生産性向上に資するところを中心に考えています。

もう1つが、この青いロボットです。最近では家電リサイクル工場で使われています。リサイクル工場では、エアコンの室外機や冷蔵庫を処理しますよね。いろいろなかたちのものがあり、次々と運び込まれてきますが、劣悪な環境の中で人間が処理するしかないわけです。そこで、もっと安全に、もっと効率的にするにはどうしたらよいのかということで、ロボットを導入しています。

いろいろなかたちのものがあっても「目」が付いているため対応できるわけです。これまでは決まったかたちのものを取るものでしたが、このロボットが生産性向上の一助となりますので、こうした製品を今後も展開していきたいと考えています。

坂本:高度なプログラミング技術がなければ「目」を動かせないわけですよね。

徳重:ファーストという会社はこうしたことを35年にわたって手掛けていますので、その技術が生かされています。ハードは当社で設計しており、それらをあわせてビジネスを展開していきたいと考えています。

坂本:きっと、いろいろなメーカーから引き合いがありますよね。精度が上がるという意味では、確かに使いたくなりますよね。

徳重:人間が行なっていることを代替できる部分が、引き合いの一番のベースになっていますね。

坂本:ビジネスチャンスはかなりありそうですね。その他の質問でも新型コロナウイルス関連が目立っていますが、「非接触」の部分など、どちらかと言うとプラスに働くというお話をいただきましたね。

八木:これから進んでいくと考えて手を打っていたところが、新型コロナウイルスによって一気に進んだ印象ですよね。

徳重:在宅勤務についても、オリンピックをきっかけとして進むと思っていろいろと準備を進めていたのですが、それよりも大きな新型コロナウイルスという波が来ました。また、半導体は新型コロナウイルスの影響を受けるのですが、お話ししたとおり新規商権の取り込みでカバーできると思っています。

坂本:今日のお話から御社のことがすごくよくわかりました。ありがとうございました。