2017年度の総括

安達保氏:前方のスクリーンをご覧いただければと思います。今後の戦略について、ご報告申し上げます。

戦略(のご説明)に入る前に、2017年度の総括について、お伝えしたいと思っております。昨年1年間を振り返りますと、1番目に、国内教育事業は非常に好調に推移したということが、とても喜ばしいことでございます。

「進研ゼミ」の会員数が昨年下げ止まりをして、さらに今年(2018年4月)は12万人増加しております。そのほかの教育事業である学校事業・塾事業も、好調に推移いたしました。

2番目は、「グローバルこどもちゃれんじカンパニー」(の始動)ということで、新しい括りで、事業をスタートさせました。

今まで、日本の「こどもちゃれんじ」(K&Fカンパニー)と中国の「こどもちゃれんじ」(海外事業)は、違う事業体の中に属しておりました。この2つを1つの事業グループにすることで、お互いのシナジーを働かせ、さらにグローバルに展開していくということで、新しく「グローバルこどもちゃれんじカンパニー」として、今年の4月からスタートしております。

その中で、国内事業は非常に好調に推移しておりますし、昨年少し鈍化が見られた中国事業につきましても、テコ入れを実施しております。

3番目は、ベルリッツの構造改革を本格化させたということです。後ほど詳細を述べますが、組織の大幅な変革、リストラクチャリングを実施いたしました。また、事業につきましても、大きく変革するために、いろいろな手立てを打っている最中でございます。

4番目は、社内基盤の強化ということで、独立したグループ人財本部を、新しく作りました。また、世の中の大きな動きであるデジタル化に対応するために、グループデジタル本部を立ち上げております。

5番目は、選択と集中を着実に実行していくということで、コールセンタービジネスをやっておりました、子会社であるTMJを、昨年セコムに売却しております。

中期経営計画 業績目標

このように、昨年度(2017年度)の業績は順調に回復しているわけでございますが、新しい中期経営計画を策定いたしまして、(それにともない)新しい業績目標を作りました。

その内容ですが、2020年度には売上高で5,000億円、営業利益で350億円、営業利益率で7.0パーセント、ROEで10パーセント以上を目標としております。

さらに2022年度には、若干ストレッチした目標ではありますが、売上高で6,000億円、営業利益で600億円を目指してがんばっていきたいと思っております。

2018-2020年度の重点実行項目

これらの目標を実現するための、重点実行項目でございます。

とくに、この(2018-2020年度の)3年間でやらなければいけないこととして、5つのポイントを、ここでは述べさせていただきたいと思います。詳細は後ほどお話ししますので、ここではテーマだけご案内いたします。

1番目は、国内教育をさらに発展させていくことでございます。とくに、ベネッセが持っている総合力を活かして、この事業をさらに大きく成長させていきたいと思っております。

2番目は、グローバルこどもちゃれんじ事業でございます。先ほど申し上げましたように、新しい(事業体の)括りで、この事業をグローバルに拡大することを目指していきたいと思っております。

3番目は、ベルリッツの構造改革を完成させることでございます。

4番目は、介護・保育事業について、安定的な成長を引き続き実現していくことでございます。

最後の5番目は、新規領域および財務戦略ということで、M&Aを活用した第3の柱を創出していきたい(と考えております)。そのために、財務戦略が極めて重要になってくることについて、後ほどお話ししたいと思います。

国内教育 国内教育事業戦略の全体像

1番目の、国内教育でございます。

ベネッセの国内教育には、3つの大きな柱がございます。1つ目は、「進研ゼミ」でございます。2つ目は、学校の学習をサポートする学校事業。こちらのお客さまは、学校でございます。3つ目は、校外学習である塾あるいは教室事業でございます。

今、国内教育では2020年度に向けて、「教育・入試改革」という動きが非常に大きくなってきております。これを1つの機会点として、この3つの柱の事業をお互いに連携させ、「時間軸とリアリティ」をもって、この国内事業を伸ばしていきたいと思っております。

国内教育<進研ゼミ> 「進研ゼミ」4月会員数

(国内教育で)いちばん重要になってくるのは、「進研ゼミ」でございます。

「進研ゼミ」の4月会員数につきましては、先ほどご案内いたしましたように、この(2018年)4月に昨年比で12万人伸びておりまして、257万人という在籍数になり、回復を見ております。

この在籍数を、2020年度には300万人にしようということで、今、さまざまな取り組みを行っているわけでございます。

国内教育<進研ゼミ> 300万人会員達成に向けて

その(300万人会員達成に向けた)内容でございますけれども、いちばん重要なことは、まずは、お客さまに満足をしていただく商品を、ちゃんと作ることでございます。

顧客満足度を高めて(高い)継続率を維持していくことが、いちばんの基本だと考えております。その上で、新しいお客さまに入っていただく。このようにして、300万人の在籍(会員数)を実現したいと思っております。その鍵になってまいりますのは、次の3点でございます。

1点目は、教育・入試改革に向けた、商品・サービスのリニューアル(の推進)でございます。とくに2020年度に向けて、英語教育や、あるいは思考力・判断力・コミュニケーション能力といったものを備えた新しい人材の教育が、非常に重要になってきております。このような視点で、教材の質を高めていく。商品・サービスを新しくしていくことが、非常に重要だと思っております。

2点目は、マーケティングの視点でございます。今の世の中には、スマホを使った新しいコミュニケーションのスタイルが、広まってきているわけでございます。

このようなデジタルマーケティングという新しいマーケティングの手法を開発して、今までベネッセが得意としておりました、DMのマーケティングと融合させることによって、新しいダイレクトマーケティングを実際に行い、新規入会者数を拡大していこうと思っています。

一方で、コスト構造改革も重要でございます。「進研ゼミ」の事業というのは、固定費が非常に高い事業でございます。これを削減して、その削減したコストを成長投資に回していくことで、この300万人の会員を達成していこうというプランを、立てているわけでございます。

国内教育<学校事業> 学校事業のさらなる成長

それ(「進研ゼミ」)以外の国内教育事業の1つの柱として、学校事業がございます。

ここでは、学校事業の中で、とくに最近非常に注目されております、「GTEC」についてお話しいたします。

「GTEC」と言いますのは、スコア型の英語4技能検定でございます。2020年度に始まる大学入試共通テストの、4技能民間検定試験の1つに、採用が決定されております。

今の英語教育は、従来の「読む」「書く」「聞く」に「話す」をプラスした、4つの技能を高めていくことが、非常に重要になってきているわけでございます。

「GTEC」は、この4技能を検定する試験として、今非常に注目されております。中高生対象のスコア型英語検定として、受検者数は、現在No.1(*1)でございます。(2017年度の)年間受検校は約1,850校(*2)で、年間延べ受検者数は約102万人(*3)を超えてございます。

今後は2020年に向けて、大学入試に4技能試験が取り入れられます。それに向けて、高校でも4技能試験を実施することになってきますと、この「GTEC」の注目度は、ますます高まってくると考えております。

*1 2017年度実績/2017年度において大学入試英語成績提供システム参加要件を充足している検定に限る *2 全高校・中高一貫校約5,000校中/2017年度実績/3技能受検校を含む *3 2017年度中学生・高校生対象GTEC(3技能受検を含む)受検者数

グローバルこどもちゃれんじ 「こどもちゃれんじ」のグローバル展開

次に、「グローバルこどもちゃれんじカンパニー」について、お話をいたします。

先ほど申し上げましたように、日本・中国でバラバラになっていた事業を、1つの括りにいたしました。

さらに、日本・中国以外、とくにASEAN諸国でも「こどもちゃれんじ」事業をスタートさせようということで、グローバルスタンダード商品を開発しております。

「グローバルスタンダード商品」というのは、(最初から)それぞれの国で開発するわけではなくて、まず、各国共通で使える教材を作る。その上で、それを各国の文化・生活習慣・言語に直していくことによって、できるだけコストを最小限に抑えながら、「こどもちゃれんじ」事業を拡大するために、我々が開発した商品でございます。これによって、とくにASEAN諸国で、展開地域を拡大していきたいと思っております。

(3ヶ年の戦略としましては)日本の「こどもちゃれんじ」の再成長、中国の「こどもちゃれんじ」の拡大、そしてASEANでの展開ということで、全部を合わせまして、2020年には250万人の(4月)会員数を目指して、「こどもちゃれんじ」を拡大させていきたいと思っております。

グローバルこどもちゃれんじ<日本> 日本の「こどもちゃれんじ」の再成長

日本の「こどもちゃれんじ」について、少しお話をいたします。

先ほど(のご説明で)も出てまいりましたが、「こどもちゃれんじ」の2018年度、今年の4月会員数は79万人で、昨年比で5万人増えております。

「こどもちゃれんじ」がスタートして、今年で30周年でございますけれども、この30周年の節目に、V字回復を実現できたと考えております。

この理由でございますけれども、単に「こどもちゃれんじ」の講座だけではなくて、「こどもちゃれんじ」に出てくる(みなさま)ご存じの「しまじろう」というキャラクターを、さまざまなところでお客さまに見ていただく、触れていただくと。

例えば、コンサート・映画・イベント等でお客さまとの接点を拡大することによって、「しまじろう」がより身近な存在になり、それによって、講座にも大きくプラスの影響が出てきたということでございます。

また、商品につきましてもリニューアルをいたしまして、これが大変に成功しているわけでございます。

グローバルこどもちゃれんじ<中国> 中国「こどもちゃれんじ」事業の現状と今後の施策

一方で、中国(の「こどもちゃれんじ」事業)でございます。

中国につきましては、昨年、成長に若干の鈍化が見られました。その理由でございますけれども、とくに営業拠点を拡大するかたちで、今までこの事業を拡大してきたわけでございますが、一方で、商品のリニューアルという点においては、必ずしも十分でなかったということがございました。

今年(2018年)の3月には、まず手始めに13~24ヶ月向けの講座について、商品リニューアルを実施いたしました。その結果、この講座につきましては、対前年比で42パーセント増えていると(いうことです)。

やはり、お客さまに合う商品を新しく作っていけば、中国でもさらに大きな成長が見込めるということが、はっきりしてまいりました。

今後は順次、ほかのラインでも商品開発をして、中国の成長をもう一度高いレベルで実現していきたいと思っております。

ベルリッツ 事業の進捗

次に、ベルリッツでございます。

ベルリッツにつきましては、先ほど(株主総会前半の)ビデオでお話をしましたように、今年(2017年度)は大きな赤字を記録しております。

根本的に事業再生をするために、昨年の8月でございますけれども、外部より新しいCEO(カーティス・ユーライン氏)を招聘いたしました。また、そのCEOを中心に、鍵となる経営チームメンバーを大幅に入れ替えました。本当に事業再生を実現できる、経営チームメンバーになったと考えております。

このチームメンバーを中心に、現在、徹底したコスト削減を実施しております。また、商品や業務プロセスについても、変革を実施しております。

これらによって、2020年度には黒字化、2022年度には十分な売上・利益を確保できる状態に、持っていこうと考えております。

ベルリッツ ベルリッツの構造改革

(ベルリッツの)コスト構造改革ならびに商品・業務プロセス変革の内容でございます。

コスト構造改革につきましては、もうすでに今年(2018年)の3月に、北米・米国本社を中心に、人員削減を行っております。

また、先ほど(株主総会前半にご覧いただいた)ビデオで、サウジアラビアからの留学生が非常に減って、厳しい状況になっているという(ことをお伝えした)留学支援事業でございますが、それを実施しているELSセンターを縮小しております。これによって、固定費を大幅に削減することができております。

ただ、コスト構造の改革だけでは、十分ではありません。

商品につきましては、今までは教室を中心に一対一の対面の語学トレーニングをやっていたものを、新しいテクノロジー……つまり、スマートフォンやタブレット・パソコン、あるいはオンライン・ネットといった新しい手段を通じて、お客さまに学習をしていただく。

これを、対面のプログラムとうまく組み合わせまして、新しい商品に仕立てるべく、今開発をしている最中でございます。

また、業務プロセスにつきましても、ITシステムを新しくしまして、効率的にコストを安くしてさまざまな業務が展開できるように、取り組んでいる最中でございます。これによって、商品魅力度が大幅にアップし、利益率が向上すると考えております。

ベルリッツ ベルリッツの売上・利益計画

(ベルリッツの)今後の売上・利益計画でございます。

今年(2018年度)・来年(2019年度)は、まだ赤字の状態でございます。しかしながら、先ほど申し上げたコスト削減によって、2020年度には黒字化が実現できると考えております。

また、来年の2019年度には、今ご説明した新しい商品、あるいは新しい業務プロセスがスタートいたします。それらの効果もあり、来年度以降は売上拡大が実現していくということで、2022年度には十分な利益が確保できると考えております。

介護・保育 介護事業の安定成長①

次に、介護・保育事業でございます。

介護事業でございますが、極めて安定的に成長を続けてまいりました。現在は7つのシリーズで、316ホームがございます。お客さまから、非常に高いご評価をいただいている状況でございます。

介護・保育 介護事業の安定成長②

これ(介護事業)を、引き続き安定的に拡大していくことが重要と考えておりますが、その中で鍵となることが、2つございます。

1つ目は、言わずもがなでございますけれども、サービス品質をさらに向上させていくということでございます。

ベネッセは長い介護事業の歴史の中で、さまざまな知見を蓄積してきております。それを「ベネッセメソッド」というかたちで我々が作りあげ、介護ホームで実施してきております。具体的に申し上げますと、認知症の方のケアや、あるいは入居者さまが気持ちよく過ごせる介護ホーム施設の建設・設計等でございます。

これらのノウハウを使って、新しいサービスや、さらに品質の高いサービスを実現していきたいと思っております。

介護事業において非常に重要なテーマの2つ目は、人員体制の安定化でございます。介護職員をしっかり確保することが、非常に重要な状況になってきております。

昨年度(2017年度)は、大幅な処遇改善を実施いたしました。また、採用・定着・育成のトータルマネジメントを行うことによって、ベネッセの介護職員の定着率は、非常に高いものを実現しているわけでございます。

これらの2つのポイントを重視しながら、安定的にホーム数を拡大するということで、年間10ホーム程度の新規開設を計画しております。

一方で、既存のホームにつきましては、大変に高いご評価をいただいているということもあり、今年(2018年)の3月末には、95パーセントという非常に高い入居率を実現しているわけでございます。

新規領域/財務戦略 さらなる成長にむけて

最後に、新規領域と財務戦略についてお話しします。

今までお話をいたしましたように、ベネッセの業績は、順調に回復してきております。2020年度に向けて、V字回復が見えてきております。

この中で、さらに成長投資(を行い)、そしてベネッセが20年、30年と成長し続けられるような新たな柱を創っていく必要があると、私は考えております。(こちらの資料では)「第3の柱」という言い方をしておりますが、これによって、ベネッセグループのさらなる成長を実現してまいりたいと思っております。

ただ一方で、この投資に備えてベネッセの内部留保を厚くして、財務体質を強化していくこと。これが、非常に重要なテーマになってきております。

新規領域/財務戦略 「第3の柱」の創出

財務戦略のお話に入る前に、「第3の柱」について、少し触れたいと思います。

現在、専門組織である「事業開発本部」で、M&Aの検討を進めております。2022年度に、連結売上高と営業利益で、10パーセントを超えるような新規事業の創出を目指しています。

ベネッセの「よく生きる」(bene+esse)という企業理念との合致といいますか、相性を考えまして、とくに健康・生活領域の優先度を高めて検討しております。

この「第3の柱」を創ることと同時に、「事業の選択と集中」を進めて、経営資源の戦略的な配分をしていく所存でございます。

新規領域/財務戦略 配当方針

最後に、配当方針でございます。配当方針につきましては、35パーセント以上の配当性向を目処に、継続的な利益還元に努めてまいります。

しかしながら、昨年度(2017年度)の配当としてお約束いたしておりました、(一株当たり)年間95円という配当を実施するには、残念ながらベネッセグループの利益は、現在十分ではございません。

したがいまして、(企業価値向上に向けた)将来の成長投資、あるいは大型M&Aに備えて内部留保を厚くするために、今年度(2018年度)の配当につきましては、一株当たり50円を予定させていただいております。

また、2019年度以降につきましては、配当性向35パーセント以上を目処として、配当を実施させていただく所存でございます。2019年度以降の業績の回復を考えますと、(一株当たり)50円という数字は、十分に確保できると考えているわけでございます。

ぜひ、株主のみなさまのご理解、また、将来の成長投資へのベネッセの基本的戦略につきまして、ご理解・ご支援をいただければと思っております。

2022年にベネッセが目指す姿

2022年にベネッセが目指す姿として掲げております、「人々の豊かな生活を支える社会になくてはならない会社」になることを実現するために、社員一同、一丸となってがんばっていきたいと思っておりますので、ぜひともよろしくお願い申し上げます。

以上で、今後の事業戦略のご説明を終了させていただきます。株主のみなさまにおかれましては、なお一層のご支援とご鞭撻を賜りますよう、よろしくお願い申し上げます。どうもありがとうございました。

(会場拍手)