私たちのビジョン

藪ノ賢次氏(以下、藪ノ):みなさま、おはようございます。クックビズ株式会社の藪ノ賢次と申します。2019年11月期第2四半期の決算説明会にお集まりいただきまして、誠にありがとうございます。私からご説明しますので、よろしくお願いいたします。

まず「私たちのビジョン」についてです。スライドは中期ビジョンになるのですが、当社では「『食』を人気の『職』にする」というものを掲げています。

以前は「フード産業を人気業種にする」というビジョンを掲げていましたが、2019年2月にCI(コーポレート・アイデンティティ)を全面的に刷新しまして、ビジョンを再設定しました。

従来もビジョンやミッションはあったのですが、そのような大きな括りのものだけではなく、バリューやスピリットも設定しました。スピリットは行動指針のようなもので、全従業員が同じ方向を向いて仕事ができるようにということで(定めまして)、大きなCIだけではない、日々の行動規範を決めるようなものまで再設定し、ロゴも刷新しました。

従来のビジョンやミッションと、この「『食』を人気の『職』にする」というビジョンは、言葉は変わっているのですが、ほぼ同じ意味となります。当社の存在意義としては、日本の食の業界を人気の業界にしていくというところで一貫して、ブレることなく取り組んでいきたいということで、ビジョンのみ持ち越して、今もこのビジョンを実現するためにチャレンジを続けています。

2019年上期決算概要

第2四半期の決算概況についてご説明します。第2四半期が終わりまして、主力事業を中心に堅調に推移し、四半期として過去最高の売上を達成しました。

通期予想である30億6,400万円に対して、上期実績は14億6,000万円となり、進捗率は47.7パーセントとなりました。営業利益は、2億300万円の予想に対して1億3,200万円となり、進捗率が64.9パーセントです。経常利益は、2億500万円の予想に対して1億3,200万円となり、進捗率が64.6パーセントです。当期純利益は、1億2,400万円の予想に対して8,200万円となり、進捗率が66.0パーセントとなりました。

年率で言うと、当社は近年、20パーセントぐらいずつ成長しています。もちろん下期も成長していきますので、売上の進捗としては(上期で)50パーセントを超えることはなかなかないのですが、そのような意味で(現在の進捗率である)47.7パーセントは当社としても想定に近い実績での着地となりましたので、非常に順調だと考えています。

また営業利益については、上期でここまで利益が出るのは予想以上の結果であり、ポジティブに受け止めています。

売上高推移

売上の推移についてです。当社は採用支援業務をしているわけですが、上期で言うと4月は入社時期にあたり、新卒だけではなく中途も入社が多い時期です。

下期で言いますと、9月~11月(が入社が多い時期です)。これは外食産業の特性なのですが、忘・新年会シーズンに向けて秋商戦がまた別にあり、過去の推移を見ますと、9月~10月あたりが下期のハイライトになります。

それで言いますと、第2四半期と第4四半期に売上が集中するのが当社の特徴で、その意味で第2四半期は上期の4月の需要を確実に取り込んだかたちとなり、過去最高を更新しました。これは非常によかったと考えています。

販売管理費推移

販管費については、シーズナリティはそこまでありません。人材を徐々に採用していきますし、広告宣伝費も四半期で少しずつ金額を上げていきます。こちらはシーズナリティというよりも、徐々に徐々に上がっていくものになります。

採用の強化も行っていますが、(スライドに)「モチベーションの向上」と書かせていただいているとおり、既存従業員の待遇改善ということで、賞与や給与の見直しを進めた結果、販管費が拡大しています。

営業利益増減分析

営業利益の増減分析についてですが、増収により売上総利益は(前年同期比で)2億9,100万円増となっています。人件費は前年同期比で1億2,700万円の増。広告宣伝費が6,500万円の増。地代家賃が2,100万円の増。その他販管費はほとんど変わりませんでしたので、結果としてこの第2四半期の営業利益は1億3,200万円となりました。

当社のビジネスモデル上、人件費、広告宣伝費、そして拠点の開設による地代家賃の増加が主なコスト要因になるわけですが、そのなかでも取り分け人件費の増加が多かったことが挙げられます。

ただし、粗利が増えたことによってそれを吸収し、営業利益が(前年同期比で)129.5パーセントの増益で着地しています。

2019年2Q 損益計算書

第2四半期(累計)の損益計算書に移りたいと思います。

売上高は、前年同期比で24.6パーセント増でした。通期予想としては前年同期比22.4パーセントと予想を立てているため、それを上回る進捗率になり、トップラインは極めて良好に推移しています。

販管費は13億1,000万で、19.8パーセント増でした。売上高の増加よりは低く抑えることができており、その結果、営業利益が1億3,200万円で、(前年同期比)129.5パーセント増で着地しました。

また経常利益は、前年同期比で119.9パーセント増の1億3,200万円となり、四半期純利益は前期比259.3パーセント増の8,200万円で着地しています。

2019年2Q 貸借対照表

第2四半期(累計)の貸借対照表についてご説明します。

第2四半期(累計)における総資産は、前事業年度末に比べて3億円増加して、18億9,400万円となっています。主な要因は、現預金が2億300万円、売掛金が4,600万円、それぞれ増加したためです。

負債については、前事業年度末に比べて1億6,200万円増加して、6億600万円となっています。主な要因は、未払法人税が5,700万円、前受金が8,600万円ほど増加したためです。ビジネスの特性上、前受金は売上が伸びると増えますので、こちらに影響が出ているということです。

純資産ですが、前事業年度末に比べて1億3,800万円増加して、12億8,800万円となっています。要因は、増資をしたため資本金および資本剰余金がそれぞれ2,800万円増加したことと、四半期純利益の計上によって利益剰余金が8,200万円増加していることです。

2019年2Q セグメント概要

第2四半期のセグメント別の業績についてご説明します。各セグメントの進捗としては、スライドのとおりとなっています。

人材紹介事業は、全体の売上の約3分の2を占める一番大きなセグメントですが、通期予想の20億700万円に対して(上期で)9億2,400万円ということで、進捗率が46.0パーセントです。

またセグメント利益は、通期予想の4億3,400万円に対して(上期で)2億円ということで、46.2パーセントと順調に推移しています。また、セグメントの営業利益率が20パーセントを超えてきており、効率化・標準化が進んできていると思います。

求人広告事業は、当社で言うと投資フェーズにあると思っており、人材採用を進めるとともに拡販体制を強化しているということです。

こちらの売上高は、通期予想の10億2,700万円に対して(上期で)5億200万円ということで、進捗率が50.6パーセントです。営業利益が通期予想で3,200万円ほどになっていますが、上期実績で5,200万円で、すでに営業利益としては達成しており、とくに問題ないと考えています。

新規事業については、売上としてはまだまだそこまで大きくありませんが、通期予想の売上高の2,900万円に対して、上期実績で1,600万円となり、54.8パーセントで進捗しています。営業利益は、通期予想がマイナス5,300万円のところ、上期実績でマイナス2,300万円ということで、44.2パーセントの進捗率です。

全社費用についてですが、本社の費用は通期予想の2億900万円に対して、上期実績で9,700万円となり、46.5パーセントで進捗しています。

人材紹介事業

人材紹介事業について、もう少しご説明します。

増減額としては、上期実績で(前年同期比)1億4,400万円増加しており、増減率が18.5パーセントです。こちらは2007年からの創業事業で、全体の進捗率よりも劣っているわけですが、それでもまだ力強く伸びています。

また、営業利益は上期実績が2億円で、増減額が(前年同期比で)9,400万円増、(増減率が)89.2パーセントとなり、非常に効率化が進んでいると考えています。

人材紹介事業における主な施策

人材紹介業という意味では、他社さまとまったく同じビジネスモデルなのですが、扱っているのが飲食店の従事者ですので、コックさんや接客スタッフ、店長といったような「特化型」になり、マーケティングが難しいのですが、そこに対するチャレンジは今期も続けています。

前回の説明会でお話ししたのですが、求職者の獲得が年々厳しくなってきています。そのようななか、当社の拠点がある東京、名古屋、大阪、福岡、横浜の5拠点での集客に注力してきました。

以前の課題として、その他のエリアの求職者の登録が増え、マッチングの効率が悪化していると説明させていただきました。しかし、当社のKPIとしてエリア内の応募をしっかりと追いかけていった結果、東名阪、横浜、福岡の求職者が増加したことでマッチング数が増加しました。

当社を利用している求職者の最大のメリットは、新鮮な求人がたくさんあるということです。それが当社を使う一番の意欲になると思いますので、原点として、求人企業の新規開拓を強化してきました。

当社は人材紹介事業のなかでも飲食業界に特化しているという意味では、フロンティアの1社であると自負しています。私が推計しているところでは、この飲食の人材紹介事業がまだまだ認知されておらず、伸びしろが十分あると思っています。おそらく、現在の当社のシェアは、業界で2割を超えてきていると思いますので、シェアとしては頭一つ抜けてきています。

よって利用企業は、「人材紹介であれば、まずはクックビズに頼んでみよう」といったマインドを獲得できていると思っていますし、求職者についても同様のことが言えると思います。この求人(企業)と求職者サイドの両方で純粋想起を獲得し始めていると考えていますので、ここは業界のリーダーとして人材紹介業の拡大を担っていこうということで、引き続き投資をしていこうと考えています。

求人広告事業

先ほどの人材紹介事業とは異なり、求人広告事業は後発です。今から7年ほど前の2012年に業界に参入しましたので、プレイヤーのなかでは一番遅い参入ではないかと考えています。

そのなかでシェアを獲得していくのが事業戦略のうえで重要な戦い方なのですが、そこはある程度進んだと考えています。上期実績で売上高が5億2,000万円、増減額が(前年同期比で)1億3,500万円増、増減率が35.3パーセントとなり、力強く伸びてきています。

営業利益は上期実績が5,200万円ということで、この事業についてはまだ営業利益額を稼いでいくフェーズではないものの、営業利益率は10パーセント程度となっていますので、投資を続けていくなかで利益が少しずつ出てきています。

求人広告事業における主な施策

求人広告事業では、一部、大きな変更、チャレンジがありました。これまで人材紹介事業で持っていた「クックビズダイレクト」という、ダイレクト・リクルーティングサービスを一新し、成果報酬のない定額制のサブスクリプション型にモデルチェンジし、2019年4月にマーケットにローンチしました。

それから3ヶ月が経ちましたが、非常に順調に滑り出していると考えています。今はサブスクリプション型の商品が世の中で受け入れられつつあると思うのですが、当社の今までの課題として、売上のストックがほとんどないかたちで事業を拡大してきたことが挙げられます。そこに対して経営陣としても課題感があったため、従来の一部のサービスを変更することで月額課金に踏み出しました。これが当社の新たなチャレンジとなっています。

これがどういったものかについてですが、求職者にスカウトを送れます。従来は求人広告のサービスを利用していただいた企業さまのみ、スカウトサービスをオプションとして提供していたのですが、「クックビスダイレクトプラス」という独立した商品として、このサービスのみを使えるようになりました。

「クックビズダイレクト“プラス”」と書かせていただいているように、スカウトをするだけではなく、選考管理をしたり、選考の進捗をダッシュボードやレポートで確認して次の施策を考えていただいたりと、求人管理のようなさまざまな機能を加えており、それを毎月定額で使っていただけます。

今はキャンペーン期間中で、年間契約をいただいた企業さまは月額80,000円でご利用いただくことができ、非常に好評をいただいております。当社のターゲットである飲食企業さまは人手不足で、非常にお忙しいなかで採用業務をしなければならないということで、採用業務の効率化を図るためにこのような機能を搭載しています。

採用業務やデータを「クックビズダイレクトプラス」で一元管理することで、人事や採用担当者の負担を軽減して、採用に対するアクションができる時間を確保していただくということを狙ったものです。

採用管理サービスは「ATS(Applicant Tracking System)」と言われるものの一種で、今後はこれを独立して開発しながら、当社のほかのサービス……人材紹介や求人広告の応募状況もここで一元管理できるところを目指していきたいと考えています。こちらの開発は自社で人材を抱えて進めており、ここに投資していこうと考えています。

新規事業

新規事業は2つあります。研修事業の「フードカレッジ」と、SNSサービスやWebメディアを運営している「Foodion」が新規事業です。

売上高は、上期実績が1,600万円で、(前年同期比での)増減額はプラス800万円で、増減率は98.1パーセントとなりました。営業利益は上期実績がマイナス2,300万円となり、赤字額は比較的抑えながら開発している状況です。

こちらでは、人材採用のあとの教育に着目しています。今後、日本での採用はどんどん難しくなってくると思います。その意味で、飲食業も「採用から定着」へと意識が変わり始めていますので、今後は研修サービスも強化して、「採用・定着・評価」といった人事回りのサービスを当社が一括して提供できるよう、新規事業を推進していきたいと考えています。

以上となります。ありがとうございました。

質疑応答:下期にかけて発生が見込まれるリスクや費用について

質問者1:ご説明ありがとうございました。大きく分けて、3点あります。

まず業績についてお聞きします。下期偏重ということで、営業利益の達成率はかなりいい数字が出ていますが、下期にかけて見えているリスク要因や費用などがあるかについて、確認させてください。

藪ノ:リスク要因と費用ですか?

質問者1:このままでは、おそらく少し上振れ気味になってしまうため、現在見えている部分で何らかの費用を考えられているのかということです。また、見えているイベントで、例えば「消費増税があるからこれから状況が悪くなる」といったようなものはあるのでしょうか?

藪ノ:もちろん、リスク要因としてはさまざまなものが考えられるのですが、大きくわけて2つほどあります。

まずは、我々自身の採用が挙げられると思います。これだけ採用難ということで、我々も業績を伸ばしているなか、自社の採用ももちろん簡単ではないと思います。飲食業界だけでなく人材業界も定着というところで課題があると思っています。

下期も引き続き採用を行っていきますが、採用計画が未達に終わってしまうと、短期的にはそこまで影響はないものの、中長期で見ると成長の源泉となる人材の流出が生じたり、予算の未達に大きく影響していくと思いますので、採用の強化は行っていきたいと思っています。

そこが短期的なリスク要因になると言うよりは、ボディブローのように効いてきますので、短期では影響はないもののそこにはしっかりと注力していこうというのが1点です。

もう1点は、先日発表させていただいた外国人採用の事業についてです。

この下期から本格的に準備していきますが、簡単にお話しすると、ベトナム人の若い学生さんに卒業と同時に日本に来ていただき、特定技能のビザを使用して、日本の新卒のようなかたちで5年間ほど当社のネットワークのある企業さまで働いていただき、その後ベトナムに帰国していただくというビジネスモデルです。

時間軸が少し長いのですが、現地で大学4年生のタイミングで、我々が教育や日本語習得のコンサルティングを行って、1年ぐらいかけて育てて、日本に来ていただきます。

もちろんクロスボーダーの案件になりますので、費用が発生するタイミングと収益が発生するタイミングは、今まで日本国内で行ってきた事業よりは時間軸が長くなります。そのあたりは、通期予想をしっかりと達成できる範囲で見極めながら投資をしていくことが重要だと思っています。

また、この事業は法整備が完全に整っていません。実は、ベトナムでの試験日も未決定ですので、そういう意味では、社会情勢や政治的な部分の影響を受けます。そちらも、監督官庁にしっかりと情報を確認しながら進めていければと考えています。

質疑応答:地方拠点の現状について

質問者1:現時点での地方拠点の評価についてお聞きします。先ほど、効率化を進めて散漫になってしまった部分を引き締められたというご説明がありました。今後もさらに拠点を広げていこうと考えられるほどの手応えはありましたでしょうか?

藪ノ:先ほど、(飲食における人材紹介事業において)シェアが20パーセントぐらいあると申し上げましたが、我々のように、飲食業界特化型で全国展開を成功させている企業さまは、実はほとんどありません。東京だけ、福岡だけ、大阪だけといったように、地域色が強いサービスのため、全国を網羅的に標準化してサービスを提供できているところは我々だけだと自負していますが、新たに開設した横浜や福岡拠点は、現時点では非常に順調に推移しています。

地方拠点は、3名から5名ぐらいの小さいユニットで開設していくのですが、そうした小さなユニットですと、情報共有が非常に簡単です。もちろん全社的にCRMを使ってはいるものの、事業部によっては何十人と増えてくると日々の情報共有が難しくなりますが、目が届く範囲での情報共有に勝るものはありません。

実は、地方拠点は我々にとって非常に効率がよく、目が届きやすいのです。距離的なものはありますが、管理しやすいという意味では非常によいと考えています。今後もまだ出店していないエリア……例えば東京よりも北側の仙台や北海道は飲食店が多いエリアですし、本社のある大阪とは異なるお店が出店している京都や神戸といったエリアもあります。中部地方であれば広島などもまだ残っています。

地方拠点での勝ち方のようなものも、この半年から1年ぐらいでノウハウとしては蓄積されていると思いますので、少ないコストでしっかりと拠点を出して収益化を早め、エリアを拡大してサービスを拡充していくことは、我々にとっては非常にプラスだと思っています。そのあたりは、今後もしっかり続けていきたいと思っています。

質疑応答:クックビズダイレクトプラスの戦略などについて

質問者1:3点目は、クックビズダイレクトプラスについてです。まず確認したいのが、求職者が、人材紹介で御社に登録されている方と共通かどうかということです。また、御社の事業のなかで、人材紹介とクックビズダイレクトプラスは、戦略的な位置づけや使い分けがどのようになるのかを教えてください。

藪ノ:私はよく、「我々はマッチングサービスだ」ということで、ビジネスモデルをマッチングサービスだとお伝えしていますが、いつもマッチングの方法は3つあると話してきました。1つ目は人材紹介、2つ目は求人広告でメディアを使ったマッチング、3つ目はデータベースによるマッチングです。

従来のスカウトサービスで、現在はリニューアルした「クックビズダイレクトプラス」がデータベースによるマッチングですが、これはほぼ、人材紹介と求人広告の資源を利活用したものになります。13万人のユーザーがいると公表させていただいておりますが、人材紹介や求人広告で培った、我々の資産となっている会員データベースを共用化していますので、データベースの獲得にあたって追加的なコストはほとんどかかっていません。

実際に人材紹介事業は、登録していただいた方にたくさんお仕事を紹介したいのですが、飲食の従事者の特性として、自分で探したり、企業から直接オファーが欲しいという方もたくさんいらっしゃるため、登録者のほとんどは眠れる資産となっています。

ここは我々だけでなく、大手人材会社も同じような課題を抱えており、そうしたところで眠れる資産をしっかり利活用して、転職成功者の数そのもの、総数を増やしていこうということでサービスを提供しています。

質疑応答:好業績に寄与したWebマーケティングの手法について

質問者2:御社の説明を聞くのが初めてのため、2点ほど教えてください。まずは、14ページのところです。

先ほどのご説明で、「飲食専門特化型でマーケティングが難しい」とありましたが、Webマーケティング手法の見直しということで、今期はそれが業績に貢献したのではないかと思いました。具体的にはどのようなことを実施したのかを教えていただけないでしょうか?

藪ノ:スライドに「Webマーケティング」と書かせていただいているのですが、もちろん手法としてはWebだけで完結するものではありません。どちらかと言うと、ブルーカラーに近い職業の利用者は、フリーペーパーや雑誌等々を見て転職活動される方も多いですので、そうした利用者の特性に応じた集客チャネルを継続的に開発していきます。

集客のチャネルで言うと、細分化して20くらいの手法を使いながら、20のチャネルに対して費用対効果を見て、最終的に入社するところまでトラッキングできるようになっています。投下した広告宣伝費に対して、入社するまでにかかった費用がどれくらいだったのかを月次や四半期で見ながら、広告費の増額・減額を意思決定してチャネルを調整するということを日々行っています。

トレンドとして、今まではWebマーケティングというと「Google」「Yahoo!」でのWeb広告が主流でしたが、それ以外の比率がどんどん増えており、広告を出すチャネルの多様化が非常に進んでいると考えています。

質問者2:飲食専門ということで、何か特別に行っていることはあるのでしょうか?

藪ノ:我々が今までどういったかたちだったかをお話しすると、例えば「飲食 求人」や「飲食 転職」といったビッグワードに対して、集中的にWebマーケティングを行っていたのですが、そこで獲得できる顕在的なユーザーは、ある程度リーチをしています。

「飲食 求人」や「飲食 転職」といったビッグワードで入ってこない方でも、転職意欲がある方は潜在的にはいると思いますので、そこに対してリーチできれば、競合があまりいない方にアプローチできます。

その意味で今チャレンジしていることは、顕在ユーザーだけではなく、潜在ユーザーにいかに転職意欲を持っていただくかを意識してチャネルを変化させるといったことです。

質疑応答:クックビズならではの強みについて

質問者2:もう1点、御社の強みを今一度教えてほしいと思います。求職者サイドとクライアントサイド両面で、御社ならではの強みを教えてください。

藪ノ:いくつかあると思っています。先ほどご説明した「マッチングの3つの形態」で言いますと、この業界で人材紹介、求人広告、スカウトといったサービスを網羅的に、かつ全国的に提供している会社はありません。例えば東京で人材紹介だけを行っている、また大阪で求人広告だけを展開している競合さんは、そのユーザーしか獲得できないことになりますし、1つの事業ごとに利用者をマーケティングするのはコストが高くなってしまいます。

サービスを複数持って全国展開しているということは、費用対効果で見ると非常に優位性があると考えています。また利用いただいている企業さまやユーザーからしても、「人材紹介はA社」「求人広告はB社」のように登録企業や対応する方をいちいち変える必要がありません。人材と求人企業をマッチングする手法はほぼ揃えていますので、我々のサービスに申し込んでいただければ、ワンストップでサービスを提供できます。そこは非常にいい点かなと考えています。

また、これは社内のノウハウになるのですが、我々よりも小さい規模、中小・中堅の企業さまは、まだまだアナログなかたちでマッチングが行われています。例えば、Excelなどのソフトでマッチングを管理しています。

我々は全社的にCRMを導入しており、誰が、いつ、どこで、どういったユーザーに、どの求人を紹介して、内定承諾を得られたのか、得られなかったのかをデータベースとして常に保存しています。また、どのキャリアアドバイザーが推薦・決定率が高いのかといったことも一元で管理しており、ノウハウの共有化は非常に進んでいます。

もちろん、人が行うことですので優劣がついてくるわけですが、成功事例を横展開したり、勉強会をしたりしていますし、施策を打つ前と後でどのくらい推薦・決定率が変化したかなども、データに基づいて正確に情報が取れています。そういったことは、他社ではまだできていないのかなと思います。

業界特化であり、大手の人材紹介会社と比べても引けをとらないくらいマッチングのシステム化を推し進めてきたところは、競合優位性になっていると考えています。

質疑応答:他社との差別化要因について

質問者3:2つほど教えてください。

まず1つ目です。飲食紹介事業のなかで、全国的に、かつさまざま形態で展開しているのは御社だけというお話でしたが、なぜ御社は他社と異なり、全国展開できている、また多様な形態を取れているのでしょうか? その差別化要因はどういうところでしょうか?

藪ノ:これは、「やり切るか、やり切らないか」だと思います。飲食以外の業種でも、年収が高い業種もたくさんありますし、ユーザーが多い業種もたくさんあると思います。しかし我々はビジョンとして「『食』を人気の『職』にする」を掲げております。

日本が持っている食のコンテンツは、非常に強いものがあり、世界的に見ても、日本の職人やサービスの力は非常に優位性があると思っています。そこにしっかりフォーカスしてサービスを提供するというビジョンに基づいて従業員にも集まっていただいており、そこが源泉、根源になっていると思っています。

ただ単に人材をマッチングして収益を得たいわけではありません。このビジョンを実現するために集まっており、この業種、この業界に対して深掘りしているわけですが、こうしたビジョンを持っている会社はそこまで多くないというのも、要因としてあるかなと考えています。

また、先ほど申し上げたマッチングのシステム化を日々進めていますが、1日1日は小さな積み重ねでも、長期的に見ると大きな差につながっていると考えています。

質問者3:さきほどの質問と関連しているのですが、「ビジョンを持ってやっている会社は非常に少ない」とのことで、逆に全国展開するにあたっての一般的な課題と言いますか、障壁となるようなところは、人材紹介事業においてはどういったものがありますでしょうか?

藪ノ:地方に出店する際に、成功するかどうかを分ける一番の要因は、おそらく拠点長の存在かなと思っております。

我々は、人材を教育して開発するのは大阪本社と東京で集中的に行っているわけですが、そこで育てた人材が、課長だったり拠点長……当社では所長と呼んでいるのですが、そうした人材として少しずつ育ってきています。

また、マーケットリサーチをすれば、「この地域であれば福岡や横浜と同じことが再現できそうだ」というエリアの特性や、そのエリア内の飲食従事者数は明らかになりますので、拠点長候補が育ってきたタイミングで(そうしたエリアに)出店していく(のがポイントだと思います)。

マーケットがあることは、みなさんもおわかりかと思うのですが、任せる人材が育っていないと「絵に描いた餅」になると思いますので、そうした人材教育は非常に重要だと思っています。

質疑応答:クライアントや求職者に強く訴求できているポイントについて

質問者3:おそらく、御社は飲食紹介事業では非常に強いところだと思うのですが、総合的に人材紹介している大手……例えばリクルートやパソナといったところも、同じように全国的に飲食系の求人を紹介していると思います。そこに対して、ビジネスモデルなどで差別化を図れているなど、認知度的にクライアント側ないしは求職者側に強く訴えかけられているものがありましたら教えてください。

藪ノ:14ページに書いていることがすべてかなと思います。もちろん、総合的な求人数でいうと総合人材サービス会社には勝てないと思うのですが、業界内の求人数は非常に強く意識しております。我々を利用している企業さまのなかには、大手チェーンだけではなく、ミシュランの星付きレストランといったところもたくさんいらっしゃいます。

大手企業がそうした店舗まで獲得するかというと、そこはなかなか手を伸ばさないでしょう。そこまでマーケティングコストをかけて求人を開拓するよりも、ほかの業種があるでしょうし、彼らがマッチングのノウハウを蓄積している業種は(飲食以外にも)たくさんあります。

今は集中的に、医療や介護、ホワイトカラーの人材マッチングを展開していますので、わざわざ飲食業界に入ってきてマッチングをするメリットがどこまであるかと言うと、さほどないのかなと思います。

飲食業界でのマッチングについてですが、飲食従事者は企業に勤めている感覚はそこまでなく、店舗に配属されて「この店舗で働きたい」という意識も強いです。いわゆる会社概要に記載されている項目のようなものや、求人の募集要項だけで動くというよりも、例えば「あのシェフのもとで働きたい」といったように、店舗単位のミクロな情報も集める必要があり、(大手企業は)彼らが転職するにあたって知りたい情報までアプローチできないと思っております。

しかし我々は、席数、客単価、さらにシェフの経歴といったところまでつぶさに情報を集めていきます。大手企業が持っているデータベースは、そこにまったくマッチしていないものになっていると思います。

業界特化ならではの情報をたくさん保有し、業界内の求人数も一番で、「飲食で転職するならクックビズ」となるよう、これからも追求していきたいと考えています。

質疑応答:保有している求人企業の規模について

質問者3:非常に飲食に特化されていて、かつ掲載している情報も非常に多いということですね。どちらかというと、一般的な大手チェーンや飲食店をお客さんとするよりは、小さいところということで、今、ミシュランの星付きレストランの具体例を挙げていただきましたが、そうしたところにウエイトを高めに置かれているという認識でよろしいでしょうか?

藪ノ:バランスで言いますと、大手チェーン……おおむね500店舗以上をお持ちのところが大手の領域ですが、そうしたところはホワイトカラー(の転職支援)が得意な総合人材会社とお付き合いがあると思います。その下の規模になってくると、数十店舗から数百店舗のミドルレイヤーになりますが、そこは我々がもっとも得意とする領域です。実は、今は個店はそこまでウエイトが大きくなく、求人は個店、中規模、大企業でバランスよく構成されています。

個店が多くなりすぎると、与信管理が非常に難しくなります。また最近では、飲食の従事者の方も独立開業だけがゴールではなくなってきており、飲食業界でキャリアアップがしたいという方も増えています。

国内がこれだけオーバーストアの状況ですので、自分が独立するスペースが残されていないのであれば、被雇用者として飲食業界で長く働き続けたいということです。最初は個店などの尖った業態に希望を持っている方も、歳を重ねるにつれて、福利厚生がしっかりしている、有給消化率が高いなど、いわゆる一般の業種に近いような転職意欲に変容してくるところもあります。

20代の方と30代以上の方とで、求めている情報は大きく変わってきますので、個店と中規模と大企業の求人をバランスよく保持することは、ユーザーの満足度を高める意味で非常に重要だと考えています。

質疑応答:人材紹介事業の今後の成長見通しについて

質問者4:人材紹介事業における今後の成長についてです。求人倍率が非常に高い状況ですが、マッチング率が向上していけば、あまり(今後の成長に)リスクはないという理解でよいでしょうか? また、もう一段(市場の成長のレベルが)上がるとすれば、例えばマッチング率が上がれば給与が上がっていく段階になるなど、成長の考え方について教えてください。

藪ノ:成長について、一般的な考え方として「客単価、客数、回転数」で見てみます。この社会情勢ですと、客単価は上がっていく、つまり紹介する方の年収と我々が頂戴する紹介手数料の料率は年々上昇していますので、リスクとして考えられるのは、例えば増税が行われたり、社会情勢が大きく変化することで、給料の上昇がストップしたり、大きく下落するとします。そうなると多少の影響は受けると思いますので、あまり客単価を上げて、そこに依存したかたちで売上を作っていくと、景気の変動によって大きなダメージを被ります。よって、我々は客数をしっかり増やしていこうと考えています。

そのために拠点を展開していくということで、あまり客単価に依存しないかたちで売上を作っていくことができればいいかなと思っています。また、先ほどお話しした「クックビズダイレクトプラス」のように、人材紹介ではマッチングし得なかった求職者のデータを利活用して収益性を高めていくことができれば、そのリスクを減らしていけると考えております。

質問者4:次に、費用といいますか、先行投資についての考え方なのですが、以前はジャンプアップするために費用を使いたいということがありましたが、今のステージは売上の成長とともにコストをそれなりに使っていくところなのでしょうか? それとも、これまでとは異なる新規事業などへの大きな投資も考えていらっしゃるのでしょうか?

藪ノ:我々に求められる成長は、売上でいいますと、いかにトップラインの20パーセントの成長を維持していくかです。株主さまのご期待という意味でも、トップラインをしっかり伸ばしていくところは意識していきたいと思います。

また、今までは純粋に自社の事業だけで進んできたわけです。もちろん、既存事業が伸びるという点ではいいのですが、既存の人材紹介、求人広告に大きく収益が依存している状態は、我々の課題の1つでもあります。その意味で、M&Aの実施や(他社に)出資をしていくなどして、事業の多角化を内部に依存しすぎないようにすることが今後は必要だと思っています。

過去の実績を見ていただくとわかるのですが、利益については少しでこぼこしています。本来であれば、毎年増収増益がきれいだとは思うのですが、そこは最低限の利益を確保しながら、期によっては……例えば前期であれば(地方に)出店したいというニーズがあり、それで収益が大きく悪化したわけですが、今回の実績を見ていただくと、それが実を結んで利益が出ているところもあります。

増収増益にこだわりすぎて投資の機会を損失するのであれば、そこは考えなければならないと思っています。現状としては、大きく赤字を掘って投資している事業が手元にありませんので、既存事業や既存の新規事業に投資をしていく分には、収益がおかしくなることはないのかなと考えています。